盆栽

自分で仕立てる梅の盆栽

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梅の盆栽は、お正月の玄関やお祝いの席に置かれている盆栽として、年の瀬や開花時期が近付くにつれて人気が出てきます。この時期になると園芸店やデバートなどでは、大きさや色の種類が異なった梅の盆栽がたくさん陳列棚に並べられるようになります。特に梅の花は正月〜3月頃まで、いろいろな花や香りを楽しむことができ、春の訪れを一番早く感じることができる花木です。

また、梅は中国から朝鮮半島を経由して伝来してきました。「万葉集」のなかでは、梅を取り上げた歌が100首以上も詠まれています。梅は梅干しなどを作る食品として使用されているので、日本の歴史や生活文化のなかに溶け込んできている樹木でもあるのです。

梅の樹木を盆栽に仕立てることはむずかしそうに思われますが、剪定もしやすく、自分の好みの大きさに仕立てることができます。

梅の種類と特徴

梅の樹木を盆栽に仕立てる前に、梅の種類や特徴を把握することが大事です。

梅には大きく分けて2種類あります。梅干しなどに使われる「実梅」と盆栽などの観賞用の「花梅」があります。「実梅」の種類は主に豊後系の品種の梅が多いです。一方、盆栽などに使われる「花梅」の種類は約300種類以上あります。「花梅」には「紅梅」系と「野梅」系がありますが、実梅につかわれる「豊後」系の品種も盆栽用として使われています。盆栽に使われる品種として、白い花の「冬至梅」や紅梅の「花の大盃」などがあります。

梅の特徴は、多くの種類の梅が寒さや暑さに強く、寒いうちから花が咲き、花によい香りがあることです。家のなかで日当たりのよいところに置いて管理していると、冬でも梅の花や香りを楽しむことができます。また、剪定を繰り返すことで、枝が増え、花の蕾も付きやすくなります。

それぞれの梅は、花の開花時期・樹形・枝ぶりなど種類によって異なります。それぞれの梅は特徴があるので盆栽に仕立てる場合、梅の種類や仕立て方の選択がむずかしいですが、最初に自分の好みの花の色・樹形・開花時期の3つにポイントをおくと、選択しやすいです。また、花だけにポイントをおいて選んでも紅梅・一重・八重咲の梅や垂れた枝に花をつける枝垂れ梅、など多くの種類があるので迷ってしまいますが、これも梅の持っている魅力のひとつです。自分で盆栽に仕立てた梅には、どの種類を選んでも素晴らしさがあります。

また、梅は花の種類も多いので苗木を選ぶ場合は、花が咲いている時期に購入すると仕立てたい樹形全体をイメージしやすいようです。

梅の盆栽を仕立てはじめる時期

梅の盆栽を仕立てはじめるためによい時期は、開花後です。

梅の花が咲いている期間中から樹木全体のバランを把握し、花が咲き終わったら花柄を全て摘み取ります。また、翌年に花が咲く姿をイメージしながら樹木のバランを考えて枝を整えたり、切り詰めたりします。梅の盆栽は、伸びてしまったり不必要になったりしている枝をそのままの状態にしておくと、手入れがむずかしくなるくらい枝が伸びて樹形も乱れてしまいます。

梅の枝は、伸びて混雑してくると開花時期になっても、綺麗な花を観賞することができなくなってしまいます。梅の枝を剪定するポイントは、花芽の位置を確認することです。花芽は枝が出ているもとから2〜3芽くらいのところに付くので、枝を切る位置は、枝の出ているもとから2〜3芽以上のところになります。剪定の注意点として、芽吹きの葉芽は切り落とさないことです。また、切った後に出てくる枝は、梅の生長を弱らせる可能性があるので、樹木全体のバランを見ながら必要に応じて切り詰めていきます。

また、徒長枝には、花が咲かないので葉を2〜3枚くらい残して切り詰めます。花は7〜8割ほど咲いたら残りのつぼみは摘み取った方が、樹木に対する負担が少ないです。剪定と植え替えは、梅の開花が完全に終わってから行います。

梅の盆栽の植替え

梅の盆栽は、開花が終わった後に剪定と一緒に植替えをします。早く開花が終わった梅の盆栽は、2月の大寒が過ぎたら植え替えをすることができます。樹木の樹齢にもよりますが、若い樹木は1〜2年に一度くらい古木は3年前後くらいに一度の割合で植え替えをします。特に樹木の若い梅の盆栽は、根の生長がよいので、根詰まりしやすいです。伸びたり根詰まりしている根は切ったり整えたりすることが大事です。

梅は、鹿沼土の小粒に腐葉土を入れた用土で植え替え、たっぷりと水を与えた後は風通しや陽当たりのよい場所で管理します。梅は耐寒性なので冬の時期に開花を促進したい場合は、できるだけ寒いところに置くと開花も早くなります。

