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温泉名物「温泉卵」に迫る~温泉卵の簡単な作り方

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「温泉卵」といえば、黄身が半熟で、白身はさらにやわらかなトロトロ。だしじょうゆで味付けした白ごはんとの相性は抜群です。最近はパスタやハンバーグ、丼物などの料理にも「温玉のせ」がはやっていますね。

しかし、温泉地で買う「温泉卵」が白身トロトロとはかぎりません。温泉でゆでられた固ゆで卵で硫黄の風味があったり、塩味だったりしますが、白身がトロッとした温泉卵はなかなか買えないようです。

黄身が半熟、白身トロトロの「温泉卵」は、どこの温泉地で食べられるのでしょうか。温泉卵にアプローチ。その魅力や作り方について探ります。

半熟トロトロの温泉卵の元祖は飯坂温泉だった?

画像出典:飯坂ホテル聚楽
URL:http://www.hotel-juraku.co.jp/iizaka/

卵白が卵黄よりもやわらかな「温泉卵」を作る決め手は温度にあります。卵白が凝固する温度は約80度、卵黄の凝固温度が約70度と、卵白の凝固温度のほうが高いので、70度前後の湯でゆでれば白身がトロトロの温泉卵が作れます。この温度の条件を満たす温泉だったら、浸けておくだけで理想の「温泉卵」が作れます。手頃な温泉があれば簡単なので、全国の温泉旅館が朝食のメニューに取り入れたのが「温泉卵」の始まりだと思われます。

一方で「温泉卵」の発祥の地は福島県福島市の飯坂温泉という説があります。飯坂温泉は開湯が2世紀ごろ、日本武尊(やまとたけるのみこと)が立ち寄ったともいわれる奥羽地方最古の湯。宮城県の鳴子温泉、秋保温泉と共に奥州三名湯に数えられています。

この飯坂温泉の名物が「ラジウム玉子」と呼ばれる温泉卵です。白身トロトロで黄身は半熟のまさしく温泉卵。芒硝泉特有のほのかな香りに包まれたゼリー状の白身と黄身は、最も消化されやすい状態になっているといいます。それにしても、なぜ「ラジウム」?

1910年、日本で初めて「ラジウム」の存在が飯坂温泉で確認され、飯坂温泉は「ラジウム温泉」として一気に地名度が上がりました。1920年ごろ、知名度にあやかって地元で温泉卵が「ラジウム玉子」として商品化され、飯坂温泉名物に。当時は卵が貴重品だったので、いまよりもずっと高級なおみやげ品だったのでしょう。それまでも各地に温泉でゆでられた卵はありましたが、商品化されて看板になったトロトロ温泉卵は「ラジウム玉子」が初めてだったのかもしれませんね。

現在は10軒ほどの店舗が製造販売しています。地元の新鮮な卵を63℃~70℃の温泉に浸し、30分から1時間でゆで上げます。店ごとに製法は異なり、「ラジウム玉子」「ラヂウム玉子」「ラジウム卵」など表記も微妙に違うようです。

山形県米沢市の小野川温泉でも、ラジウムを含む温泉で「ラジウム玉子」が作られています。小野川温泉は米沢八湯のひとつで、ホタルの里として知られるこじんまりした温泉。温泉卵の製造元はいくつかありますが、約73度の温泉に10分~13分入れ作っているなど、飯坂温泉よりもやや高めの湯、短時間で作られているようです。小野川温泉では「ラジウム玉子」づくり体験ができます。

全国各地の温泉名物「温泉卵」

固ゆで卵系温泉卵でいちばん有名なのは、食べれば寿命が7年延びるという箱根温泉郷大湧谷の「黒たまご」ではないでしょうか。大涌谷の立ち入り規制で販売中止されていましたが、2016年7月に復活しました。

黒い秘密は温泉成分。約80度の温泉池で60分ほどゆでると、殻についた鉄分(温泉池の成分)と硫化水素が反応して硫化鉄(黒色)になり、殻が黒いゆで卵ができあがります。黒くなった卵を蒸し釜に移し、約100度の蒸気で15分ほど蒸してつくられています。うまみ成分もアップしているそうです。

