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ヤマモモは赤い実がかわいい育てやすい果樹

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ヤマモモは、関東以西では街路樹としても庭植としてもよく栽培され、もともと山に自生している桃のような実がなる木なので「ヤマモモ」といいますが、一般に流通している桃とは別の品種です。実は日持ちがしないので流通していませんが、見た目がかわいらしいだけでなくおいしく食べられます。

放置すると20mの大木に育ってしまいますが、樹高を低めに抑えて育てることが可能なので、光沢のある葉「照葉」と赤い実のコントラストも美しく、病害虫にも強いのでぜひ育ててほしいおすすめの果樹の一つです。

平安時代から食べられていた日本にも自生している木

ヤマモモは関東以西の日本国内や中国南部からインドにかけて自生している雌雄異株の常緑樹で、雌木は完熟してくると真っ赤になる直径3cmくらいの実を一枝に寄り集めたようにつけます。
実がなるのは6〜7月の梅雨時ですが、完熟した実は雨に当たると傷んでしまうので収穫が難しいためあまり流通していません。

公園木や街路樹として関東以西ではどこででもみられるような木で、5月ごろ未熟な果実がぽろぽろおち、実の成熟期になると、落ちた実で木の下が真っ赤に染まります。

実はコロコロとしてかわいらしく目立つのですが、花はあまり目立ちません。
枝先に房状に寄り集まった小さな花が3〜4月ごろ付くのですが、雄花が2〜4cm、雌花は1cmの小さな花穂のため、目に留まりにくい花です。

毎年実をつけるためには実を摘み取る

通常、雌木雄木両方ないと結実しないものですが、暖地ではそこここにヤマモモの木があるため、雌木だけを育てていても問題なく結実します。

毎年実を収穫するためには、ヤマモモに一度にたくさん実をつけすぎると木が疲れてしまって、翌年は前年の一割程度しか実をつけないようになるので、葉5枚あたりに1果になるよう未熟果を摘み取る「摘果」をしますが、観賞用として楽しむ場合や、隔年着果でかまわないのであれば、自然任せでもかまいません。

樹高3〜4mに調整して育てる常緑樹

ヤマモモは剪定しないでいると15〜20mの巨木になりますが、大きくなる前にてっぺんの枝を切り落とす摘芯をすることで3〜4mの高さに樹高を抑えて育てることができます。

ヤマモモの枝は、春・夏・秋の年3回伸びますが、花芽は夏、春に伸びた「春枝」の先端近くにできるので、花芽を温存するためになるべく細かな剪定をせず、剪定は伸びすぎた枝や混み枝を間引いて切り落として樹形を整える程度にとどめておきます。

剪定の適期は3〜4月で、大きくなりすぎないように行う摘芯以外は、あくまで樹形全体を整える程度に留めます。

ヤマモモは種か取り木で増やして

完熟した実を土に埋めておくと、低温で保存しなくても屋外なら低温保存されており、翌春芽を出すものもあるので、種から育ててみるのもおすすめですが、雌木雄木どちらが生えてくるかはっきりしないし、種から育てると実をつけるまで 15〜20年かかるといわれています。

4〜6月に、枝の付け根の皮をはいで、水で湿らせた水苔を巻いた上にビニール袋をかぶせておき、根が出てきたら切り落として苗にする「取り木」をすると、より早く実を楽しめるようになります。

種から育てた木を台木にして接ぎ木することや、挿し木することもできないわけではありませんが、ヤマモモはタンニンを多く含んでいるため接ぎ木は合着しにくく、挿し木は根が出にくく、どちらも難しいとされています。

ヤマモモの実は食べる前に虫出ししてから

ヤマモモにはあまり病害虫の被害はでないため、街路樹も公園木も含めてほぼ無農薬で栽培できますが、実には虫が入っていることがあるので、虫出ししてから食べるようにしましょう。
塩水を作ってその中に実を1時間くらい漬けておくと虫が出てくるので、虫出ししてから食用にします。

未熟な赤くない実は酸味が強いのですが、赤い実は甘ずっぱいおいしさがあります。
実は3cmくらいありますが、種がかなり大きいので、実の部分の厚さはあまりありません。生のまま丸ごと冷凍保存もできます。

