種類色々送り火特集

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都会ではあまり行われないかもしれない仏事の一つに、迎え火と送り火があります。
迎え火とはお盆の時に先祖の霊魂に「家はこっちですよ」との目印になるものです。お盆の時には故郷に帰るものですが、ご先祖様もそれは同じなのです。
送り火はその逆で、冥界に戻る先祖を送り出す為の焚き火を言います。

ご家庭で行う場合

ご家庭で行う時は、13日に迎え火、15日ないし16日の夕刻に送り火を行います。
「ちょっと火を焚くのは無理」という場合もあるでしょうが、ご先祖様に対する敬意や誠意を持って可能な限りの法要を行うことです。重要なのは気持ちですが、いざ行う場合もただ火を焚けばいいというものではありません。
ついでに芋を焼くなどもってのほか(そもそも季節柄焼き芋は美味しくありません)。ちゃんと作法があります。燃やすものはおがら、カンバ、稲藁などです。おがらは麻の皮、カンバは白樺の皮になります。おがらの方はスーパーなどでも手に入るので、おすすめです。
これらを焙烙(ほうろく)という素焼きの皿の上に乗せ、玄関先で火を付けます。「迎え火はともかく、帰る時には火を焚かなくてもいいのでは?」との疑問もあるでしょう。
しかし、一部の宗教では火を焚くことで発生する煙には天と地を繋ぐ効果があるとされます。線香の煙もあの世への道しるべです。ご先祖様が迷わないで冥界に帰れるよう、できる場合はしっかりと送り火をしましょう。

燈篭流しも送り火

送り火とは、何も個人宅だけで行うものではありません。花火大会の時などに行われる燈篭流しも、送り火の一種です。
地域によってやり方が異なります。長崎の場合は精霊流しと呼ばれており、長崎市では爆竹鳴らすなどして派手にご先祖をお送りするのです。「また来年!」と爆音付きでお見送りとは、結構お祭り好きですね。

慰霊の意味を持つ燈篭流し

一方、戦争での犠牲者を見送る為の慰霊祭的な送り火もあります。広島県は原爆ドームの対岸にある元安川で行うピースメッセージとうろう流しや、長岡空襲の犠牲者を見送る新潟県長岡市の柿川燈篭流しなどです。

「大文字焼き」じゃなかった、京都の五山送り火

京都では大々的な送り火が行われます。五山の送り火と呼ばれるもので、「大」の字を筆頭に、5分ごとに五つの山で送り火を行うのです。「大文字焼き」との認識が多いですが、実はこの五山の送り火を始め、京都に大文字焼きはありません。「大文字焼きだ」と言ったら、現地の人に嫌がられることもあるので注意しましょう。「大文字山焼き」と呼ばれることはあるようです。ちなみに、山と点火時間は以下の通りになります。

【大文字】
「大」の字の形に天下です。如意ヶ嶽とも呼ばれる京都市は左京区大文字焼きで、午後の8時に点火をします。

【松ヶ崎妙法】
同じく左京区の松ケ崎、西山と東山で午後8時5分に点火。「法」の字が作られます。

【舟形万燈篭】
京都市北区西賀茂の船山で午後8時10分点火。字ではなく、船の形をした絵として燃え上がります。何故に船なのかというと、西方寺を開いた円仁和尚が唐から帰る際、嵐に遭い、御祈祷をしたら無事に帰れたとの伝承が元になっているのです。

【左大文字】
京都市北区大北山の左大文字山にて午後8時15分点火。

【鳥居形松明】
京都市右京区嵯峨鳥居本の曼荼羅山にて、午後8時20分点火。鳥居の形をしています。

まとめ

時に慰霊の意味を込め、時に祭りの一種として盛大に行われる送り火。ご先祖様やあらゆる先人が作り上げた文化の継承を感じずにはいられない行事と言えます。
もし参加の機会があったなら、ただ火を焚くだけではないこの行事に参加できたことに感謝をし、誠意と敬意をもって先人の魂が安らげる場所へと帰りつけるよう祈りましょう。送り火においては、何よりも先人の為に祈ることが肝要と言えます。
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