伝統工芸

陶器とはどういったものか。磁器との違いは?

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日本には様々な伝統的工芸品がありますが、その中でも数多くあるのが「陶器」です。
よく「磁器」と合わせて「陶磁器」として認識されていますが、厳密にいえば細かい違いがあるものです。
ここではそのうちの「陶器」について紹介していきたいと思います。

1、陶器とはどういったものか。磁器との違いは?

まず陶器と磁器は原材料が違います。
陶器は「土もの」と言われるもので「陶土」という土が原材料となっています。
純粋に陶土だけで焼くとひび割れがしやすくなり、耐久性にも問題がありますので陶土にガラスの原料である珪石や長石を混ぜて焼くことで強度を上げています。
磁器は「石もの」で主原料は石英や長石などの「陶石」です。
陶石を細かく粉砕して粘土に混ぜて焼きます。
違いをまとめていくと、

陶器
焼く温度:800~1250℃
叩いた時の音:にぶい重い音
光を通すか:通さない
焼き物自体の吸水性:高い
素地の色合い:様々な色があり80種類以上
雰囲気や厚さ:素朴、厚い

磁器
焼く温度:1200~1400℃
叩いた時の音:軽く高く響く音
光を通すか:通す
焼き物自体の吸水性:低い
素地の色合い:基本的に白
雰囲気や厚さ:なめらかに洗練、薄い

といった感じになります。

2、六古窯とは

日本には陶磁器の生産を行っている産地は数多くあるのですが、すべてが日本古来から伝わる焼き物というわけではありません。
特に九州に多く見られる、有田焼、萩焼、唐津焼、高取焼のような焼き物は中国や朝鮮半島から伝わった技術で作られているもので完全に日本古来のものとは言えません。
日本古来から伝わっている焼き物の条件として「中世(平安末期~安土桃山時代)から約900年以上の歴史があり、現在も生産が続いている」というものがあり、その条件を満たしている窯が6つあります。
その6つが「六古窯」と呼ばれるもので、「信楽」「備前」「丹波」「越前」「瀬戸」「常滑」がこれにあたります。
それぞれについて簡単に説明していきます。

「信楽焼」
古くは奈良時代に紫香楽宮の屋根瓦を焼いたのがはじまりとされているのが信楽焼です。
この地域の土は質が良いことで有名で、自然に珪石や長石が混じっているために焼き物の良い原材料になります。
中世には茶器や花入れ、壺が多く焼かれており千利休たち茶人にも愛されました。
現在、信楽焼と言えば「狸の置物」というイメージが強くありますが、これは昭和天皇が信楽に行幸された際に沿道に狸の置物を大量に並べて歓迎の意を表し、それを新聞やテレビで大いに宣伝したことで信楽と言えば狸、というイメージが定着していったものとされています。

産地組合:信楽陶器工業協同組合

住所:〒529-1811 滋賀県甲賀市信楽町江田985番地

「備前焼」
古代の「須恵器」の流れをくむ焼き物で、赤みの強い色合いが特徴的です。
釉薬を使わずに焼き締めて作ることで他の陶磁器と比べて圧倒的に丈夫で「投げても壊れない備前焼」という言葉があるほどです。
色々な焼き方がある焼き物でもありますが、中でも「緋襷」が有名です。
これは焼く際に他の焼き物とくっつかないようにワラや葉で挟んだり巻いたりするもので、ワラの成分や葉の成分と粘土の鉄分が反応して「緋色」になるというものです。
この「緋色」は備前焼でしか出せない色として珍重されています。

産地組合:協同組合岡山県備前焼陶友会
住所:〒705-0001 岡山県備前市伊部1657-7

「丹波焼」
中世安土桃山時代までは穴窯が使用されており、そのころは「小野原焼」と呼ばれていましたが江戸時代以降に登り窯を使用するようになると「丹波焼」と呼ばれるようになりました。
特に江戸時代前期に茶人であった小堀遠州たちが指導して作らせた茶陶が非常に有名で、丹波焼の名前を広めることとなりました。

産地組合:丹波立杭陶磁器協同組合
住所:〒669-2135 兵庫県篠山市今田町上立杭3番地

「越前焼」
もともとは須恵器を焼いていましたが、常滑地方の技法が導入されたことで陶器を焼くようになりました。
これが越前焼の始まりと言われています。
越前は日本海に面しており船での運搬の中継地としても需要な土地でした。
そこで丈夫で壊れにくい越前焼は水甕や壺などとして重宝されました。

産地組合:越前焼工業協同組合
住所:〒916-0273 福井県丹生郡越前町小曽原5-33

「瀬戸焼」
六古窯のなかでも、もっとも古くから釉薬を使って焼くということを行っていたのが瀬戸焼です。
初めのころは植物の灰を釉薬として利用し、器を強固なものにして見た目も美しくするというものでした。
明治時代にヨーロッパのウイーンで開かれた万国博覧会に出されたのをきっかけに外国への輸出が増大し、世界的に「セト」の名前は有名になっています。

産地組合:瀬戸染付焼工業協同組合
住所:〒489-0805 愛知県瀬戸市陶原町1-8

「常滑焼」
現在でも「急須と言えば常滑焼」と言われるほど有名なのが常滑焼です。
六古窯のなかでも最古の窯と言われており、その生産規模も非常に大きなものでした。
その最大の特徴は酸化鉄を多く含んだ陶土を使っているということです。
常滑焼の急須にお茶を入れるとタンニンと酸化鉄が反応することで苦味や渋味がとれて、まろやかな味わいになるとされています。

産地組合:とこなめ焼協同組合
住所:〒479-0836 愛知県常滑市栄町3-8

3、その他の陶器について

六古窯以外にも有名な陶器は数多くあるのが日本の伝統的工芸品です。
その中には「有田焼」「伊万里焼」「九谷焼」のようなかなりメジャーなものや、「大堀相馬焼」「会津本郷焼」のようにコアなファンが多いもの、さらには沖縄にも「壷屋焼」のような焼き物があり、まさに全国的に陶器は作られていると言えるのです。
陶器はそれぞれに特徴があり、趣も違ったものになっています。
色々と陶器を見ているときっと自分が気に入る陶器が見つかるでしょう。
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