仏像

白檀の木が仏教に関わり深いのはなぜ? 数ある木々から選ばれたワケとは

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意外な方向性に人生が転がることは多々あります。飛鳥時代に伝わった仏教、仏像も、日本で浸透する内様々な技法が誕生しました。金銅仏に始まり、塑像、乾漆像を経て、日本独自の寄木造りが誕生。初期は樟(くす)が多用されていましたが、次第に榧(かや)、檜(ひのき)も使われるようになります。今でも使われる材料の中に白檀(びゃくだん)という木がありますが、これが意外と、仏教に広く携わっていました。何故かと言えば、香りがいいだけはなく、抗菌、鎮静作用をも伴っているため、自然心が洗われて、清浄な気持ちで仏前に向かえるからとのこと。

白檀という木

仏教とともに伝えられた、という説のあるこの白檀。どんな木なのかといえば、インド原産で、甘い香りを放つ香木として知られます。太平洋にも広く分布しますが、フィジーやハワイなどの白檀はあまり香りが強くないそうです。殺菌力も高いため、ペースト状にして体に塗ることもあります。ついでにいえば防虫効果もまた高いと来ている、超頼りがいのある樹木なのです。これでインドの日差しも菌、害虫もシャットダウン!通販のCMのように大げさに宣伝しても、ちっとも大げさじゃないのが白檀の木。

仏教との関わり

仏像だけでなく、様々な仏具に使用。香りがいい為か、線香やご焼香にも使われています。主な仏具としてお数珠、位牌等々。サンスクリット名はチャンダナといい、古くは仏典にその名が記されるほど、人気や知名度はあったようです。そもそもインドは気温が高く、汗もよく出ます。そのため、香木の存在はとても重宝されるものでした。入浴の習慣がないに等しかった中世フランスや、平安貴族が香水を使っていたのと同じ理由ですね。仏教における儀礼の一つに「香」というものがありますが、これに白檀や伽羅と言った香木が使用されていたわけです。火葬の際に香木が一緒に焚かれますが、これはお釈迦様の時代からの風習。

「焦げ臭いから、いい香りの木も燃やそうよゲホゲホ」ということではありません。どちらかと言えば、死者へのはなむけ。良いお香と共に成仏してね、といった意味ではないでしょうか。ちなみに、お釈迦様の入滅後、荼毘に付したのも、白檀でした。もっといえば白檀、古代インドでさりげなく貧富の差を象徴してもいます。お金持ちはふんだんに白檀を燃やし、貧乏人はちょっとの白檀。でも、お釈迦様と同じ香木で弔われると思うと、少しは気分が違うもの、なんでしょうか?日本では、仏具用の香木としては最安値とされますが、モノによってはやたら高かったりもするそうです。

「香典」の由来

お葬式などに持っていく香典ですが、これもあながち白檀、というか香木と関係がないわけではありません。かつてはご遺体を焼く際に「使ってください」とお香の元を持っていくのが普通でした。一時期の日本では米俵などを持っていくこともあったようですが、いつからか金銭に統一。今に至るというわけです。

お線香の材料

お墓参り、お盆の時などに活躍するのがお線香。実はこれも白檀使用。混ぜ物等との配合にもよりますが、基本的に線香の材料としては最もお手頃とされます。持ち前の香りも相まって、故人をしのび、ご先祖に対する気持ちも何だか通常と違ってくるかもしれません。

一説には線香で発せられる煙はお釈迦様の世界への道しるべともされます。香木が選ばれるのは、ともすると「この匂いを辿って行けば、いい世界に行ける」と言った前向きな気持ちがあるのかもしれませんね。ちなみに、極楽浄土は阿弥陀如来様の土地ですし、迎えに来て下さるのでお線香の煙はいらないでしょうが、やっぱりいい香りはほしいです。お盆の時にも線香を焚きますが、これはご先祖様へのおもてなしかもしれません。

