鈴本演芸場 江戸時代、本牧亭の流れをくむ伝統ある寄席

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東京の定席のひとつ、鈴本演芸場は江戸時代に開設された「本牧亭」の流れをくみ、160年の歴史を誇ります。
日本の寄席演芸の歴史とともに歩んできたといえる、伝統ある演芸場の歴史と特徴を見ていきましょう。

周辺地域と沿革

鈴本演芸場は、東京都台東区上野にあり、不忍池や上野公園からほど近い場所に建っています。最寄りの駅はJR御徒町、営団地下鉄上野広小路、都営地下鉄上野御徒町など、アクセスも便利です。
一体は下町の雰囲気を残し、JRの御徒町駅から上野駅までの線路沿いに、食料品などを売る小さな商店が連なった「アメヤ横町」、合格祈願に受験生が訪れる菅原道真を祀った湯島天神など、名の知られた施設や建築物があります。

鈴本演芸場の歴史は江戸時代までさかのぼります。
1857年鈴本の祖先、初代席亭(主人)の龍助が、この地、上野広小路に「軍談席本牧亭」という講釈場を始めましたが、これが鈴本の母体となります。

余談ですが、演芸場のご主人のことを「席亭」といいます。これは、寄席の亭主を縮めたことからできた呼称だそうです。

当時、この界隈は不忍池が現在より張り出しており、あたりの地形が横浜に似ていました。また、近隣には金沢というお菓子屋さんがあり、このことが横浜の本牧を連想させることから、「本牧亭」と名付けられたそうです。

明治時代になり、本牧亭の席亭は苗字を鈴木としました。この苗字の「鈴」と本牧亭の「本」を合わせてとって講釈場の名前を「鈴本」と変更しました。名前は後に「鈴本亭」さらに「鈴本演芸場」と変遷していきます。

元々の「軍談席本牧亭」は現在の鈴本演芸場の裏手にありましたが、1923年の関東大震災の後に現在の場所に移りました。
その後、1971年にビルに建て替え、現在の鈴本が落成しています。

施設概要

入口には2匹の狛犬が鎮座して、来る人を出迎えます。この狛犬ですが、まるで笑っているように上を向いて口を開けています。
また入場券売り場の上の一段高いところには寄席太鼓が置かれていて、開場時には前座が大入りを祈願して、「どんどんどんとこい」と太鼓を打ちます。

満席でなければ、入場券売場に「席あります」の札が出ており、入場券を買って入ります。入口のすぐそばに切符の「もぎり」担当の方がいらっしゃるので、半券を受け取って、さらに中に進みます。通路は若干狭いのですが、突き当たりにエレベーターとエスカレーター、階段があり、3階の客席に上がります。
このエスカレーターは3階の客席に直通なので、結構長い作りになっています。

客席と客層

座席数は全部で285席。自由席(特別興行を除く)なので、好きな席に座れます。
座席での飲食は自由です。売店ではお菓子やお弁当を販売していますし、ビールやジュース、お茶などの飲み物は2階の自動販売機で買うことができます。 座席には小さなテーブルが付いているので、お菓子や飲み物をそこに置いてゆっくり鑑賞することができます。

客層は、比較的上品なお客さんが多いといわれています。おそらくヤジや掛け声があまり飛ばないということかと思われますが、それでもひいきの芸人が出てくると「待ってました!」の掛け声が、客席からちらほらと沸いてきます。

入場時のマナー

入場した際に一つ注意することがあります。開演後に入場した場合は後ろの入り口から入り、もし舞台上で芸人が演技中であれば、入口の側で立ち見をして、その芸人の出番が終わってから席を探します。
他のお客さんが楽しんでいるところを邪魔しないようにする配慮です。また、芸人の入れ替わりの後、前座が舞台の袖で客席を確認し、お客さん全員が着席したのを見届けてから、めくりをめくって、次の芸人の登場となります。

出演は落語協会のみ

出演者は落語協会所属の芸人のみとなります。以前は落語協会と落語芸術協会が交互に出演者を配給していました。
しかし、落語芸術協会の出演者のときは、落語協会に比べてお客さんの入りが少ないことが続き、1983年に鈴本演芸場の収支が悪化したのを機に、演芸場から改革案が出されました。それは、落語芸術協会の興行の際は出演者を半分に減らし、落語協会から若手の演者を半数出すというものです。しかし、落語芸術協会はこの提案に難色を示し、協議は物別れに終わりました。そして1984年9月を最後に、落語芸術協会の演者は鈴本演芸場に出演することがなくなり現在に至っています。

昔は「うまい落語協会」「面白い芸術協会」と言われ、バランスが取れていたそうですが、長い歴史の中で芸術協会に若手が少なく、芸人の数や層に差があった時期ができたことが背景にあるようです。しかし、近年は芸術協会にも若手が育ち、両協会の切磋琢磨で演芸の世界がさらに発展することが期待されています。

定席と特別公演、正月初席

定席は、上席(1~10日)、中席(11~20日)、下席(21~30日)で、昼席(12時30分~16時30分)、夜席(17時30分~20時40分)の2部制となっています。31日は特別興行や独演会が行われますが、何もない場合は休館となります。

