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風の花「アネモネ」の神話と花言葉

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カラフルな花色と優美さで愛されるアネモネは、春を代表する球根花です。
その歴史はとても古く、ギリシャ神話や伝説にもたびたび登場します。
地中海沿岸の原生地から世界各地へと広まったのには十字軍や巡礼者、そして「風」が大きく関わっているようです。

今回はそんなアネモネの神話や花言葉、鉢植えで楽しむポイントをお伝えします。

アネモネの花の特徴

アネモネは、ギリシャやトルコなど地中海沿岸を原産とする、キンポウゲ科の球根植物です。
日本には昭和の初め頃に、和名「アネモネ」として紹介されました。別名に、ボタンイチゲ(牡丹一華)、ハナイチゲ(花一華)、ベニバナオキナグサ(紅花翁草)などの呼び方があります。アネモネは、英名に「Windflower」という別名があるように、ギリシア語で「風」を意味する「anemos」に由来しています。
早春の風が吹き始める頃に花を咲かせるアネモネにぴったりの名前ですね。

日本では、アネモネの明るくモダンな花容が女性に好まれることから、フラワーアレンジメントなどに多用されています。
耐乾性もあって育てやすいことに加え、近年は品種改良や栽培技術が進み、球根を冷蔵処理して花もちのよい切り花が冬から出回るようになりました。

アネモネの花の少し変わった特異性をご紹介しましょう。

・アネモネの花は光や温度に反応して開いたり閉じたりを繰り返します。
・アネモネの花には花びらがなく、花びらに見えている部分は実は「萼(ガク)」と呼ばれる部分で、本当の花びらは中心の紺色の部分です。そしてガクに見えるのは実は葉っぱです。綺麗な花びらに見える部分が本当は萼片であるというのは少し意外ですよね。
・アネモネは花芯部分の色のコンストラストも花の魅力になっていますが、雌しべと雄しべで色が異なります。
・アネモネはひなげしやポピーと同じように、草花全体にプロトアネモニンという毒を含んでいます。汁に触れると皮膚炎・水泡を引き起こすので、茎を切ったり折ったりするときは手袋をして作業しましょう。

アネモネの花言葉

アネモネの花言葉には、「はかない恋」「恋の苦しみ」「見捨てられた」「見放された」「あなたを愛します」「待望」「無邪気」などがあります。
アネモネの花は美しいのですが、とてもデリケートで短命です。
そんなところが、はかない恋を連想させてしまうのかもしれませんね。花言葉は、恋の苦しみや、見放されてしまったような哀しげなものが多いのですが、それはギリシャ神話のある悲恋伝説に由来しています。

その昔、美の女神アフロディーテは、エロースの矢によって胸を傷付けられた美少年アドニスに出会い、そのとりこになります。
しかし、喜びも束の間、アドニスは若さゆえの無謀さから獰猛な猪に挑んで殺されてしまいます。悲しみにくれたアフロディーテが神酒ネクターを注ぐと、流れ出た血から赤い花が生まれました。花の命は短く、風(アネモス)が花を咲かせたかと思うと、次の風が花を散らせるので、「風の花(アネモネ)」と名付けられたということです。

アネモネの花言葉は色によっても異なります。
白いアネモネの花言葉は、「真実」「期待」「希望」。青は「かたい誓い」。紫は、「あなたを信じて待つ」。そして赤のアネモネは、「君を愛す」です。赤いアネモネをプレゼントされたら特別の意味がこめられているかもしれないので、さりげなく確認してみましょうね。

アネモネの仲間たち

アネモネと同じキンポウゲ科の仲間たちは温帯から亜寒帯にかけて約100〜120種分布しています。
宿根草や山草的なものが多く、人気の高いシュウメイギク、クリスマスローズ、ラナンキュラス、クレマチス、福寿草などもアネモネと同じキンポウゲ科の植物です。
ここからは、アネモネのおすすめ品種をご紹介しましょう。

