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梅の盆栽で早春を楽しむ

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梅の盆栽は、寒さの厳しい季節の中でかわいらしい花を咲きほころばせ、早春の訪れを一早く知らせて楽しませてくれます。

梅の盆栽は古くから日本でも愛されてきた盆栽の一つですが、バラ科の花木なのです。一昔前の野山には、野梅が沢山自生していたので松や竹と並んで「厳寒三友」とも呼ばれています。また、梅は盆栽だけでなく薬用や文化の世界まで、幅広く人々の生活に溶け込んでいる身近な樹木です。

梅は数百種類ありますが、梅の盆栽は大きく分けて3種類に分類され、さらに4種類に再分類されています。また、梅の樹木は盆栽に向いているため昔から多くの盆栽愛好家によって愛培されているので初心者でも気軽に梅の盆栽を購入して育て始めますが、大半は“2~3年でダメにしてしまう盆栽の代表”でもあるのです。

3種類に分けられる梅の盆栽

花を鑑賞したり盆栽の栽培を楽しんだりする梅は、大きく分けて野梅系、緋梅系と豊後系の3種類に分類されます。

江戸時代に梅の盆栽は、一大ブームを巻き起こしています。当時の園芸書の中にも数十種類の梅の品種が取り上げられ、松岡玄やその仲間たちによって書かれた梅の専門書の「梅品」の中にも60種類以上の梅が取り上げられています。

東京の馬込染井は、江戸末期から明治にかけて梅の盆栽の産地として知られていました。当時の植木屋さん達によって編集された「梅銘鑑」には、数百種類の梅が掲載されました。

―4つに再分類される野梅系
野梅系の梅は、野山に自生していた梅が変化した種類なので梅の原種に最も近いため、樹木の特性が丈夫です。

野梅系の特徴は、他の種類の梅に比べて葉の大きさが小さく、枝も細やかなところです。また、切った枝の断面の髄が紅色にならないことも特徴の一つです。

野梅系の梅の種類は、さらに野梅性、難波性、紅筆性、青軸性の4つに再分類されます。

盆栽に向いている野梅性の種類の中には、「野梅」、「思いのまま」、「玉簾」、「鶯宿」、「曙」、「紅冬至」、「道知辺」などがあります。「玉簾」、「鶯宿」、「思いのまま」などは八重咲、「曙」、「紅冬至」、「道知辺」などは一重咲です。他の梅より香りが強く、実は小さいので盆栽に向いている種類です。

野梅の特性は原種に近いので強健だけでなく、枝ぶりも細いです。新しい枝は、最初の内は緑色をしていますが、次第に日焼けにより赤味かかってきます。葉の大きさは、他の種類の梅に比べて薄い緑色で小さいです。

難波性の種類には、「古都の錦」や「難波紅」などがあり、葉は丸く、細かい枝が沢山出ています。

紅筆性の種類には、「紅筆」や「古金欄」などがあります。「紅筆」の品種の名前の由来は、蕾の先端が筆のように尖っていて紅筆に似ているところです。

青軸性の種類は、「月影」、「金獅子」などがあります。蕾は薄い緑色をしていて、花も青みを帯びた白色をしています。枝は通年を通して緑色です。

―3つに再分類される緋梅系
緋梅系の種類の梅の花は、紅色をしています。この種類の梅野分類方法として、切った枝の髄が赤色ならば花が白でも、この種類に分類されます。緋梅系の種類は、花の色が明るい紅色をしている「紅梅性」、紅梅よりさらに濃い紅色の花が咲く「緋梅性」、花の色が薄紅色で花が下の方を向いて咲く「唐梅性」の3つに再々分類されます。

―2つに再分類される雑種の豊後系
豊後系の梅は、野梅系や緋梅系に比べて花の大きさが大きいです。豊後系はさらに「豊後性」と「杏性」の2つに再分類されます。豊後系性の梅は薄紅色の大きな花を咲かせますが、香りは少ないです。杏性の特徴は、開花が遅いところです。

