刺繍

初心者からチャレンジ!刺繍キットで日本刺繍の始める

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着物や帯、半襟を美しく引き立たせる日本刺繍。繊細で優美なデザインと金糸を多用した華やかな技法はすばらしく、西洋刺繍とは違う趣があります。
難しそうで敬遠しがちですが、最近は手軽に始めることができる初心者向けのキットもあり、動画や本を頼りに独学で始めてみる人も増えているとか。日本刺繍の歴史や刺繍のやり方を紹介します。

日本刺繍のルーツは「繍仏」

刺繍の伝来は500年ごろ。インドから中国を経由し仏教とともに「繍仏(しゅうぶつ)」としてもたらされました。「繍仏」とは刺繍によって描かれた仏様。日本書紀にも、605年飛鳥寺に銅・繍の仏像が作られたという記載があります。日本最古の繍仏は奈良の中宮寺にある「天寿国曼荼羅繍帳」。死去した聖徳太子を偲んで、妃の橘大郎女が作らせたもので、極楽にあるという「天寿国」の様子を刺繍で描いています。

飛鳥から奈良時代、刺繍も含めて大陸から伝わった織物や染色の技術は価値の高いものとして重要視されていました。高級な織物の生産を管理し職人を掌握するために設けられたのが「織部司(おりべのつかさ)」です。やがて、平安京への遷都が行われると、織部司も京都へ移され、織物や染色の職人とともに刺繍職人も京都に移り住みました。これが「京繍(きょうぬい)」の始まりといわれています。

貴族の装束、雅楽の衣装、武将の甲冑と、刺繍は日本人の衣装の装飾に欠かせないものに。室町時代には地方にも刺繍の技術が伝わりました。そのひとつが、現在の石川県で生産されている「加賀繍(かがぬい)」です。当初は打敷や袈裟など仏具の飾りが主でしたが、その後加賀友禅の可飾に用いられるようになり、現在では京繍とともに国指定伝統的工芸品となっています。

江戸時代になると、大名や格式ある武家はもちろん、富裕な町人の間でも絢爛豪華な装飾が好まれ、刺繍の需要が高まりました。刺繍の施された小袖や打掛、帯は、ハレの日の装飾品として人気に。江戸でも刺繍は盛んになり、江戸刺繍として発展していきます。

明治以降、日本刺繍の芸術性は海外でも高く評価され、輸出も行われるようになりました。近年はミシン刺繍が主となり、刺繍職人も減ってきています。その一方で、伝統工芸の枠を超えて新しく芸術的な作品も多く生み出されています。

日本刺繍の特徴はなんといっても絹糸。撚りのかかっていない「釜糸」と呼ばれる絹糸を12本合わせて使います。デザインによって撚りの強さを変えたり、色を変えたりすることで、繊細な表現をすることができます。もうひとつの特徴は「両手刺し」。布を刺繍台に張って、右手は布の上から下へ、左手は布の下から上へと両手を使って針を刺していきます。

日本刺繍のやり方

日本刺繍にはたくさんの道具がありますが、基本的なものだけ説明します。

【糸】
釜糸と呼ばれる撚りがかかっていない平らな絹糸を使います。そのまま使うこともありますが、たいていは縫う前に糸に撚りをかける作業をします。金属糸を使うこともあります。

【針】
日本刺繍用の針は太さの種類が15種類。糸の太さや布目の細かさに合わせて針を選びます。細い順に毛針、極細、大細、切附、天細、相細、相中、相太、中太、大太、小衣装、中衣装、大衣装、極衣装、かがり針)

【刺繍台】
日本刺繍は布をぴんと張らせる刺繍台を使います。反物が刺繍できるサイズで半襟などの小物でも刺繍ができます。(小物は四角い刺繍枠を使うこともあります)。

【うま】
左手は布の下から針を刺すので、布の下にも作業する空間が必要です。うまは、刺繍台を乗せる台で、正座用といす用があります。

【駒】
駒は金糸を使って刺繍するときに使う木製の糸巻きです。金糸を巻きつけて転がしながら下絵に沿ってはわせて、とじ糸で留めていきます。

【てこ針】
平糸(撚りをかけていないまっすぐな糸)で刺繍するとき、糸をしごくために使います。

刺繍の工程
1)図案を決める
本や過去の作品などを参考に、著作権に問題のない図案を探します。

2)布を選ぶ
図案と自分のイメージにあった布を選びます。

3)色を決める
図案と布に合わせて、どこにどんな色を使うか選んでいきます。

4)布を刺繍台に張る
刺繍台に布を張る「台張り」をします。布がたるまないように台に張って、端を糸でかがります。

5)布に下絵を写す
図案をチャコペンシルで布に描き写します。

6)刺繍の技を決める
刺繍にはたくさんの技法があります。どの技法を使って刺繍するか決めます。

7)糸撚りする
釜糸を糸撚りします。平糸で刺繍する場合もあります。

8)刺繍する
糸撚りした糸で刺していきます。

9)仕上げる
裏糸をきれいに切って、刺繍の裏側に糊をつける「糊置き」をして、蒸気を当てる「湯のし」をします。台から取り外して アイロンがけをします。

10)仕立てる
額に入れたり、バッグや小物に仕立てます。

基本から学べる初心者キット

日本刺繍は独特の技法があります。日本刺繍の教室もありますが、まずは通信教育や入門者向けの初心者キットで試してみるのもいいかもしれません。

フェリシモ クチュリエ
日本の美を学ぶ「はじめてさんのきほんのき」日本刺しゅうレッスンの会
http://www.felissimo.co.jp/shopping/I180742/GCD129629/
月に1回届く日本刺繍作家、沖 文さんデザイン・監修のキット。初回に刺繍針がつき、毎回糸撚り済みの糸、図案入りの布がセットされているので、初心者さんも簡単に日本刺繍が楽しめます。基本編では毎月2種類の刺し方を学び、応用編で実用小物に仕上げます。2484円(税込)。

フェリシモ クチュリエ
日本刺しゅうにあこがれて 絹糸の優美な輝き文様フレームの会
http://www.felissimo.co.jp/shopping/I180742/GCD678522/
こちらも日本刺繍作家、沖 文さんデザイン・監修のキット。毎月、接着芯を付けた図案プリント済みの布とフレームが届きます。手軽に始めてみたい初心者さんおすすめです。

中村刺繍
京都伝統工芸士監修「日本一やさしい刺繍キット」
http://www.nakamurashisyu.com/4contents/index.html
京都伝統工芸士が教える道具付きのキットです。日本刺繍の初心者さんでも、一から基本を学ぶことができます。完成した刺繍は袱紗に仕立てることができますよ。刺繍糸、枠、針(2種)、てこ針、下絵付きの布、枠、テキストDVDのセットになっています。1万3800円。
本格的な刺繍台をセットにした入門用のキットも取り扱っていいます。

日本刺繍会「紅会」
日本刺繍紅会(くれないかい)通信講座『桜』
https://youtu.be/
日本刺繍「紅会」は本部が千葉。東京、名古屋、大阪に教室があります。簡単な作品から日本刺繍を学べる通信講座があります。通信講座では簡単な技法から学ぶことができます。8980円。
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