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1000年以上前から親しまれてきた八重桜の魅力

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桜というと真っ先に思い浮かべる染井吉野は、5枚の花びらからなる一重咲きです。
一重咲きではない花びらの多い桜「八重桜」は、10〜100枚以上、多いものでは300枚の花びらからできています。
大部分の八重桜は、染井吉野が散ったころに、大きくて見ごたえのある花を咲かせはじめ、開花期間も染井吉野に比べると長く続きます。

染井吉野は江戸時代に作出された桜の銘木で、当時は「吉野桜」と呼ばれていましたが、明治時代以降「染井吉野」と呼ばれるようになりました。
これに対して、八重桜は奈良時代からすでに栽培されていたものもあり、かつては「桜」と言えば「八重桜」を指し、古くから親しまれていました。

八重桜は牡丹のように咲くから「牡丹桜」とも

八重桜は、染井吉野より大きく花びらの数が多いので、牡丹のように咲くから「牡丹桜」とも呼ばれています。

桜は野生種と園芸品種を合わせると約600種類あり、「大山桜」「山桜」に代表される野生種が、自然交配や人工交配でできた品種を「里桜」と呼びます。
里桜の多くが八重咲きのため、まとめて「八重桜」と総称しています。

染井吉野は、花が咲いてから葉が出てきますが、八重桜は山桜が母種なので、花の開花と葉が出てくるのが同時になり、樹高はあまり高くなりません。
主な八重桜の品種と特徴をご紹介していきましょう。

寒山

里桜の代表品種。
屋や紫色を帯びたような桃色の花びら25〜50枚の、大きな八重咲の花を咲かせます。
強健種で、花もちがとてもよく、花は塩漬けによく用いられます。

関山

色が濃い桃色の部分がいくらかあるため、濃淡のコントラストがきれいな大輪の八重咲の花を咲かせます。

一葉

30〜40枚の、外側がほんのり桃色になり、内側が真っ白になる花びらの八重桜です。
花から葉の形をしたおしべが出ているので一葉と名付けられました。

普賢象

薄紅色の30〜40枚の花びらからなる花径4〜5cmのふんわりとした花を咲かせます。
緑色になっためしべが2本、花芯から飛び出していて、普賢菩薩の乗る普賢象の鼻や牙に似ているために名付けられました。
散り際の花が赤みが増します。

奈良の八重桜

奈良時代から観賞されてきた八重桜の品種で、奈良に咲いている八重桜という意味ではありません。
野生種の「霞桜」の変種で、花径3cmほどの小ぶりの花をたくさん咲かせます。
5月上旬という、最も遅く開花する品種のひとつで、咲き始めると3日で散ってしまいます。

八重紅枝垂れ

濃いピンク色の蕾が付き、15〜25枚のピンク色が比較的はっきりした薄紅色の花を咲かせます。
花は小さめですが、色が濃く、枝が垂れる姿が印象的です。
エドヒガンの園芸品種で、江戸自裁より観賞されています。

旭山

薄紅色の花びらの八重桜ですが、花びらの数は少なめです。

市原虎の尾

つぼみはピンク色が濃い色になりますが、開花すると白い花びらになります。

妹背(イモセ)

ふわふわとした花びらが多重に多めになる、濃いめの薄紅色の花びらの縁が紫紅色になる八重桜です。
ひとつの花にめしべが2つあるため、実も2つずつなります。

鬱金(ウコン)

中心が赤く染まる黄色い15〜20枚の花びらの大輪の花を咲かせる八重桜。
散り際には花びらがピンク色に染まります。

江戸桜

薄紅色の花びらの八重桜です。

御衣黄(ギョイコウ)