特別興行は年末恒例の「年の瀬に芝浜を聴く会」や、新春の「吉例落語協会初顔見世公演」、3月下席の「真打披露公演」などがあり、公演時間や料金が定席とは異なります。

元旦から4日まで開かれる「吉例落語協会初顔見世公演」の期間は、特別に3部制になります。1部(11時~13時40分)、2部(14時~17時)、3部(17時30分~20時40分)となり、完全入れ替え制です。チケットは前売りと当日売り、全席指定で、入場料も普段より若干高めとなります。
また、1月5日から10日は昼夜2部制入れ替えなし、チケットは当日売り自由席に戻りますが、特別興行のため入場料は普段より高めになっています。
歴史と伝統のある鈴本演芸場は、落語や演芸を見るにはちょうど良いサイズ。
正月や特別興行を除いて自由席でいつでも入退場ができ、座席でお弁当やお菓子、ビールなど飲食も自由で、くつろぎながら演芸を楽しめる、初心者でも入りやすい寄席です。
またJRや地下鉄などアクセスも便利で、近隣には美術館や浅草などの観光施設も多いので、いろいろな楽しみ方ができます。

浅草観光に落語はいかが?歴史ある「鈴本演芸場」の魅力とは

現在東京都において、「浅草演芸ホール」「池袋演芸場」「新宿末廣亭」そして「鈴本演芸場」の4軒が1年365日落語を楽しむことができる定席の落語寄席として機能しています。
その中でも鈴本演芸場は現存する寄席の中でも最も古い歴史を持つ寄席であり、今もなお広くファンたちに愛され続けているようです。
今回は、そんな鈴本演芸場についてその歴史や特徴、施設の詳細などをそれぞれ紹介していきたいと思います。

幕末から続く「鈴本演芸場」

鈴本演芸場は現在はビルの中に併設されていますが、その歴史は古くおよそ江戸時代から続くとされている寄席となります。まずはその歴史から紹介していきましょう。

1854年(安政4年)、江戸の上野広小路の地に「本牧亭(ほんもくてい)」という施設が開場したそうです。こちらは「軍談席」、今で言うと講釈場という、演芸のひとつである「講談」を公演する場として、現在の席亭の祖先である本牧屋仙之助さん(またの名を鈴木龍助)によって開設されたとか。

しかしある時、宗教信者によるお題目の大合唱が響き渡り、営業に支障が出るようになったことで本牧亭は1876年に一時閉鎖されることになります。そこで初代席亭が、新たに落語や色物を公演する場として開場したのが、「鈴本亭」だったとか。こちらは、現存している「鈴本演芸場」の前身となる施設となりますが、いつ鈴本演芸場へと改称されたのかは明確には判明していないそうです。

続く1950年には、鈴本亭の裏に当時日本唯一となっていた講談専門の場として本牧亭が再建されています。本牧亭は講談を公演する場としてだけでなく、「講談バス」の運行やさまざまなイベントを催すなど、講談の振興に強く貢献したと言われていますが、1972年に開場を改装した後、1990年には閉場することとなります。しかしその後も1992年に湯島に場所を移し、小規模ではありましたが「黒門町本牧亭」として講談の公演を開催していたそうですが、惜しくも2011年に経営破たんを理由にこちらも閉場することとなったようです。

一方で、鈴本演芸場は関東大震災後に現在の場所に再建されたと言われています。さらに1971年には全面的な建て替えを行い、寄席では初めて近代的なビル建築に生まれ変わったそうです。一方で、2003年には火災による死亡事故の発生により2004年まで営業が休止されていましたが、2007年には晴れて150周年を達成し、記念パーティーなども開催されたそうです。また、現在はビルの3階、4階に寄席が開設されており、同ビルのその他の階には飲食店が軒を連ねています。

鈴本演芸場ならではの特徴って?

現在東京都で定席として機能している「浅草演芸ホール」「池袋演芸場」「新宿末廣亭」とは違って、鈴本演芸場では「落語協会」の興行のみが開催されています。と言いますのも、以前は落語芸術協会の興行も行っていたそうなのですが、興業の成績が思うように伸びなかったことで鈴本演芸場側が落語芸術協会側に落語協会と合同での番組編成を持ちかけたところ、確執が生まれ遂には1984年8月に絶縁状態となったそうです。それ以降、落語芸術協会の興行は行われておらず、上席(1~10日)、中席(11~20日)、下席(21~30日)のすべての日程を落語協会所属の芸人さんたちが担当しているようです。

また、鈴本演芸場では1階の入り口にある切符売り場の上に寄席太鼓の櫓が設置されており、開場前の一番太鼓や終演の際の追い出し太鼓を前座の方が叩く姿を間近で見ることができます。

さらに、鈴本演芸場ならではの興行として「早朝寄席」というものがあります。こちらは日曜日の朝10時に開演され、11時30分には前座が終了するイベントであり、落語協会に所属している二つ目の落語家さんたちの公演を楽しむことができます。ちなみに入場料は1人500円、1回につき二つ目の落語家さんたちが4人高座に立つそうです。

知っておきたい!鈴本演芸場の豆知識

鈴本演芸場は285もの席数が収納されており、そのすべてが基本的には自由席となっています。また、チケットは当日券のみとなっており、それぞれ大人2800円、学生2500円、子供1500円で入場することができます。ちなみに毎月31日に開催される特別興行の折には、入場料は多少変動しますので事前にチェックしておくと良いと思います。加えて、特別興行の際は全席指定となることもあるので注意してください。

また、鈴本演芸場には実は「ラブシート」と呼ばれる席が存在します。こちらはビル内でエレベーターを設置しなければいけなくなったときに席数を減らした際、偶然できた変形した席のことで、常連さんの間で人気を博しているそうです。

鈴本演芸場に行ってみよう!

いかがでしたか?
鈴本演芸場は基本的には12月29~31日を除いた年中無休での営業となっています。
しかし時々不定期に休館することもあるようなので、出かける前にチェックしておくと良いと思います。また、以下に鈴本演芸場の詳細をまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。

「鈴本演芸場」
住所:東京都台東区上野2-7-12
電話番号:03‐3834‐5906
アクセス:JR上野駅不忍口より徒歩10分、東京メトロ銀座線上野広小路駅A3出口より徒歩1分

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