盆栽

樹形を楽しむハルニレ盆栽のほうき仕立て

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ハルニレは色々な樹形づくりを楽しむことができる盆栽です。
ハルニレの細くて繊細な枝ぶりの美しさくを引き立たせるおすすめの樹形は、「ほうき仕立て」です。
この樹形は、細くて繊細なハルニレの枝に針金をかけて四方八方に枝分かれさせ、半円形の樹冠の形を作っている樹形です。初心者でも作りやすいので、おすすめの樹形です。

秋の黄葉と冬の寒樹が美しいハルニレの「ほうき仕立て」

色々な樹形を作って楽しむことができるハルニレの樹木ですが、4月頃に咲くハルニレの黄緑色をした花は、あまり目立たないので気づかないと見過ごしてしまいます。 また、10月頃から11月頃に色づき始める秋の黄葉(紅葉)はとても美しいです。さらに、ハルニレの枝先は繊細な枝ぶりをしているため冬の寒樹も美しいので「ほうき仕立て」の樹形は、一層その美しさを引き立たたせてくれます。

「ほうき仕立て」の樹形は、2つのタイプがあります。一つは、枝分かれしているすべての部分が放射状に伸びて半円形の輪郭をつくって、箒の形に仕立てる「純ほうき」と呼ばれている初心者向けのタイプです。もう一つは、芯立ちタイプの「ほうきづくり」の樹形です。

一昔前までは、ハルニレや欅などの多くの雑木類の樹種は、それぞれの樹木が持っている自然の美しさを生かした樹形をつくることより、「樹木」自体を盆栽に仕立てるために必要な技法に重点をおいた樹形づくりでした。しかし、近年では樹木の持っている自然の美しさに重点をおいた樹形づくりが行われるようになってきました。「ほうき仕立て」も自然の美しさに重点をおいた樹形なので、繊細な枝ぶりが特徴なハルニレの樹木には適した樹形です。

ハルニレのほうき仕立ての作り方

ハルニレの「ほうき仕立て」の樹形づくりは、素材となる苗木選び、剪定、そして針金かけの順で行っていきます。

・「ほうき仕立て」に適している素材(苗木)
ハルニレの「ほうき仕立て」に適している素材(苗木)は、箒のように仕立てるために繊細な枝が沢山伸び、実生してかた3年ぐらい成長して根張りが良く、幹がしっかりしている素材が適しています。さらに、先枝から小枝まで、どの枝も鋭角に斜に上がっている素材が理想です。一方、どちらかの枝が太すぎていたり、小枝が水平より下に垂れていたりしている素材はこの樹形づくりに適していませんが、育てて別の樹形づくりに活用することができます。

・「ほうき仕立て」の剪定
ハルニレのほうき仕立ては、枝が箒を逆さにして扇形になるように半円形の輪郭をイメージしながら、剪定を行っていきます。半円形の輪郭をイメージして樹木全体を見ると飛び出ている枝がわかりやすいので、剪定がしやすいです。

ハルニレを「ほうき仕立て」にするための樹形づくりは、落葉が終わった11月から12月頃が適期です。この時期にこの樹形づくりをすると、新芽が出る前に掛けた針金を取り外すことが出来ます。

最初の作業は、ハルニレの素材(苗木)の正面を決めて、枝の整理をすることです。特に「からみ枝」や車枝と呼ばれる三又以上になっている枝を剪定します。三叉以上になっている枝は、不要な枝を切り詰めて二又枝にします。また、不要な小枝も短く切り詰めて、取り除いていきます。4年以上成長している太い枝は、枝元から5ミリ位残して切り詰めます。切り残した枝の「5ミリ部分」は、自然と腐っていきます。

また、樹形全体を見渡すと、樹形を乱している不要な枝が見つかることがあります。その場合、針金をかけても矯正できない枝は、思い切って剪定します。樹形を乱している枝を切り詰めた後に切り口が盛り上がってしまった場合は、ナイフなどを使って、その盛り上がりを削って切り口を滑らかにします。また、その切り口には、癒合剤を塗っておくと無難です。

特に幹から枝分かれをしている太い枝を切り詰める場合は、「又枝切バサミ」を使って切ります。このような枝を切る際、普通の剪定バサミで枝を切ると切り口がきれにならないので、「又枝切バサミ」を使って切り詰めます。「又枝切バサミ」を使って枝を切ると切り口がえぐれるので枝を切った後は、切り口が盛り上がらないので瘤ができる心配がないです。

ハルニレの樹木全体の枝先を剪定すると、枝ぶり全体が箒を逆さにしたような樹形に仕立て上がってきます。ハルニレの樹木の剪定が終わったら、枝を中心に針金をかけて矯正していきます。

・45度の鋭角に仕立てる針金掛け
ハルニレを「ほうき仕立て」は、剪定した後の小枝に針金をかけて、枝を矯正して、箒の形のように仕立てていきます。

この針金かけの作業は、ハルニレの「ほうき仕立て」の樹形づくりの過程で重要な作業です。針金掛けのポイントは、45度の角度に仕立てて行くことです。また、春になって針金を外すと、枝が元の位置に方に少し戻ってしまうことがあるので、枝に針金をかける際は、少し強めにかけて上向きにします。

針金掛けはハルニレの樹木全体にかけますが、最初に太い枝から針金をかけていきます。ハルニレの素材によっては、太い枝の数が2~3本ある苗木もありますが、細い枝より先に太い枝に針金をかけます。そして針金をかけた太い枝は、少し上向きにします。また、横を向いたり水平より下を向いたりしている枝は、やや上向きにして、針金をかけていきます。

細い枝の針金かけは、上部から順に掛けて行きます。下の部分の枝は、最後に針金をかけます。針金掛けは、掛け終わった後に枝を上向きにしていくため最初に上の枝に針金を掛けてから下の枝に掛けていった方が、「ほうきづくり」の樹形は作りやすいです。

ハルニレの苗木を横から見ると、下の方に向かって垂れ下がっている枝もあります。その枝は、針金をかけて樹形を上向きに調整します。また、重なっている枝などは、手で矯正して整えます。

最後に針金をかけた全部の枝が、半円の輪郭が整った扇形になるように枝づくりを調整します。針金掛けが終わったら、針金を掛けた細い枝の部分は、手を使って鋭角に調整して箒のように仕立てていきます。

この時期に掛けた針金は、ハルニレが春の生長期に入る前まで掛けたままにしておき、4月頃に外します。特に若木のハルニレの苗木は生長が早いので、針金を掛けたままにしておくと夏頃には枝に針金が食い込んでしまうので、傷が出来てしまいます。

ハルニレの「ほうき仕立て」は、枝に針金をかけて矯正して箒のように仕立てていきますが、苗木によっては一度の矯正で「ほうき仕立ての」樹形づくりが出来ないこともあります。その場合は、無理にやり直したりせず、翌年の同じ時期に再度枝に針金を掛けて矯正して、「ほうき仕立て」の樹形づくりを行うことが大事です。

管理

「ほうき仕立て」の樹形づくりが終わった後のハルニレの盆栽は、2~3日位霜に当ててから霜がかからない室内や軒下の日当たりの良い場所で管理をします。
また、水やりをする場合は、お天気の良い日の午前中に1日1回程度の水やりをします。理想のみずやりは、朝水を与えて夕方になると土の表面が乾いている状態が良いでので、水のやり過ぎには注意が必要です。また、施肥も控えます。

「ほうき仕立て」の樹形は初心者でも作りやすい樹形です。ハルニレの細くて繊細な枝ぶりを引き立たせてくれる「ほうき仕立て」の樹形づくりを楽しんでみませんか。
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