完熟したヤマモモの実は日持ちがしないので、収穫したらすぐに虫出しして食べきれない分はすぐに調理するか冷凍保存します。

果実酒に・ノンアルコールでジュースに・ジャムに

虫出しして水気をふき取ったヤマモモの実を氷砂糖とホワイトリキュールやブランデーに漬け込んで果実酒に、ヤマモモの実と氷砂糖だけを漬けてノンアルコールのヤマモモジュースにして、2〜3か月後には砂糖が溶けてきれいな赤色のドリンクができるので、大人も子供も楽しむことができます。

果実酒やジュースに使ったヤマモモや、生のヤマモモを砂糖と煮て裏ごしして種を除いてからヤマモモジャムに、ヤマモモを砂糖水で煮てヤマモモのシロップ漬けにして、スイーツにするのもおすすめです。

実も樹皮も生薬に・樹皮は褐色の染料にも

ヤマモモの実を「楊梅(ようばい)」、樹皮をはいで乾燥させたものを「楊梅皮(ようばいひ)」と言い、生薬としても使われています。
楊梅は健胃・整腸・消化を助ける作用があり、塩漬けを2〜3粒食べると二日酔いに効くといわれていました。
楊梅皮は下痢止めの効果があり、煎じた液は扁桃炎や口内炎などに効くうがい薬として・湿疹かぶれに効く塗布液として使われていました。

実際に使用すると激しい痛みが伴うこともあり、とりすぎるとかえって害になるとも言われているので、安易に自分で処方してみないようにしましょう。

樹皮を煮出した汁で布を染めると褐色に染まり、塩水に強いことから古くから漁網を染めるのに使われていましたが、この色は「媚茶色」として、江戸時代に流行しました。

ヤマモモは古くから人との関りが深い木!?

ヤマモモは、実が楽しまれている木ですが、その歴史についてもご紹介しておきます。ヤマモモは、日本も原産地で本州の中部より南で自生しているのも見られますが、実も食べられるとあって日本人にもよく親しまれている木です。

元々は緑化のために植えられた木!?

ヤマモモは、高さが15mや20mなどになり、大きく育つ木です。また、光沢のある常緑の葉っぱがたくさん付きますので街路樹や庭木にもよく植えられています。 元々は、緑化を目的にして通りに多く植樹されたものです。また、漁村で川に栄養をあたえるために山を豊かにしようということで、ヤマモモなどを植え、人工林を作っていたとも伝えられています。
緑の葉っぱがいっぱいのヤマモモは、家の周りの防風林も兼ねて海辺の近くの家などに植えられていたり、耐火性も兼ねたりすることがあるようです。防火林として植えられている地方があります。
また、最近ではヤマモモが乾燥や大気汚染にも強いということで街路樹に植えることもあるようです。そういえば、街中の街路樹にもよく見かけますよね。 ヤマモモは、耐寒性はやや弱いものの耐暑性が強く大きく育つ木として人気です。

甘酸っぱい実は戦中戦後の楽しみに

歴史的には平安時代から食べられていたというヤマモモの甘酸っぱい実ですが、生で食べられるため戦中戦後もよく食べられていたようです。甘いものがあまりなかった時代に採って食べるのが楽しみだったという思い出が残っている人も多く、日本人には親しみのある木です。
「ヤマモモジャム」や「ヤマモモドリンク」などがあるというお話を書きましたが、野生種のヤマモモ以外に特に酸味の強い「瑞光」や大玉で酸味の弱い「森口」、「秀光(秀峰、平井1号)」などといった品種改良のものも作られています。それらは、農作物として作られていて、ジャムやドリンクに加工されるようになってきています。
中国では、「楊梅酒」として白酒と砂糖にヤマモモの実を漬け込んだリキュールのお酒が造られています。最近ではいろいろなものに加工されて活用されているヤマモモです。

ヤマモモの枝葉は漁にも活用!