長崎県にある雲仙温泉では地獄谷からでる蒸気で蒸し器を使って作る「雲仙地獄温泉たまご」が有名。雲仙地獄工房でつくられ、雲仙地獄茶屋で食べることができます。少し硫黄のにおいがするかたゆで卵で、温泉でできた塩を添えて売られているのが特徴です。

大分県の別府温泉では、別府地獄めぐりの各地獄で作る温泉卵が名物。地獄の蒸気熱を活かして蒸し上げられた「地獄蒸したまご」は、白身が茶色に変色しています。98度のコバルトブルーの温泉、海地獄では、竹籠に入れた卵を直接浸してゆでていますが、白身は白いままのようです。

温泉地で体験!!温泉卵作り

各地の温泉には、観光客が自分で卵をゆでて作って食べる体験をメインした「温泉卵」もあります。

札幌の奥座敷とも呼ばれる定山渓温泉。その中心街にある定山源泉公園内では「温泉たまごの湯」があります。近くの物産館で玉子3個入りのネットを買えば、当日の気温で理想のゆで時間を教えてもらえます。トロトロの温泉卵ができたら、物産館へ。お茶処で容器とスプーンを出してもらえます。

宮城県大崎市にしある鳴子温泉は鳴子こけしの産地としてもしられる温泉。湯めぐり駐車場内に「温泉たまご工房」があり、かごと温度計が用意されています。生卵を買って持って行けば、温泉卵づくりが楽しめます。

信州では、野沢温泉の温泉卵が有名。長野県下高井郡にあり、硫黄泉の素朴な共同浴場が多く残っていることで知られています。高温の源泉麻釜は今でも地元の人が調理に使っていますが、観光客は立ち入り禁止。すぐそばにあって足湯も楽しめるミニ温泉広場「湯らり」の「湯で釜」で温泉卵が作れます。

兵庫県の湯村温泉の源泉「荒湯」で作る温泉卵も有名です。開湯は嘉祥元年(848)、慈覚大師によって発見されたという古湯。元湯の「荒湯」は98度の高温泉で、地元では野菜などのゆで料理に利用されています。近くの土産物屋でとうもろこし、卵、野菜などが吊るすだけのセットで販売されていて、ゆで卵は13分程度でできあがります。コンデンスミルク缶を5~7時間つるしてキャラメルにする人も。

簡単な温泉卵の作り方

自宅でできる、トロトロ白身&半熟の温泉卵の簡単な作り方を紹介します。専用の温泉卵製造機も市販されていますが、自宅にあるもので自作するのも楽しいですよ。温泉卵の風情や風味はありませんが、ぜひ試してみてください。

その1 
1. 卵4個を冷蔵庫から出して室温にもどす。
2. 厚手で大きめの鍋に1リットルの湯を沸かす。沸騰したら水1カップを加え、火からおろす。
3. 卵をおたまで1つずつ静かに沈める。ふたをして、12分(冬場は13分)おいたら、とり出す。
4. 4分間くらい余熱を入れる。

その2  
1. 電気炊飯器の釜に常温にした卵を入れる。
2. 沸騰したお湯を八分目くらいまで入れる。
3. ふたをあけたまま保温スイッチを入れて、18分~20分置く。

その3
1. 電子レンジで使えるボウルにラップをかける。中央を卵が1個載るくらいくぼませてラップを張るノがコツ。
2. くぼみの中に水を入れる
3. 水の上に卵を割り入れて、黄身を1、2カ所つまようじでつつき穴をあける。
4. 500wで40~45秒温める。

その4
1. 保温効果のある水筒やタンブラー(サーモマグカップやお弁当用のスープ保温容器でもOK)を用意する。(浅目のものが取り出しやすい)
2. 沸騰した湯をいれて常温に戻した卵を入れ、30分から1時間おいておく。
※ふたのないタンブラー、マグカップはラッブで覆います。保温効果が高すぎる水筒ではかたゆで卵になることも。気温によってもゆで具合が変わります。

温泉卵をのせておいしいメニューには、ハンバーグ、カルボナーラ、ガパオ、ビビンバ、しらす丼、ソースカツ丼、野菜サラダなどがあります。アレンジメニューにも挑戦してみてくださいね。
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