梅が盆栽に向いている理由

盆栽に興味を持っている人が最初に購入したり育てたりする盆栽の一つが梅の盆栽です。梅の盆栽は、数多くある盆栽樹種のなかでも花物盆栽の代表として昔から根強い人気があります。

梅が盆樹として向いている理由は4つあります。一つ目の理由として、梅の盆栽は盆栽経験が少ないため整った樹形づくりがまだ出来ていない盆栽でも、結構受け入れられやすく、多様性に富んでいるところです。

2つ目は、野生の梅が変化した品種が多いため樹性が健丈なので育てやすいところです。盆栽初心者で梅や盆栽の専門知識が無くても長きに渡り基本的な管理を行っていれば育てすいところです。

3つ目は、早春の代表的な花ですが開花期間が長いので、長期間にわたり開花した梅の盆栽を楽しむことができるところです。

4つ目は、盆栽鉢の中で育てていると地植えの梅より樹木が風格のある古い色に変化してくるので、古木感を早く味合うことができるところです。

2~3年でダメにしがちな梅の盆栽

―ダメにしてしまう原因
梅の盆栽は、花物類の盆栽樹種の中でも人気があるため新年の玄関飾りや早春の花を楽しむ盆栽として、年末や年明けの蕾が付き始めたころに購入する人が多いです。

しかしながら梅の盆栽は、多くの盆栽初心者が購入してから2~3年位でダメにしてしまう盆栽の一つです。梅の盆栽は、一見管理や育て方がやさしそうに見えますが、実は難しい盆栽の一つです。

多くの盆栽初心者が梅の盆栽をダメにしてしまう主な原因は、開花後の“アフターケアー”不足です。梅の花が咲いている期間中、肥料も与えず優しいほのかな梅の香りやきれいな花を楽しんで鑑賞をしているだけでは、梅の樹木の体力を低下させてしまいます。その結果、開花が終わる春頃には、新芽が悪くなってしまいます。
また、“桜を切る馬鹿、梅を切らぬ馬鹿”の諺があるように、梅の枝の剪定をしないでいると新しい新芽の枝が伸び放題伸びてしまい後で手がつけられなくなり、樹形づくりの整姿作業が大変になってしまいます。

―ダメにしない3つの対策
梅の盆栽を2~3年でダメにしないためには、少なくても3つの“対策”があります。一つは、年末や年明けに購入した蕾が付いた梅の盆栽の植替えは、開花が終わってから植替えをします。

2つ目は、満開にしようとしないで全体の70%位の蕾が開花したら、蕾も含めて取り、花が咲いたら散るまで待たずに花柄から摘み取ることです。

自分の梅の盆栽に付いた蕾は全部咲かせて、出来るだけ長く花の観賞を楽しみたいと思ってしまいますが付いている蕾全体の70%位を開花させて、花が終わる少し前に花柄を摘みながら枝の付け元の部分より2~3節残して切り詰めます。この際、多少樹形が乱れていても植替えをする時の剪定で整姿をすれば大丈夫です。

3月のお彼岸頃になると新芽も大きく膨らんでくる頃なので、枝に出てきた新芽は2~3芽残して、枝の先端を切り詰めます。また、同時に植替えもします。

梅の蕾が付いた時から開花期間中の手入れ作業は、梅の盆栽をダメにしない重要な時期です。開花期間中の手入れ作業は楽しみながら行うことができます。

まとめ

梅の盆栽は寒い冬の雪や霜にも負けず春の訪れを一早く知らせて花の開花によって知らせてくれるので、盆栽に興味がない人でも目を止めて鑑賞したくなる盆栽です。

日本画家の緒方光琳の描いた屏風絵にも梅が描かれているように、多くの著名な画家の作品の中には梅を題材にした作品が多くあります。日本を代表する盆栽として松がありますが、梅は日本人に親しまれている盆栽の代表です。

花物盆栽樹種の中でも代表的な存在である梅の盆栽は、早春を楽しむ盆栽の代表です。
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