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実もの盆栽《ピラカンサ》の剪定の仕方を学び実の色を楽しもう!

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ピラカンサは外来植物ですが花と実を楽しむことができるので、盆栽としても仕立てられています。

春の4月から5月ごろには小さな白い花が咲き、11月ごろになると実が赤や橙色に色づき、その実は翌年の1月ごろまで付いているので見応えがあります。盆栽に仕立てられる品種として、赤い実をつけるトキワサンザン、橙色の実をつけるタチバナモドキや紅色の実を付けるヒマラトキワサザンがあります。このピラカンサは常緑樹なので、実が色づき始めた頃は、緑の葉と調和して盆栽としても一層引き立ちます。また、ピラカンサの盆栽は寒さにも強く樹性が丈夫な植物なので半日陰でも育てることができるため、管理がしやすり盆栽です。しかし、成長が早いので剪定をしないで放っておくと枝が徒長になりひこばえも長く伸びてしまうので、樹形が乱れやすいです。

ピラカンサの盆栽の剪定の一番のポイントは、樹性の特徴を理解することです。また、ピラカンサの盆栽では花や実を楽しむ盆栽と樹姿を楽しむ盆栽では、剪定も異なりますが、両方とも盆栽としては魅力的です。

基本的な剪定の仕方

ピラカンサの盆栽の剪定は、花が終わった後の6月から9月初め頃までに行います。

ピラカンサの盆栽の基本的な剪定は、伸びた徒長枝や根元から出てくるひこばえを切り樹形を整えることです。そして、赤や橙色の美しい実と深緑色をした葉を楽しむことができる盆栽なので、秋の観賞期前までに剪定を終わらせる必要があります。実が熟す秋になっても枝や葉の剪定が終わっていないとピラカンサの盆栽の観賞を楽しむことはできません。通常、ピラカンサ盆栽は実がなることを優先に剪定すると樹形が乱れてしまうので、翌年には実を楽しむことができなくても、樹形をつくり直す必要があります。

剪定の順として、徒長した枝は幹元から切り詰めて盆栽全体を見ながら樹形を整えます。ピラカンサの枝は枝先が伸びるので、この剪定をする際は思い切って切り詰めることが大事です。この剪定作業をしないとピラカンサの盆栽の上部である“樹冠”の成長が著しいため、下部の下枝などが枯れてしまいます。そのため、この剪定作業は“樹冠”部分の成長を抑える効果があります。

また、ピラカンサの翌年の花芽は、春に伸びた“短い枝”(新梢)が7月ごろに充実し、その先に花芽を分化します。この花芽が翌年の春に開花して、その後実になります。“長く伸びた枝”には実がつかないので、8月以降に行う剪定では、忌み枝(不必要な枝)を切ります。徒長枝も沢山出やすい樹なので、幹が太らないように1~2節くらい残し切り戻しを繰り返しながら剪定を行います。そのため、ピラカンサの花芽は“短い枝”に“実がつく花芽”をつけるので、剪定する際は翌年の花芽のついた短い枝を残し、徒長した枝を切ることです。ピラカンサは花が終わり夏の時期にかけて枝に勢いがあるので伸びが早く、樹形も乱れやすいです。このような徒長枝には花芽が付かず枝の先にトゲがついた枝もあるので、切る際は注意が必要です。

枝が徒長になった場合は、生長期や休眠期であっても切り戻しの剪定をすることが可能です。特に夏の時期はピラカンサの成長が活発なのであまり枝が徒長したり増えたりした場合は、徒長枝を切ります。この時すでにピラカンサの小さな緑色した実が付いているので、その実が落ちないように注意を払いながら剪定することが大事です。

また、盆栽の樹形をつくり直したり、大きくしたり、あるいは小さくしたい希望がある場合は、剪定をする前に決めておく必要があります。樹形や大きさを考えながら剪定するとピラカンサの樹形も整いにくくなり、希望の大きさの盆栽を作る事ができなので剪定を始める前に作りたい盆栽の大きさを決め、作りたい樹形のスケッチなどを作っておくと便利です。

ピラカンサの盆栽を大きくしたくない場合は、伸びた枝が枝別れしている元から切ります。一方、全体的に大きくしたい場合は、伸びた枝を途中から切ります。また、樹形全体を見て、飛び出ている枝なども切って樹形を整えますが、ピラカンサスは勢いのある樹木なのであまり枝などを短く切ってしまうとその反動で徒長枝やひこばえが出やすくなり、実もあまりつかなくなってしまうので、剪定をする際は、切るバランスを考えながら行うことも大事です。

花や実を楽しむ剪定

ピラカンサの盆栽で花と実を楽しみたい場合は花芽に付いている短い枝は残し、遅くても7月の終わり頃までには長く伸びた徒長枝などを思い切って切り、盆栽全体の刈込みの剪定を終わらせることがポイントです。