梅の盆栽の管理

梅は水を好む樹木です。蕾が付いたら花が咲き終わるまで水遣りを忘れずに行いますが、梅は意外と湿気には弱いのです。そのため、土の表面が乾いたら水を与えるようにして、水の遣り過ぎには注意が必要です。春と秋は一日に1回くらい、夏は朝夕の2回くらい、冬の乾燥時期は2〜3日に1回くらいで大丈夫です。

施肥は開花後に行います。固形の油粕を樹形の対角線上の端に置きます。開花後に与えた固形の肥料の形が崩れてきたら、新しい固形の肥料を再度与えます。秋になったら、再度追肥として同じように固形の肥料を与えます。液肥でもよいです。春はたっぷりと肥糧を与え、秋はやや少なめに与えることがポイントです。

梅は、アブラムシが発生したりうどんこ病や黒星病などにかかりったりしやすいので、特に春と秋には注意が必要です。一番の原因は枝が混んでしまい、樹木全体が葉に覆われて内側の幹などに陽が当たらず、風通しが悪いことです。アブラムシが発生すると葉がくるくるとちぢれて萎縮した状態になるので、春先は葉の様子もチェックする必要があります。

置き場所は、陽当たりがよく風通しのよいところで管理します。寒さに強い梅ですが、冬の寒い時期は霜よけをしたり、日中は陽当たりのよい場所に置いたりして管理します。

開花時期に室内に置いて観賞をする場合は、冬の寒い時期は1週間位、春は2〜3日くらいを目安に室内で観賞することができます。室内ではできるだけ冷暖房が直接当たらないところに置いて管理することが大事です。                                          

まとめ

梅の盆栽のなかで「冬至梅」(とうばい)という品種は、年明け早々に白い花が咲くので、お正月の玄関飾りとして楽しむことができる梅の盆栽です。また、紅白の花が咲く盆栽は縁起もよいので、お正月の玄関飾りの盆栽としてふさわしいですね。自分で仕立てた梅の盆栽を新春の玄関に飾って祝うお正月は格別です。

初心者が作るワンランクアップした新春の梅の盆栽

盆栽を趣味としてはじめると、お正月には自分の育てた梅の盆栽を飾って新年を祝いたいたくなります。初心者でもワンランクアップした梅の盆栽は意外と簡単に作ることができ、その盆栽を飾って新年を祝うことができます。その場合、初心者にオススメの樹種は、甲州野梅です。

初心者でも出来るワンランクアップした梅の盆栽

初心者でもお正月に飾ることができるワンランクアップした梅の盆栽は、花期前の梅の素材を「鉢替え」して作った盆栽です。

本来の梅の盆栽作りは、ほかの盆栽と同じように1年を通して剪定、植え替えなどの管理作業をしながら仕立てます。また、自分で仕立てた梅の盆栽を新年に飾って楽しむためには、長い歳月を要します。

しかし、初心者のワンランクアップした梅の盆栽は、盆栽店などで購入した梅の素材を使って、「鉢替え」をしたものです。自分の気に入った梅の素材を見つけて購入した後に枝や葉の整姿をして、その素材が似合う盆栽鉢に「鉢替え」をするだけで、多くの「梅の素材」は、立派な「梅の盆栽」として観賞することができます。

ワンランクアップした梅の盆栽の作り方

ワンランクアップした梅の盆栽の作り方は、最初に花期が近付いている梅の素材選びからはじめて、購入した素材の剪定をし、鉢替えをすれば完了です。

* 素材選びと適期

梅は盆栽だけでなく庭木や鉢植えとしても多く市販されている樹木なので、自分の気に入った梅の素材選びは、思っているほどむずかしくはないと思います。

12月に入ったら梅の素材探しをはじめます。この時期になると、いろいろな大きさや種類の梅の素材が盆栽店や園芸店に並びはじめます。素材選びのポイントは、既に梅の蕾が付いている花期前のものを選ぶことです。また、盆栽に向いている樹形をしているだけでなく自分の技術レベルで盆栽に仕立てやすい素材選ぶこと、あとの管理もしやすいです。

* 花を楽しむための剪定

市販されている梅の盆栽の素材は不要な枝などが多いので、枝を切り取ったりして整理をしながら樹形を整えます。この作業により既に付いている梅の蕾は開花するので、梅の花期も楽しむことができます。

花を楽しむために行う剪定のポイントは、花だけでなく梅の樹形の素晴らしさも一緒に観賞することをあらかじめ想像しながら花芽と枝の整理をすることです。12月頃に購入した梅の素材は既に落葉しているので花芽や蕾が分かりやすいため、枝や花芽の剪定や整理もしやすくなります。

梅の素材は、育てられた場所によっても生育が異なります。例えば、畑などで育てられた素材では、蕾を付けた枝が同じ場所から複数伸び出しているものがあり混雑している枝も多いため、思い切った整理が必要です。

