ウチョウランに魅せられて。特徴と育て方を解説
関連キーワード
はじめに
ウチョウランというお花はご存じでしょうか。花茎に10輪ほどの小花を咲かせる蘭の一種です。
昭和40年代にはマニアの間で大ブームとなりました。かつては価格が高騰し、一株で数十万円から百万円を超える銘品もあったそうです。原種のみならず、人工的な交配による華美な品種も数多く作り出されています。
こちらではウチョウランについて特徴や育て方をご紹介します。
昭和40年代にはマニアの間で大ブームとなりました。かつては価格が高騰し、一株で数十万円から百万円を超える銘品もあったそうです。原種のみならず、人工的な交配による華美な品種も数多く作り出されています。
こちらではウチョウランについて特徴や育て方をご紹介します。
ウチョウランとはどんな花?
・特徴は?
古くより、山野草愛好家の間で人気のウチョウラン。
小さな球根から根と葉を出す多年草で、草丈15cmほどのコンパクトな植物です。原生地では、切り立った崖や急斜面に自生します。しかし業者により乱獲されたため、今では自生種はほとんどありません。園芸品種として、熱心な愛好家によりプロアマ問わず育種が進み、素晴らしい交配種が沢山生み出されました。
・命を落とす者も・・・
昭和40年代、愛好家によるウチョウランの一大ブームが巻き起こりました。1株で数十万円にも価格が高騰したため、当時は投機目的で乱獲する者が後を絶ちませんでした。一獲千金を狙って、切り立った崖に登り滑落し、命を落とすこともありました。まさに命がけの魅惑の花だったそうです。
・分類
属名:ラン科ウチョウラン属(多年草)
学名:Ponerorchis graminifolia
和名:ウチョウラン
開花:6月〜7月
耐寒性:あり(冬季休眠)
耐暑性:やや弱い
・名前の由来
ウチョウランの名前の由来は、はっきりしていません。自生地の崖に留まる羽を広げた蝶々のような姿から「羽蝶蘭」と名付けられたという話がありますが、それは後からつけた当て字のようです。カラスの頭の形に似ていることから「烏頂蘭」という説もあります。ウチョウランの学名「Ponerorchis」はポネオルキスと読みます。小さな(ポネ)蘭(オルキス)という意味です。
・花言葉は「静かな愛情」「技巧的」
訪れる者もいない静寂な崖の斜面に楚々と咲く姿から「静かな愛情」という花言葉になりました。一方「技巧的」という花言葉は、小さいながらも複雑な花姿からきているようです。
古くより、山野草愛好家の間で人気のウチョウラン。
小さな球根から根と葉を出す多年草で、草丈15cmほどのコンパクトな植物です。原生地では、切り立った崖や急斜面に自生します。しかし業者により乱獲されたため、今では自生種はほとんどありません。園芸品種として、熱心な愛好家によりプロアマ問わず育種が進み、素晴らしい交配種が沢山生み出されました。
・命を落とす者も・・・
昭和40年代、愛好家によるウチョウランの一大ブームが巻き起こりました。1株で数十万円にも価格が高騰したため、当時は投機目的で乱獲する者が後を絶ちませんでした。一獲千金を狙って、切り立った崖に登り滑落し、命を落とすこともありました。まさに命がけの魅惑の花だったそうです。
・分類
属名:ラン科ウチョウラン属(多年草)
学名:Ponerorchis graminifolia
和名:ウチョウラン
開花:6月〜7月
耐寒性:あり(冬季休眠)
耐暑性:やや弱い
・名前の由来
ウチョウランの名前の由来は、はっきりしていません。自生地の崖に留まる羽を広げた蝶々のような姿から「羽蝶蘭」と名付けられたという話がありますが、それは後からつけた当て字のようです。カラスの頭の形に似ていることから「烏頂蘭」という説もあります。ウチョウランの学名「Ponerorchis」はポネオルキスと読みます。小さな(ポネ)蘭(オルキス)という意味です。
・花言葉は「静かな愛情」「技巧的」
訪れる者もいない静寂な崖の斜面に楚々と咲く姿から「静かな愛情」という花言葉になりました。一方「技巧的」という花言葉は、小さいながらも複雑な花姿からきているようです。
ウチョウランの地域個体群6種
ウチョウラン属にはいくつもの変種があり、亜種が大きく分けて6種類あります。しかし本来原種であったものも交雑が進み、現在ではDNA検査しないと品種がはっきりしなくなってきています。いま名前がついている種も、今後の研究により変更もあり得るかもしれません。
1. ウチョウラン(Orchis graminifolia)
産地:本州北部〜九州