ご焼香の材料にも

お葬式などに出て、ご焼香のやり方が分からない、という経験をお持ちの方もいるんじゃないでしょうか。このご焼香にも、白檀が使われています。線香も焼香も、心にある穢れをとり祓い、浄化させる意味では同じもの。ですが、ご焼香の場合は清い心で行うべき儀式。ですので、やり方等はきちんと覚えておきましょう。宗派によって回数等は違い、「どこ宗!?」となった際も慌てず騒がず。周りと同じにするのが一番ですが、自信がない時は一回でもいいそうです。要は、気持ちが大事、ということですね。それでも念のため、基本的なお作法を書いておきます。

ご焼香のお作法

左手に数珠をして、ご焼香は右手で行います。作法ですので、左利きでも右手で行いましょう。親指、人差し指、中指でお香(抹香といいます)をつまみ、額までおしいただき、指をこすって香炉と呼ばれる容器の中に落とし込みます。経って行う場合と座って行う場合がありますが、作法自体は同じ。ただ座る場合は立って歩くのではなく、膝立ちの姿勢で進むようです。まずは小後代の前に行きますが、一旦手前で立ち止まりましょう。そこで、まずは遺族や僧侶に一礼をします。遺影に合掌して一礼をした後、焼香台に進んでご焼香。また合掌をして、遺族に一礼をします。会場が狭い時に行われる「回し焼香」も存在。これは焼香台が回って来るというものですが、やり方は基本的に同じ。終わったら次の人に回します。椅子の場合は膝に乗せますが、畳の場合は前に置くのが基本です。

仏具としての白檀

防虫効果や殺菌効果にかんしても高い能力を発揮する白檀、先に述べたようにお数珠としても出回っていますが、いずれも名前に反して色が渋いです。仏像ともなれば色白の像が多いですが、お数珠としては少し色味が濃い物が多く、引き締まった印象です。

まとめ

時代が変わろうと、根っこは同じ。そんなことを昔聞きました。『かぐや姫』こと『竹取物語』は仏教とは関係ありませんが、思わず笑ってしまうシーンがあります。当時の人も、そのシーンで笑ったとか。その時に、根っこは同じということを聞いたことを覚えています。思ったより使い道のある白檀でしたが、昔の風習が今なお残っているのは仏法作法だけにとどまらない、昔ながらのDNAの賜物、積み重ねがありますね。なるべく、良い部分がいい方向に受け継がれるといいと思う次第です。白檀の香りで心癒されながら。

ご自宅でより親しみやすく。白檀製仏像

甘い香りを放つ、白檀。見た目も味わい深いこの木ですが、数珠やご焼香、仏壇などの仏具のほか、仏像の材料にもなっていることをご存知でしょうか?
ある時代より仏像は各家庭、個人が所有するようになりました。インターネットの時代となっても、白檀製の仏像は人気のようです。

何故に白檀?

お釈迦様の入滅、つまりこの世を離れられた時、荼毘に付したのが白檀の木。
元々インド原産なので、インドご出身のお釈迦様の身近にあっても不思議じゃありません。世界初の仏像も白檀製です。しかし、何故数ある木々の中からこの木が選ばれたのか?始まりは、ある王様でした。

初めて仏像を作らせた優填王

その名は優填王(うでんのう)。
この世で初めて仏像を作らせた人物でもあります。この人はインドに点在する国の一つ、コーシャンビーの王様。奥さんに勧められて「大、何てスンバラシイ!」と仏法を信仰し、説法を聞くためお釈迦様に会いに行きました。

しかし、その時お釈迦様は、あの世にいた摩耶夫人を訪問していたため、現世には不在。「お釈迦様お出かけ!?お母さんに会いに行った?じゃあしょうがないかあ。でも折角来たのに、寂しいな」と、病気に伏せるほどの思い詰めよう。王様も何だかんだ忙しいですし、スケジュール調整の果てだったのでしょう。しかし熱心なのはいいですが、根を詰めすぎです。
「いつでもお釈迦様に会えるように」せめてもと白檀の木で像を作らせました。別に恋をしていたとかではなく、尊敬する人の像を手元に置いておきたかったわけです。
人の心が体にも作用する、とは言いますが、像を作ったことで「お釈迦様と一緒だあ」と心持ちが安らいだのか、それともご利益か。病気はたちどころに治りました。