8月以降にこの剪定作業をすると、10月ごろ枝の中でつくられる翌年の花芽を切ってしまうので、できるだけ7月中に行います。また、ピラカンサスは枝が伸びやすいですが、10月以降の剪定もこれらの花芽がある枝を切り落としてしまう可能性があるので、できるだけ剪定は控えることが大事です。特に橙色の実を付けるピラカンサスの盆栽は、すでに6月ごろには花芽が枝の中に出来ているので出来るだけ開花する前の春先に少し伸びた枝を切る程度の剪定によって、翌年は花や実も観賞することができます。

樹姿を楽しむ剪定

ピラカンサの盆栽で花や実より樹姿を楽しみたい場合は、樹形を一番に考えて思い切って刈り込む剪定をします。もちろん、花や実を観賞することは難しいですが、整った樹姿のピラカンサの盆栽を作ることができます。この場合、追い込み剪定を行いますが、枝棚のバランスも良くなり、ピラカンサの盆栽の新たな魅力を引き立てることができます。その際、ピラカンサの枝は徒長になりやすいので、冬でも樹形を整えるために伸びた枝を切り戻します。

まとめ

ピラカンサの盆栽は、花や実と樹だけ盆栽も両方素晴らしい魅力を持っています。ピラカンサは半日陰な場所でも成長しますが、花や実を楽しみたい場合はできるだけ日当たりに良い場所に置き、枝が伸びやすいのでこまめに剪定することが大事です。7月の終わりごろまでにピラカンサの盆栽の剪定を終わらせることで、毎年花と実を観賞することができます。ピラカンサの盆栽は、花や実がないものでも樹姿に素晴らしさがあります。ピラカンサは外来植物ですが、剪定によってピラカンサの魅力を引き出し、日本の盆栽としても観賞することができます。

鉢植えから仕立ててお正月に楽しむピラカンサの盆栽づくり

近年、生け垣や庭木などに人気のあるピラカンサですが、一般の園芸用素焼き鉢などに植えられている2~3年位の若木でもお正月に楽しむ観賞用の盆栽に仕立てることができます。

鉢植えのピラカンサをお正月観賞用の盆栽に仕立てるために必要な整姿や剪定作業は、主に7月と12月に行います。また、ピラカンサの若木作りも3つの方法で簡単に作ることができます。

お正月用盆栽に仕立てるための7月と12月の作業

・盆栽仕立てにするための7月の作業
ピラカンサの鉢植えをお正月用の盆栽に仕立てるために行う7月の主な作業は、整姿、剪定と針金掛けです。

冬の休眠期が終わったピラカンサの新梢は、春頃から勢いよく伸び出て樹形を乱し始めます。そのため6月に樹形を整える程度の切り詰めと整姿作業をします。7月の作業では、伸びている新梢と徒長枝の剪定をして、枝味を良くするために新梢に針金を掛けて、枝に「模様づくり」をする作業を行います。

ピラカンサの成長期は7月に入っても続いているので、樹形から飛び出している新梢と徒長枝の剪定を再度行います。6月に残しておいた新梢や徒長枝は、7月になると太くなっているので、周りの太い枝とのバランスも取りやすくなるため、剪定や整姿がしやすいです。この作業をする際、「ヤゴ芽」と呼ばれている枝元の部分から出てくる芽や徒長枝も一緒に剪定します。

また、植木鉢に植えられているピラカンサの新梢の剪定をしていると、勢いのある新梢は真っ直ぐに伸びているので、盆栽としては枝味が乏しくなってしまいます。そのため真っ直ぐに伸びている新梢の枝味をよくするために針金を掛けて、「模様づくり」をします。7月の成長期に真っ直ぐに伸びている新梢は柔らかいので、この時期が「模様づくり」の針金掛けをするためには、適期です。柔らかい新梢への針金の掛けは、丁寧に時間をかけて行います。また、針金掛けをする際は、ピラカンサの幹肌も傷めないように注意が必要です。

7月の整姿や剪定が終わった後に植木鉢を盆栽鉢に植え替えたい場合は、9月に入ってから行います。盆栽鉢は種類も豊富なので、ピラカンサの樹木の特徴や樹形が引き立つ盆栽鉢を選ぶことがポイントです。

・盆栽に仕立てるために行う12月の仕上げ作業
12月に入ると寒さも厳しくなり、初霜の便りも聞こえてきます。
この頃になると生育が旺盛なピラカンサの樹木でも枝の伸びが止まり、休眠状態に入ります。この時期のピラカンサの樹木の状態は、新梢が旺盛に伸び出したりする成長期とは異なるので、12月に行う剪定作業では、思い切って新梢を切り詰めたりすることができます。また、この時期に思い切った剪定をしても樹木にかかる負担は少ないので、今までに剪定をすることを控えていた枝や幹元から伸び出した徒長枝なども強めに剪定をすることができます。