少し分かりにくいですが、ウチョウラン属の中にある、「ウチョウラン」という種があります。やや大きめの花を咲かせます。花の変種が多いので収集家たちに愛されています。東北の寒冷な環境を好む品種は、暖地での栽培は難しいでしょう。
2. サツマチドリ(Orchis graminifolia var.micropunctata)
産地:鹿児島県甑(こしき)島
薩摩半島の甑(こしき)島で発見された種類。当時はクロカミランの一種として扱われました。花はやや小ぶりで距は短いのが特徴です。開花時期は他に比べやや遅い7月頃です。花つきがよく20輪以上の多花性で人気があります。「甑の宝」など名前の付いたものもあります。
3. クロカミラン(Orchis graminifolia var.kurokamiana)
産地:佐賀県黒髪山
佐賀県の黒髪山のみに自生する亜種で、環境省レッドリスト2019の絶滅危惧種1A類に指定されています。細いかよわそうな花径に10輪以上花を咲かせます。ウチョウランの中では開花は早いでしょう。花の変種が少なくあまり交配に使われないので華美なお花はありませんが、ヒナランとの交配種が人工的に作られています。
4. アワチドリ(Orchis graminifolia var.suzukiana)
産地:千葉県安房郡
房総半島にのみ自生する原種で、環境省レッドリスト2019の絶滅危惧種1A類に指定されています。ウチョウランより花は小ぶりで距が大きく、8月頃咲きます。葉数が多いのが特徴的です。川沿いによく見られ、水分を好みます。蒸散量も多いので家庭での栽培は受け皿から底面給水するとよいでしょう。
5. ヒナチドリ(Orchis chidori)
産地:北海道〜本州
ブナの古木や倒木の上に自生しています。夏の暑さに弱いので東北以西では高地など寒冷な土地でないと育たないかもしれません。ウチョウランとの交雑種に「スズチドリ」があります。
6. ニョホウチドリ(Orchis joo-iokiana)
産地:関東〜中部
日光の女峰山で発見された種です。関東から中部の高地に自生しています。崖ではなく野原に生えているところが他のウチョウランとは違うところです。分類にはやや疑問が残り、今後の研究が待たれます。
1. ウチョウラン(Orchis graminifolia)
産地:本州北部〜九州
少し分かりにくいですが、ウチョウラン属の中にある、「ウチョウラン」という種があります。やや大きめの花を咲かせます。花の変種が多いので収集家たちに愛されています。東北の寒冷な環境を好む品種は、暖地での栽培は難しいでしょう。
2. サツマチドリ(Orchis graminifolia var.micropunctata)
産地:鹿児島県甑(こしき)島
薩摩半島の甑(こしき)島で発見された種類。当時はクロカミランの一種として扱われました。花はやや小ぶりで距は短いのが特徴です。開花時期は他に比べやや遅い7月頃です。花つきがよく20輪以上の多花性で人気があります。「甑の宝」など名前の付いたものもあります。
3. クロカミラン(Orchis graminifolia var.kurokamiana)
産地:佐賀県黒髪山
佐賀県の黒髪山のみに自生する亜種で、環境省レッドリスト2019の絶滅危惧種1A類に指定されています。細いかよわそうな花径に10輪以上花を咲かせます。ウチョウランの中では開花は早いでしょう。花の変種が少なくあまり交配に使われないので華美なお花はありませんが、ヒナランとの交配種が人工的に作られています。
4. アワチドリ(Orchis graminifolia var.suzukiana)
産地:千葉県安房郡
房総半島にのみ自生する原種で、環境省レッドリスト2019の絶滅危惧種1A類に指定されています。ウチョウランより花は小ぶりで距が大きく、8月頃咲きます。葉数が多いのが特徴的です。川沿いによく見られ、水分を好みます。蒸散量も多いので家庭での栽培は受け皿から底面給水するとよいでしょう。
5. ヒナチドリ(Orchis chidori)
産地:北海道〜本州
ブナの古木や倒木の上に自生しています。夏の暑さに弱いので東北以西では高地など寒冷な土地でないと育たないかもしれません。ウチョウランとの交雑種に「スズチドリ」があります。
6. ニョホウチドリ(Orchis joo-iokiana)
産地:関東〜中部
日光の女峰山で発見された種です。関東から中部の高地に自生しています。崖ではなく野原に生えているところが他のウチョウランとは違うところです。分類にはやや疑問が残り、今後の研究が待たれます。
ウチョウランによく似たお花は?
