ご当地グルメ

日本独自の発展を遂げた長崎カステラの美味しい老舗「松翁軒」がこだわりぬいた伝統の味わいとは

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「甘くてふわふわ」なカステラは、世代を超えて人気のお菓子です。南蛮渡来ながら、日本独自の製法によってどこの国にもない菓子となったカステラ。そんなカステラの名産地として有名なのが長崎県です。長崎県にはカステラを製造しているブランドも多くありますが、その中でも「松翁軒」は長い歴史を誇るカステラの老舗です。今回は、そんな松翁軒の歴史を紐解くとともに、カステラのおいしさを紹介していきます。

伝統的な手法で作られている松翁軒のカステラ

松翁軒のカステラの特徴は、なんといっても底のザラメのおいしさ。カステラの裏面にあるシートをはがすと、底にはカリカリとしたザラメがお目見えします。上品な甘さはさることながら、ザラメが生み出す触感の違いもまた魅力のひとつ。と言いますのも、松翁軒では他とは違って、ザラメをあらかじめ底に敷いているのではなく、生地に混ぜてから焼き上げています。そうすることで、一部の溶けなかったザラメが底に沈み、触感の違いを生み出しているほか、生地全体にザラメのおいしさが行き渡っているのです。
松翁軒のカステラは今でも伝統的な手法のほとんどを手作業で行っています。原材料は今も昔も変わらぬ「玉子、上白糖、ザラメ、小麦粉、水飴」のみ。余分なものを一切加えず、昔ながらのおいしさを今に至るまで守り続けているのも、松翁軒にファンが多い理由なのかもしれませんね。

しっとりとした生地の食感と、ザラメのかりっとした食感、そして口の中に広がるまろやかな甘さが魅力の松翁軒のカステラ。現在は、オーソドックスな味のほか、さまざまなフレーバーのカステラも販売されています。

たとえば「チョコラーテ」は8代目・9代目にかけて開発された、カステラとチョコレートを融合させたオリジナル商品です。チョコレートパウダーではなく、カステラに合わせて特注している板チョコを、手間をかけながらもわざわざ使い、独特のチョコレートの風味を作り出している「チョコラーテ」。カステラの上品な甘さとチョコレートの風味が楽しめる人気商品となっています。

そのほか、宇治の玉露と煎茶をふんだんに使用した「抹茶カステラ」は、その香り高い味もさることながら、鮮やかな緑色も魅力の商品です。フランス産のクリームチーズ、オランダ産のエダムチーズをたっぷりと使った「チーズカステラ」も、しっとりとした口当たりでくせになる味ですよ。

一方で、極上のカステラと名高い「五三(ごさん)焼カステラ」も松翁軒の看板商品です。卵黄を増やし、砂糖もたっぷりと使用することでふんわりとした食感を作り出したこちらのカステラは、違いが分かる大人の方にピッタリ。ぜひ一度お試しください。

通年販売されているこれらのカステラ以外にも、松翁軒には季節限定商品として、さまざまなお菓子が販売されています。例えばカステラ生地にあんを合わせた「和風カステラ」は、季節によって桜や柿の味など、さまざまなフレーバーを楽しむことができます。そのほか、秋から冬にかけて販売される「渋皮栗寄せの抹茶カステラ」は、香り高い抹茶の風味とくりの味が楽しめる極上の一品です。

創業三百年の歴史を紡ぐ松翁軒

江戸の中期天和元年(1681年)、初代山口屋貞助によって松翁軒は創設されました。当時はまだ「松翁軒」の名は背負ってなく、長崎市の本大工町に店を構え、砂糖漬けやカステラの製造にあたっていたそうです。文久年間(1861年)、七代目熊吉が国学者中島広足より「松翁軒」の命名を受け、その後この看板を背負っていくようになったのです。その後は先述したように、8代目・9代目にかけ、チョコレートを使った「チョコラータ」の製造がスタートするなど、革新を得ながら伝統の味を守り続けています。

長崎カステラの魅力

カステラは元亀二年(1571年)、室町時代の終わり頃にポルトガル宣教師によって持ち込まれ、金平糖やボーロと並んで我が国に定着した最初の洋菓子です。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』のなかでカステラを作るシーンがあったことを覚えている方も多いと思いますが、坂本龍馬の海援隊の日誌にはレシピが記されていました。その日誌によると長崎からなかなか広がらなかった様子が分かります。ポルトガル人が日本に訪れたのは、長崎以前にも種子島や大分、平戸がありますが、70年という長期に渡って住んでいたのは長崎だけでした。

材料や道具の調達条件もありますが、交易船を安定させる底荷が石炭から砂糖に変えられたことも長崎とカステラを結びつけました。カステラに重要な砂糖が長崎に大量に荷揚げされることになったからです。
日本に伝わった当初のカステラは、小麦粉と砂糖、卵を同量で混ぜ合わせて焼くだけのシンプルなものでした。当時のヨーロッパ菓子としては珍しく乳製品を用いないことから、乳製品を常用しなかった日本人に受け入れられたようです。またカステラ特有のしっとり感は、甘味料に砂糖だけではなく水飴が用いられているためで、これは「長崎カステラ」の特徴です。

長崎へ行ったらぜひ松翁軒のカステラを!

カステラの老舗中の老舗、松翁軒には、今も変わらぬ伝統的な味、そして革新を込めた新しい味という2つの魅力あふれるカステラがあります。長崎県を訪れた時には、ぜひ松翁軒のカステラをご賞味ください。

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