1.アネモネ・セントブリジッド

19世紀にアイルランドでつくられた、細い花びらがたくさんある八重咲き品種です。草丈20?40cm、大輪の花が艶やかなイメージです。

2.アネモネ・モナリザ

草丈60cmにもなる品種で、切り花やスワッグに向きます。育てるときは支柱を添えましょう。分球しにくいので種まきで増やします。優しい色合いが人気です。

3.アネモネ・デ・カーン

19世紀後半にフランスで作られた一重から半八重の品種。草丈は20?40cmで、ポピーに似た大きな花を付けるのが特徴です。

4.アネモネ・ポルト

草丈20?30cmと低めで鉢植えに向くタイプ。小ぶりな花束やスワッグにしても可憐な大輪一重咲きの品種です。

5.アネモネ・コロナリア

アネモネを交雑・選抜したのがアネモネ・コロナリア品種です。現在、アネモネの園芸品種といえば、このコロナリアを指すほど一般的で人気があります。

6.八重咲きアネモネ「凛々花」

園芸品種「凜々花」は八重咲きタイプ。花びらの数がかなり多めでボリュームがあるので、一株でも充分に鑑賞に値します。類似品種に「オーロラ」があり、同じ八重咲きタイプなので、大きな鉢にいっしょに寄せ植えにするのもおすすめです。

球根から鉢植えで育ててみよう!

アネモネは、実生からも球根からも栽培できる園芸種として古くから人気があります。品種は既に100品種を越えていますが、さらに続々と新しい品種が生れています。涼しくなる秋に芽を出し、春に咲いて、夏前に地上部を枯らし、塊根をつくって休眠します。

今回は、アネモネを鉢植えで楽しむ方法をご紹介します。
水はけと日当たりのよい場所に植えつけ、多肥にしないように管理すれば、何年も植えっぱなしで花が咲きますよ。

植えつけ:植え付けには球根用培養土を用いましょう。掘り上げてすぐの球根は、そのまま植えつけて構いません。アネモネは球根の上下がわかりにくいので、迷ったときは横向きに植えつけましょう。乾燥させた球根は10月以降に、軽く湿らせたバーミキュライトに球根を埋め、冷蔵庫内で1週間ほど吸水させてから植えつけします。気温が下がる11月以降なら直接植えつけても大丈夫です。球根の上に1cm覆土する程度に浅植えしてください。

育てる環境:球根を植えた鉢は、芽が出てから地上部が枯れる初夏までの間は、風通しのよい戸外の日なたに置きます。地上部が枯れたら乾いた日陰に置き、10月になったら再び日なたへ移動させます。地上部が枯れたときに、球根を掘り上げて保存してもかまいません。

水やり:鉢植えでは、軽く湿らせた用土に球根を植えつけるので、植えつけ直後は水を与えずに、後日乾いてから水やりします。その後は、初夏に地上部が枯れるまで、用土の表面が乾いたらたっぷり水やりしてください。地上部が枯れたら水やりを中止し、雨のかからない日陰に置いて鉢土を完全に乾かします。10月以降、再び水やりを開始しましょう。

肥料:鉢植えでは、肥料が少ないと花がたくさん咲きません。10月〜3月の間は2週に1回ほど、薄めた液体肥料(N-P-K=6-10-5)を施してください。ただし、晩春まで肥料を与え続けると、多肥のため球根が充実しません。与えすぎに注意しましょう。

管理:鉢は日当たりの良い戸外へ置き、冷え込む日や夜などには軒下へ移動させると長く楽しめます。花が咲いた後は地際から切り取っておくと、次々と花があがってきます。品種にもよりますが、5月末頃まで開花を楽しめます。

まとめ

いかがでしたか。品種が豊富で花持ちのよいアネモネの切り花は、スワッグやブーケにすると高級感あふれる贈り物としてとても喜ばれます。色の選び方ひとつで、印象だけでなく花言葉も変わりますので、気をつけたいポイントですね。

アネモネは陽にあてないと花が閉じてしまうので、鉢植えにして贈るのもおすすめです。寄せ植えにするときは、主役のアネモネの雄しべの色に組み合わせる植物の花色を合わせたり、同系色のカラーリーフを株もとに植えたりすると、全体の配色バランスが締まります。お手入れをするときは毒があるので手袋をして作業するように伝えましょうね。

ペンネーム:Yoshidanz
ファームステイしたのをきっかけに農業生活にはまる。イギリスのオーガニックガーデニングを通信教育で勉強しながら、コンポースト造りと家庭菜園に挑戦。現在はニュージーランドの海沿いの丘陵地に土地を購入、ポタジェで有機野菜作りに励んでいる。

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