これが、記念すべき第一号の仏像となったわけです。白檀製の仏像は、別名檀像といいます。経典によっては、「この像は、白檀で作ってね」という決まりが存在するとか。

日本の白檀仏像

有名なのが法隆寺におわす九面観音像。
白檀という名のわりに何だか赤茶けたような色ですが、元々の木自体が濃い目の色の上、金箔などによって装飾を施すので、色付きでも何ら不思議じゃありません。
しかし、目鼻立ちはかなりくっきりしており、頭上の顔もミリ単位での違いがあるのではないかという程細緻です。この像は唐で作られたもののようですが、単に仏師の才能云々ではなく、白檀という木の性質が関係している模様。単にいい香りがするだけの木ではなく、細工がしやすいんですね。それも、ビッチリと凝った細工が可能。
一つ例を挙げるなら、法隆寺の九面観音像。この像が緻密、精密なのはそうした理由です。
ただ、日本では白檀が生息していないため、白檀の仏像を入手するには、木そのものを輸入して日本で作るか、既に出来上がったエキゾチック仏像を海外で買うかに限られます。「これ白檀ぽくね?」と、似たような性質の木を使う方法もとられました。

なぜ白檀が重宝?

一時期、「輸入モン使うぞ!」「似た性質の木を探して白檀製っぽいの作るぞ!」となった時代がありました。
当時、いくらだって木材はあったんです。事実榧、日の木で作られた仏像だっていくらでもあります。しかし、人気なのは白檀。仏像第一号の材料だから?それも勿論あるでしょう。
しかし、こんな話もあります。「妙なる白檀の香りは、仏様も好まれる」。開祖、お釈迦様を火葬にした逸話の影響なのかは不明ですが、そのある種ドラマチック、歴史的な出来事に立ち会った僧侶たちは、白檀の香りをかぎ、感極まって「白檀こそ至高の材質!」と思ったのでしょう、恐らく。
今でも、マニアの間では白檀製の仏像が人気のようです。ただ、モノが少なくなっているようで、その希少性も相まって、購入が難しくなっているとか。

ネットで購入

そんな白檀製仏像、意外やネットで買えるそうです。
といってもミニサイズ。最も、仏壇に入れる仏様も小さい物ですし、ご家庭用の仏像ならその方がいいでしょう。有名なオンラインショップの他、仏像をネット販売しているサイトで購入できます。
仏様の中には、干支に応じて計六体の守り本尊なるものが存在。というより、各干支を守護する方々です。スポーツ日本代表ならぬ、守護担当仏教代表です。ご自身の干支と照らし合わせてご購入してみるのもいいかもしれません。守り本尊のメンバーは以下の通りとなっております。

子年担当:千手観音菩薩(千の手を持ち、衆生を救う観音)

丑、寅年担当:虚空蔵菩薩(記憶力倍増の菩薩)

卯年担当:文殊菩薩(菩薩のトップ。獅子に乗る)

辰、巳年担当:普賢菩薩(文殊菩薩の相棒で象に乗る)

午年担当:勢至菩薩(阿弥陀如来の脇侍)

未、申年担当:大日如来(密教でのトップ)

酉年担当:不動明王(明王のトップ。綱と剣を持ち、明王では珍しい辮髪を垂らし一面二臂という姿)

戌、亥年担当:阿弥陀如来(極楽浄土の地主)
(出典:『完全保存版仏像の基本・菩薩像のすべて』エイ出版社発行)

コンプリートという手もあるにはあります。毎年良い方角に飾って、お守りして頂きましょう。しかし、どういう経緯をたどってこの面々に至ったのかについては分かっていないそうです。

老山白檀

まとめ

お香を焚くこと。それは仏教において仏や死者を祀る儀式の一種です。
仏様が香りを好む、とされたのがいつ頃からかは不明です。
しかしどこかエキゾチックで、どこか品のいい香りの白檀が仏像や仏具に使われるのは、納得のいくところかもしれません。思いを込めれば、より心地よく極楽往生も叶うでしょうし、仏様も喜ばれることでしょう。ちなみに白檀は栴檀ともいいます。
「そう、栴檀は双葉より芳し(優れた人は幼児期から、才能の片鱗を見せる)」の、あの栴檀。優填王が「お釈迦様の像、作ってえ」となった時に白檀が選ばれたのも、その香りが優れていたためかもしれませんね。
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