・イワチドリ
日本に自生するラン科ヒナラン属の植物。芽吹く時期は一緒ですがウチョウランより2ヵ月ほど早く咲くので見分けがつきます。イワチドリも交配が進み、様々な園芸品種があり、ウチョウランと並び人気を博しています。
日本に自生するラン科ヒナラン属の植物。芽吹く時期は一緒ですがウチョウランより2ヵ月ほど早く咲くので見分けがつきます。イワチドリも交配が進み、様々な園芸品種があり、ウチョウランと並び人気を博しています。
・エビネ
ラン科エビネ属。4月〜5月とウチョウランよりも早い開花となります。花色の変異が大きいエビネも愛好家たちによるブームでかつては数々の銘品が高価格で取引されました。
ラン科エビネ属。4月〜5月とウチョウランよりも早い開花となります。花色の変異が大きいエビネも愛好家たちによるブームでかつては数々の銘品が高価格で取引されました。
ウチョウランの育て方
・植え付け
3号ほどの鉢で育てます。山野草の鉢がよいでしょう。苗は2月〜3月に植え付けます。置き場所は明るい半日陰です。午前中は日光を浴びて、午後2時以降の西日を遮る場所が良いでしょう。芽が出始めは、雨に当たらないほうがよく、風通しの良い軒下が望ましいです。日がまったく当たらないと徒長します。
・用土
微塵を抜いた極小粒の硬質鹿沼土、極小粒の山野草用の硬質赤玉土、蝦夷砂、桐生土、軽石などの水はけのよい土に、山ゴケをブレンドして水はけと水持ちを両方かなえる用土にしてもよいでしょう。お住まいの地域や環境によっても違いますので、自分に合った用土のブレンドを手探りで探します。迷ったらごく普通の山野草の土を利用し、様子を見るとよいでしょう。
植え付けが終わったら表面に富士砂などで化粧をすると見栄えがよいです。
・水やり
自生地では苔類と一緒に見られることからも、水が好きな植物であることが伺えます。しかし上からシャワーでバシャバシャかけるのではなく、株元にそっと水を与えてください。冬季は休眠するのでお水は与えません。霜が下りなくなったころから水やりを再開します。
・休眠期
冬季は休眠しますので、鉢のまま完全に乾かしてください。あるいは球根を堀上げて新聞紙に包んで袋に入れて保管してもよいでしょう。また、夏季も暑さをしのぐため地上部が枯れ、夏眠するものもあります。
・肥料
春と秋に肥料をやります。4月〜6月の間に緩効性の置き肥を、9月〜10月には緩効性の置き肥や即効性のある液肥を与えるとよいでしょう。
・増やし方
球根が分球したら鉢を分けるとよいでしょう。種まきでも増やせますが、初心者向きではありません。
自分の思い描く花を作出したい場合は、開花中に交配を行います。秋に採種し2月〜3月に種をまきます。普通の用土にまいても芽は出ません。ラン菌の力が必要です。「段ボール播種」というテクニックを使うと成績がよいようです。
3号ほどの鉢で育てます。山野草の鉢がよいでしょう。苗は2月〜3月に植え付けます。置き場所は明るい半日陰です。午前中は日光を浴びて、午後2時以降の西日を遮る場所が良いでしょう。芽が出始めは、雨に当たらないほうがよく、風通しの良い軒下が望ましいです。日がまったく当たらないと徒長します。
・用土
微塵を抜いた極小粒の硬質鹿沼土、極小粒の山野草用の硬質赤玉土、蝦夷砂、桐生土、軽石などの水はけのよい土に、山ゴケをブレンドして水はけと水持ちを両方かなえる用土にしてもよいでしょう。お住まいの地域や環境によっても違いますので、自分に合った用土のブレンドを手探りで探します。迷ったらごく普通の山野草の土を利用し、様子を見るとよいでしょう。
植え付けが終わったら表面に富士砂などで化粧をすると見栄えがよいです。
・水やり
自生地では苔類と一緒に見られることからも、水が好きな植物であることが伺えます。しかし上からシャワーでバシャバシャかけるのではなく、株元にそっと水を与えてください。冬季は休眠するのでお水は与えません。霜が下りなくなったころから水やりを再開します。
・休眠期
冬季は休眠しますので、鉢のまま完全に乾かしてください。あるいは球根を堀上げて新聞紙に包んで袋に入れて保管してもよいでしょう。また、夏季も暑さをしのぐため地上部が枯れ、夏眠するものもあります。
・肥料
春と秋に肥料をやります。4月〜6月の間に緩効性の置き肥を、9月〜10月には緩効性の置き肥や即効性のある液肥を与えるとよいでしょう。
・増やし方
球根が分球したら鉢を分けるとよいでしょう。種まきでも増やせますが、初心者向きではありません。
自分の思い描く花を作出したい場合は、開花中に交配を行います。秋に採種し2月〜3月に種をまきます。普通の用土にまいても芽は出ません。ラン菌の力が必要です。「段ボール播種」というテクニックを使うと成績がよいようです。
まとめ
魅惑的なウチョウランの世界に触れてみましたが、愛好家たちの熱い思いが伝わったでしょうか。
当時、投機目的にされた希少種も今では数千円にまで値下がりしました。なぜ絶滅危惧に追い込まれねばならなかったのか。人間の身勝手さをよそに、ウチョウランは「静かな愛情」の花言葉どおり、今年も初夏に美しく咲き誇ります。
監修:冥王堂あや
クリスマスローズ専門店「冥王堂」店長。交配、育種にも携わる。2014年「クリスマスローズの世界展」にて、新花コンテスト「特別賞」「ミヨシ賞」を受賞。
(公)日本園芸普及協会グリーンアドバイザー。
当時、投機目的にされた希少種も今では数千円にまで値下がりしました。なぜ絶滅危惧に追い込まれねばならなかったのか。人間の身勝手さをよそに、ウチョウランは「静かな愛情」の花言葉どおり、今年も初夏に美しく咲き誇ります。
監修:冥王堂あや
クリスマスローズ専門店「冥王堂」店長。交配、育種にも携わる。2014年「クリスマスローズの世界展」にて、新花コンテスト「特別賞」「ミヨシ賞」を受賞。
(公)日本園芸普及協会グリーンアドバイザー。