黄色と緑色が入り混じった八重咲の花を咲かせます。
開花時は鮮やかな緑色ですが、だんだん赤みを増し、散り際には花びらの中央に赤いラインがくっきりと入ります。

兼六園菊桜

菊の花のように花びらの数が非常に多く、多いものは300枚にもなるため、「菊咲」とも言われています。
花芯部分が濃いピンクになる薄紅色の花びらになります。
兼六園にある原木が天然記念物に指定されていましたが、現在は後継樹のみになっています。

琴平

白に近い薄紅白色の小さめの八重の花を咲かせます。高木に育ちます。

子福桜

小さな花びらが数多く集まって、白い八重咲の花を咲かせます。

十月桜

細めの花びらが集まった薄紅色の花を咲かせます。
花芯部分が濃いピンク色になることもあります。
春にも開花しますが、10月ごろ開花し、冬中ぽつぽつと花を咲かせ続けます。

松月桜

外側のピンク色が濃くなる花びらのふわふわとした八重咲の花を咲かせます。
外側の花びらに細かな切れ込みが入ります。
枝が横に広がって伸びるため、傘状の樹形になります。

白妙

名前の通り真っ白な花びらの八重咲の花を咲かせます。

梅護寺数珠掛桜

兼六園菊桜のように花びらの数が非常に多いため、梅護寺数珠掛桜もまた「菊咲」と言われます。
薄紅色の花びらで花芯部分が濃い赤色の花が咲きます。

福禄寿

大島桜を母種とするので、花径5cmほどの大輪系の濃淡のある薄紅色のウエーブのある15〜20枚の花びらの花を咲かせます。
花付きがよいので、公園や桜並木によく用いられます。

楊貴妃

薄紅色の花びらの数が多めの花を咲かせます。
奈良興福寺の僧玄宗がめでたことから名付けられました。

塩竈桜

塩竈神社の境内にある31本の塩竈桜が国の天然記念物に指定されています。
花びらの数が多く、ふわふわとした濃いピンクの花が咲きます。

八重桜の名所に桜を見に行こう

染井吉野の桜見物以外に、八重桜も楽しめるスポットは日本全国数多くありますが、そのなかから、八重桜の名所を3つご紹介しましょう。
八重桜は染井吉野の見頃を過ぎてから開花が始はじまります。

大阪造幣局「桜の通り抜け」

大阪造幣局構内が桜の開花期間に開放され、南門(天満橋側)から北門(桜宮橋側)へ一方通行ですが、約数mの通り抜けができます。
毎年日没後にぼんぼりなどでライトアップもされます。
134種類349本の桜を見ることができます。植樹されている桜は八重桜が主です。
一般開放日は毎年3月中旬頃に決定します。

大阪造幣局 桜の通り抜け(大阪)
https://www.mint.go.jp/enjoy/toorinuke/sakura_osaka_news_h30.html

東京「新宿御苑」

毎年大勢の桜見物の人出でにぎわう新宿御苑ですが、65種類1100本の桜が植栽されていて、そのうち八重桜は20種300本あります。
八重桜は染井吉野に遅れて咲き始めるので、染井吉野の桜見物のピークが過ぎた4月上旬〜下旬が見頃です。

新宿御苑の桜をもっともっと楽しもう!
http://fng.or.jp/shinjuku/place/archives/shinjuku_flower_sakura2.html

新宿御苑の主な桜一覧
http://fng.or.jp/shinjuku/place/archives/shinjuku_flower_sakura1.html

北海道「松前公園」

松前公園は園内に約250種類10000本の桜が咲き誇る北海道一の桜の名所です。
10000本の桜のうち、8割が八重桜です。
さくらまつり期間は例年4月下旬〜5月中旬と遅めなので、GW以降も楽しめます。

函館イベントガイド 松前さくらまつり
https://event.hakobura.jp/1819

監修:きなりのすもも
16年前に趣味でバラ栽培をはじめたのをきっかけに、花木、観葉植物、多肉植物、ハーブなど常時100種を超える植物を育て、弱った見切り苗や幼苗のリカバリー、一年草扱いされている多年草の多年栽培などに取り組んでいます。

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