樹形を乱しているピラカンサの枝は、主に真っ直ぐに伸びている新梢の小枝が多いです。この枝が出ている太い枝の出元から3葉位残して切り詰めます。この剪定は一見難しいそうですが、とても簡単です。ピラカンサは枝や実が生っている部分が塊になっているので、その塊部分から飛び出している新梢を中心に切り詰めて剪定をします。この剪定作業は、思っている以上に簡単に出来る作業です。

しかしながら、秋の終り頃から冬にかけてピラカンサの短い枝先には、来春の花芽ができているので、これらの短い枝先の剪定は控えて残しておきます。この新芽を切ってしまうと、春が来ても花を楽しむことができなくなってしまいます。また、この新芽が付いている短い枝は肉眼では見えにくいので、剪定をする際は、注意が必要です。

・お正月の観賞用に仕立てたピラカンサの盆栽管理
せっかく鉢植えからお正月観賞用の盆栽に仕立てピラカンサなので、一番良い状態で管理をして楽しみながら観賞したいものです。

お正月の観賞用に仕立てたピラカンサの盆栽は、冬の冷たい北風に当ると寒さと乾燥によって、一度に寒害と乾害の被害が同時に生じてしまいます。そのためにピラカンサの盆栽は、陽当たりが良く冷たい北風の当たらない南側の暖かい軒下などに置いて管理することが大事です。

室内でピラカンサの盆栽を管理する場合は、エアコンやストーブなどによる暖房が効いていない室内で管理をすることが大事です。暖房が効いている部屋でピラカンサの盆栽を管理すると室内の高温によって乾燥が生じ、ピラカンサの樹木に蓄えられている栄養分が使われて無くなってしまうので、春の芽立が悪くなってしまいます。

ピラカンサの盆栽管理は、盆栽鉢の土の上が乾いたら水を与えます。また、冬の時期はピラカンサが休眠期に入っているので、お正月だけでなく寒い冬の間に行う施肥は、控えます。

盆栽に仕立てるために必要なピラカンサの鉢植えづくり

お正月観賞用のピラカンサの盆栽づくりをするためには、2~3年位の盆栽用の若木の鉢植えが必要です。素材となるピラカンサの若木がない場合は、3つの方法で準備することができます。

一つは、ピラカンサの若木を園芸店などで購入して、植木鉢に植えて若木に育てる方法です。この方法は失敗がなく一番簡単な方法なので、この若木を使って数年後には盆栽に仕立てることができます。しかし、園芸店などで2~3年位の若木を入手すると、すぐに盆栽に仕立てることができるので、簡単です。

2つ目は、庭の垣根などに植えられているピラカンサの樹木や盆栽に仕立てられている樹木から、変化に富んだ風情のある樹形をしている枝の部分を選んで取り木をして、種木として育てる方法です。一般的に盆栽経験がない場合は取り木の仕方は難しいですが、ピラカンサの盆栽からの取り木はあまり難しくないので、チャレンジしてみることも大事です。ピラカンサの盆栽から取り木をする場合は、9月頃が適期です。また、取り木をした後の親株の盆栽は、樹形を乱す徒長枝や枝が伸びてくるので、忘れずに切り詰めます。

3つ目は、ピラカンサの種を蒔いて若木を育てることです。多くの植物の種は、春と秋に種を蒔きますが、ピラカンサの実は秋に熟すので秋から冬にかけて種蒔きをします。秋の終りから冬にかけては気温が低くなるのでピラカンサの種を蒔いても発芽はしにくいため芽がすぐ出てこないこともありますが春になると芽が出てきます。

ピラカンサの種のまき方は、最初に赤や黄色をしている実の周りを覆っている果肉を全て取り除きます。水で洗い流しながら果肉を取ると、簡単に取り除くことができます。この作業をしないと、せっかく種を蒔いても果肉に含まれている発芽抑制物質によって、発芽率が悪くなってしまいます。また、種を蒔く際は、少なくても1~2センチ位は間隔を空けて種を蒔きます。種蒔きの後は冬の寒さも厳しくなって来る頃なので、陽当たりが良く土が凍らない場所で管理をします。また、土の表面が乾いたら水やりをします。春になって発芽がしてきたら、生育の良い苗を数本抜いて育苗ポットに移し、ある程度成長してきたら素焼きの平鉢に植え替えて盆栽用の若木に育てます。

盆栽の樹木としては歴史の浅いピラカンサですが、鉢植えから盆栽に仕立てやすい樹木です。今度のお正月は、身近にあるピラカンサの鉢植えの若木から盆栽に仕立てて、ピラカンサの盆栽と祝う新年を迎えませんか。
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