ヤマモモの樹皮は中国では「楊梅皮(ようばいひ)」という生薬になっていますが、日本では、ヤマモモの枝葉を使って高知県でシイラ漬漁業も行われています。葉が付いたヤマモモの枝を海の中に垂らし、葉に隠れようとする小魚を集め、それをえさにシイラを巻き網で捕まえる漁法です。密に生えるヤマモモの葉っぱを活用した漁法と言えます。
そんな風に枝葉も使われているというのは予想外ですよね。実、樹皮、枝葉と様々なものが役に立っているヤマモモです。

ヤマモモの花は小さくて目立たない花

こうして見てきますとあまり花については印象に残らないヤマモモですが、ヤマモモの花は3〜4月の春に咲きます。小さな桃色の花ですが地味な色であまり目立ちません。花弁が4枚で、密に互生して生える葉っぱの真ん中に鈴なりの花が咲きます。小さな実がいっぱい付いているといったようなイメージの花です。
そのヤマモモの花言葉は、「教訓」「一途」「ただひとりを愛する」などといったものになっています。ヤマモモは、雌雄異株で遠く離れた株に対して花粉を飛ばして実をならせることから「ただ一人を愛す」「一途」の花言葉になったのではないかと言われています。
また一つには、ヤマモモの地味な花からくるものではないかと思います。花は地味な花ですが、その後大きな実を実らせ、それが甘酸っぱくて人を楽しませるというのがヤマモモです。ヤマモモの花は、一途に甘い実を実らせる影の演者のようにも思えます。地味な花があってこそ、あの赤くて目立ったかわいらしい実が楽しめます。
そうしたヤマモモの花は、漁でヤマモモの枝葉が使われていた高知県の県花や徳島県の木などにもなっています。
そんなヤマモモの花と花言葉のことを考えながら実も美味しく味わってみるといいかもしれませんね。

ヤマモモ狩りに行ってみませんか

ヤマモモが自生している所、漁村の山間部などの植えられた場所に出かけていって、ヤマモモ狩りをするのもいいですよね。6〜7月に収穫期を迎えますのでそうした所を探すのも楽しみです。
梅雨の時期になるとヤマモモの実が水っぽくなりますので、梅雨の合間をぬって採りに行くのもおすすめです。その時期を逃すとあまり美味しくなくなる可能性がありますので短い時期を楽しみましょう。

ヤマモモは実、樹皮、枝葉と有益!街路樹でも親しまれる木!

いかがでしょうか。ヤマモモが実、樹皮、枝葉と有益で、いろいろな意味で人のためになっていることがよくわかったのではないでしょうか。様々な地域で防風林や防火林や街路樹として親しまれています。
環境にも強いということですので、これからも益々ヤマモモを街中に植えることも多いでしょう。
美味しい実が有名ですが実だけでなく、古くも新しくも日本ではいろいろな点で親しまれているヤマモモの木と言えそうですね。

苗から育てるヤマモモとおすすめ品種

ヤマモモは関東以西の街路樹や庭木によく育てられていて、秋になると木にいっぱい実がなって、道路が真っ赤に染まるほど実がこぼれ落ちています。

ヤマモモの実は、コロンとしたかわいらしい赤い実で味はおいしいのですが、意外なほど大きな種が入っているためか、たくさん実がなっていても摘んでいる人はあまり見かけません。
ヤマモモの実は無農薬でも育てやすい反面、中には虫が付きやすいので、水に数時間つけて虫だししてから、ジャムや果樹酒に利用します。

ヤマモモは、もともと日本にも自生していた木なので、非常に育てやすい植物です。
種からも育てられますが、実がなるまでかなりの年数(約15年)を要し、苗からなら4〜5年で済むので、苗から育てるのがおすすめです。

ヤマモモはやせ地でも育つ丈夫な常緑樹

ヤマモモは、もともと日本でも自生していた木なので、日本の環境によく合い、やせた土地や酸性寄りの土壌でも問題なく育ちます。
病害虫も付きにくい栽培が容易な常緑樹ですが、自然の状態で15~20mまで育ってしまうので、栽培する場合は頂上部分の枝を切り落とし、大きく育ちすぎないように樹高を低く抑える必要があります。

やせ地でも育つヤマモモですが、有機質が多く含まれた肥沃な粘土質の土を好みます。
植えつけるときは、植え穴を大きく彫り上げ、腐葉土をたっぷり混ぜ込んでから、庭土にも腐葉土をブレンドして植えつけるとよく育ちます。
肥料や堆肥はあまり必要としませんが、植えつけるときにしっかり腐葉土を加えて育てるようにしましょう。