枝の整姿をする際、梅の蕾がたくさん付いている枝は1本でも多く残したいと思ってしまいますが、梅の盆栽作りは「梅の鉢植え」をすることではなく、あくまで梅の素材を「盆栽」に仕立てることなどで、思い切って不要な枝などは切り取ります。特に同じ場所から複数伸び出している枝は盆栽として見苦しいので、必要な枝だけ残して不要な枝は切り取りましょう。枝数を少なくした梅の素材は、盆栽らしい樹形に変わります。

* 鉢替え

枝や花芽の剪定や整理が終った梅の素材は、新しい盆栽鉢に鉢替えをします。

梅の鉢選びのポイントは、泥ものでも色ものでも樹形が引き立つ鉢を選ぶことです。また、盆栽鉢の形は、幹の太さによって選ぶことです。例えば、幹が太い梅の素材は、楕円形の鉢には似合わないので、長方形の鉢がオススメです。長方形の盆栽鉢は硬いイメージがありますが、長方形の盆栽鉢に幹が太い素材を植えると、さらに幹の太さや強さが強調されます。

市販されている梅の素材は根株がビニールや麻布などで覆われているので、それらを取り除きます。株の大きさによっては用意した盆栽鉢に入らないことがあるので、できるだけ株の大きさに合う鉢が理想です。もし、入らない場合は、根周りを鉢の大きさに合わせてほぐします。

また、お正月に楽しむためのワンランクアップした梅の盆栽は、「鉢替え」作業によって作るので、根をほぐしたりする作業は必要最小限度で行います。

鉢替えは一般の盆栽の植え替えと同じ作業です。新しく植え付けをする盆栽鉢の底にゴロ土を敷き、その上に梅の株を置きます。植え付けの用土は、赤玉だけを使います。中玉、あるいは小粒の赤玉土を入れたあとは、隙間ができないように竹ばしで突き込み、鉢底の穴からきれいな水が流れ出てくるまで水をたっぷりと与えます。

鉢替えをした梅の盆栽は、寒い風や霜などに当てないようにして、室内で管理することが理想です。

初心者におすすめの「甲州野梅」

* 「甲州野梅」の特徴

「甲州野梅」の「野梅」は、「やばい」と読みます。盆栽に仕立てる素材のなかで甲州野梅は人気のある樹種です。

秩父・甲州・大和・天草は野梅の4大産地として知られていますが、そのなかでも甲州野梅は特に盆栽愛好家の間でも人気がある品種です。甲州野梅は、樹木が古木になると幹肌に自然の風情が表れてくるので、昔から人気がある品種です。風情のある幹肌には、イボのような膨らみが表れ、枝が細かいことが特徴です。花が咲き出すまでは細かい枝や小枝ができますが花が咲きはじめると、枝は太くなって荒くなってしまいます。

甲州野梅の一番の特徴は、梅の原種であることです。また、甲州野梅の樹木は、樹勢が旺盛なので、新芽は枝からではなく幹元からも伸びだします。多くの甲州野梅の新芽は、幹元から出ている姿が藪から出ている光景によく似ているので、山梨県南アルプス市付近の原産地では、「藪梅」とも呼ばれています。

一般的に梅は種を蒔いて育てる場合、少なくても13年以上経たないと開花することは難しいのですが甲州野梅の盆栽は、種を蒔いてから30年以上経たないと開花しないと言われています。甲州野梅を地植えにした場合でもほかの品種の梅に比べて開花は遅いです。

しかし、甲州野梅には独特の美しさがあり、力強い幹や枝ぶりには、自然の風情が漂っています。また、甲州野梅の花には、一重の桃色と白があり、一輪の花でも香りがとてもよいのが特徴です。

* 初心者オススメの理由

甲州野梅は、経験豊富な盆栽経験者でも花を咲かせるまで長い歳月がかかり、管理もむずかしいと言われている品種のひとつです。枝が細いため、ある程度枝が太くないと花が咲きません。しかし、盆栽初心者でも市販されている甲州野梅の素材を購入して鉢替えをすると、甲州野梅の盆栽として気軽に楽しむことができるので、オススメです。

12月になると花期前の甲州野梅の素材が盆栽店や園芸店などに出回りはじめるので、その素材を使って鉢替えをすると、ワンランクアップした梅の盆栽を楽しむことができます。また、鉢替えをした甲州野梅の盆栽は、盆栽初心者でも不必要な枝を整理したり、葉刈りをしたりする作業ができます。さらに甲州野梅は、枝の整理や葉刈り作業を繰り返し行うことによって枝が細かくなるので、花と樹形を一緒に楽しむことができる盆栽に仕上げることができます。

盆栽初心者でも市販されている梅の素材を使うとワンランクアップした新春を祝う梅の盆栽が簡単でき、花も一緒に楽しむことができます。今から12月頃までに好みの花期前の梅の素材を見付けて、自分で作った梅の盆栽を飾って新年を祝ってみませんか。
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