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脅威の岩窟めぐり、磐船神社

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岩窟めぐりで有名な磐船神社は大阪府交野市にあります。交野市は大阪府の北東部に位置し、東は生駒山系を境に奈良と接し、西は寝屋川市、南は四条畷市、北は枚方市があり、北東方面に進むと京都に至ります。

市域は標高20~30mの交野台地と、60~300mの生駒山地からなっています。古くから開けた地で交野台地は平安時代以来、皇室の狩猟地として知られ、中世には交野荘、私市荘として開拓が進められた地です。

かつては交通の便も悪い、静かな農村でしたがJR片町線(現在は学研都市線)、京阪電鉄交野線の複線化により急速に発展し、府営団地の建設や住宅開発が進み、農村から急速に住宅都市へと変化してきました。

この交野市には国宝薬師如来像を有する獅子窟寺、磐を御神体とする磐船神社、快慶作の木造阿弥陀如来像(重要文化財)を祀る八葉蓮華寺、古民家の北田家や国指定重要文化財の山添家住宅などがあります。

獅子窟寺は文武天皇のころ役小角が開き、聖武天皇のときに行基が堂宇を建立したと伝えられる古刹で、天長年間には弘法大師がこの寺で修行したと言われています。かつては全山に12の支院がありましたが、大坂の陣で焼失、その後寛永年間に光影が再建しました。
寺は普見山の中腹にあり、近くは交野地方の平野、遠くは摂津・河内までみわたす眺望に優れた景勝地で、本堂の背後に寺名の由来になった獅子が口を開けてほえているかのような形状の岩石があり、また奇岩巨石の起伏する岩場めぐりや岩洞くぐりなどが人気のスポットとなっています。

本尊の薬師如来坐像は平安時代初期の作で、観心寺の本尊如意輪観音像につぐ名作と言われ、国宝に指定されています。この薬師如来坐像は像高92cmの檜材一木彫成像で、豊かな肉付きで重量感にあふれた堂々とした体躯です。衣紋は翻波式の典型的な彫法を示し、木彫造の技巧の頂点を極めた作です。

この獅子窟寺から少し南に行くと大阪市立大学理学部付属植物園があります。約17000平方メートルの広い園内は温室・果樹園・花畑・展示畑などに分かれ、3万種の植物が栽培されています。メタセコイヤ・スイレンの珍種、サボテンなど珍しい植物もあり、ハイキングや遠足などで訪れる人も多くなっています。

そこからさらに南へ行くと磐船神社があります。磐船街道に沿った天の川の上流にあり、ご神体の高さは船形の巨岩です。伝説では饒速日命が天孫降臨に先立って、この磐の舟に乗って天から下ったと言われています。大阪城築城の際に加藤清正がこの巨岩を大阪まで運ぼうとしたができずに岩に名前を刻んで断念したといいます。ただし現在は一見目立つような説明がされていないので、通り過ぎてしまう観光客もいるようです。

ご神体のそばにある巨岩には川に面して4体の仏像が彫られ、川を隔てて拝むようになっています。

そしてこの磐船神社の注目点は岩窟めぐりです。こういったことが行われているお寺や神社は他にもありますが、この神社の岩窟めぐりはかなり本格的です。

酔っ払っている人や高齢すぎる人、小さい子供、足腰に病気や怪我をしている人、太りすぎている人は参加することができません。また、女性のハイヒールや男性の脱げてしまいやすい靴、サンダルなども断られます。そして夜間や雨天時、風が強いと判断された日も拝観禁止となります。

そうして岩窟めぐりに出発します。一般的な岩窟めぐりでは道がある程度整備されていたり、ロープやはしごなどで進みやすいようにされています。しかしこの神社の岩窟めぐりはそういったものはありません。自分で岩と岩の間を通り、岩を登っていかなければいけません。当然、服は汚れ放題となります。そのような岩登りが30分ほど続くとやっと抜けることができます。

そうして抜けた先には天の岩戸があります。あの有名な天照大神が中に入っていたというものです。
この大きな岩の扉を見るために、困難な岩窟めぐりをする観光客が多くいるのです。

しかし一時期このルートは拝観禁止となっていました。2014年のことですが、このルートで岩から転落した女性が亡くなるという事故がおこったのです。そこから一ヶ月半ほどして再開はされましたが、事故発生個所を含む数か所に橋が架けられたり、滑りにくい木材が使用されたりしました。また、雨水などが溜まって滑りやすくなっていた箇所は土や砂利で埋められました。道順を示すルート案内もよりはっきりとしたものに変更され、細かい注意事項を示した説明板が設置されました。

また、原則として一人での拝観が禁止され、ルート途中での写真撮影も禁止されています。拝観前に説明を受けた後に拝観承諾書に署名することも行われています。こういった様々な安全対策がなされた結果、以前よりも格段にこの拝観ルートは利用しやすくなりました。もちろん、注意事項を守ることが前提ですが、通り抜けた先の天の岩戸を見ることができやすくなったのです。
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