ヤマモモの苗の植え付け適期は3〜4月

ヤマモモの植え付け適期は3〜4月です。
できるだけ日当たりのよい場所に植えつけましょう。
ヤマモモは寒さにはそれほど強い木ではないので、暖かい地方で育てるのがおすすめです。
寒冷地では育てるのに向いていません。
ヤマモモは、植え付け後数年は特に寒さに弱いので、霜が降りる前に霜よけなどの簡単な防寒処置をしておく必要があります。

ヤマモモは苗から育てると4〜5年で実を収穫することができるようになりますが、雌雄異株なので、1本だけ育てている場合、何年たっても実がならないこともあります。
育てている株が雄株だった場合や、雌株を育てていても周りに雄株が植えられていない場合、何年たっても実がなりません。

ヤマモモは風で飛んできた花粉でも受粉できる「風媒花」なので、近所の公園にヤマモモの雄株が植えられていても受粉できます。
近所に雄株が植えられていること、育てようとしている苗が雌株であることをしっかり確認してから植えつけましょう。
10kmぐらいの距離なら受粉が可能といわれていますが、確実に受粉させたいときは、雌株・雄株両方を育てるようにしましょう。

ヤマモモは3〜4月に花を咲かせますが、雌木だけでなく、雄木も花を咲かせます。
雄木は赤みを帯びた3cmくらいの花穂に、房のような褐色の小さな花をたくさんつけ、雌木は長さ1〜2cmくらいの茎のようなものの周りに赤いプチプチとした花とも思えないような花をつけます。
どちらも花びららしい花びらもなく、雄花のほうが穂としては大きいので目立つくらいの、あまり目立たない花を咲かせます。
ヤマモモが雄木か雌木かわからないときは、花を探して確認しておきましょう。

6〜7月実が黒っぽい赤色になったら採り頃

完熟のヤマモモの実は傷みやすいので一般には流通していません。
ヤマモモの完熟の実を手に入れるには、ヤマモモを育てる必要があります。
ヤマモモの実は、初めは緑色のものが徐々に赤みを増していき、オレンジ色から赤い色へと変化して、だんだんと濃さを増していきます。

ヤマモモの実は木にびっしりとつきますが、5月頃、未熟な実が自然に落ちていきます。
それでも多すぎる量の実が残るので、葉っぱ5枚に実が一粒になるように、実を減らしておきます。
実があまりにも多すぎて摘果実しきれないときは、実がなりすぎている枝をいくつか切り落として、株が消耗するのを防ぐようにします。

ヤマモモの実が完熟してくると、黒っぽい赤色になっていくので、採り頃になります。
木をゆすると実がぽろぽろ落ちるので、木の周りにビニールシートなどを敷いてからゆすって、落ちた実を集めます。
ヤマモモの種の中に虫が入りやすいので、実を水に数時間つけて虫だししてから食べるようにしましょう。

おすすめのヤマモモの品種は十六桃・秀光・森口・瑞光

ヤマモモの実は、種が非常に大きいので、小さい実は食べるのが面倒になってしまいます。
大きくておいしい実がなるものを選んで植えましょう。
おすすめの品種は、500円玉くらいもある大きな実がなることがあり、15〜20gの実がなる果汁が多めで甘みも強い「十六桃」、酸味が少なく甘さも強い、12〜15gの大きめの実がなる「秀光」です。
十六桃は、徳島山桃、十六楊梅とも呼ばれています。

「森口」「瑞光」なども、直径3cmくらいの比較的大きく重さも10g前後ある実がなるので、育てがいのある品種です。
森口は甘みが強いので生食に向いていますが、収穫後に傷みやすい傾向があります。
瑞光はよく栽培されているポピュラーなヤマモモの品種ですが、酸味が強いのでジャムなどに加工して食べるのに向いていて、生食向きではありませんが、実の日持ちがよい品種です。

監修:きなりのすもも
16年前に趣味でバラ栽培をはじめたのをきっかけに、花木、観葉植物、多肉植物、ハーブなど常時100種を超える植物を育て、弱った見切り苗や幼苗のリカバリー、一年草扱いされている多年草の多年栽培などに取り組んでいます。

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