禅寺で修行にトライ!精進料理や座禅を体験できる寺院

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京都にも数多くある禅寺。禅宗の最大の特徴と言っても良い、座禅や精進料理を体験できる寺院も増えています。
京都全域に点在しているので、旅行日程にも組み込みやすい禅寺体験。次の旅行にはぜひ取り入れてみてください。

自己の内側にある仏性を追求する禅宗

大乗仏教の一派である禅宗は、6世紀初頭にインドから中国へ伝えられたと言われています。自己の仏性を内観することを目的とし、「仏心宗」とも呼ばれる宗派です。経典を重視せず、師匠との問答や座禅によって、自己の内にある仏性を極めていく点が特徴としてあげられます。

達磨によって伝えられた禅宗は、慧能(えのう)の南宗と神秀(じんしゅう)の北宗に分かれて発展し、南宗はさらに青原(せいげん)の曹洞宗と南嶽(なんがく)の臨済宗に分かれていきました。鎌倉時代に道元が曹洞宗を、栄西が臨済宗を日本に伝えたのが、日本の禅宗の始まりです。

当時の日本は比叡山延暦寺を中心とする天台宗が勢力を伸ばしており、宗教界だけでなく政界にも強い影響力を持っていました。先に臨済宗を伝えた栄西は建仁寺を起こしたとはいえ、純粋な禅宗を広めていくことは難しく、天台宗の顔色を伺う布教活動を展開せざるをえませんでしたし、曹洞宗を伝えた道元は、厳しさを極める比叡山からの弾圧に、ついに京都の地を離れて福井の地に永平寺を興すことになりました。

仏教の原点回帰を目指した禅宗は次第に広まりを見せ、鎌倉時代の終わりから南北朝の時代を経て、室町時代に隆盛期を迎えます。天龍寺を開山した夢窓疎石(むそうそせき)の功績は特に大きく、名実ともに禅宗を仏教界のトップへと押し上げました。

禅宗は新しい仏教を日本へ伝えただけではなく、当時の文学や美術・建築などの分野にも大きな影響を与えました。五山文学と呼ばれる漢詩文や、水墨画などの絵画の表現方法、枯山水や書院造りなどの建築などがその例です。

座禅をすることだけではなく、日々の生活もすでに修行であると考える禅宗の教えは、日常生活にも影響を与えています。禅宗の中で発展した精進料理は、ダイエットなどの健康的な食生活の手本として注目されています。禅宗の特徴である座禅を体験できたり、中には寺院に宿泊して1日修行を体験できたりする寺院もあります。特に京都市内には多くの禅寺があり、精進料理や座禅、宿泊できる寺院も少なくありません。

体に取り入れる修行・精進料理を体験できる寺院

「不殺生戒」を唱える仏教では、獣の肉を食べません。もともとは美食を戒め粗食を心がけることで精神修養する意味でしたが、次第に肉を使わない料理のことを「精進料理」と呼ぶようになりました。平安時代から鎌倉時代にかけて、特に禅宗でその料理法が確立していった背景から、禅宗の特色の一つに数えられています。

精進料理は一人分の食事を膳に載せて供する「本膳料理」が基本ですが、懐石式に整えたり、一つの卓を囲む「普茶料理」の形式に整えられたりもします。高貴な人々とのつながりが増えるに従って、彼らを供するための精進料理も次第に姿を変えていったのかもしれません。京都にある禅寺でも、精進料理を食べられる寺院が幾つかあります。

もっとも人気があるのは「天龍寺」の境内にある「篩月(しげつ)」です。嵐山の素晴らしい景色と、天龍寺の美しい庭園を見ながら、精進料理をいただけます。天龍寺直営の篩月で出される精進料理は本膳料理形式。朱塗りのお膳で出される料理は、「雪」「月」「花」の3種類があり、3000円から楽しめます。直接出向いても入れるようですが、事前に予約をするのが無難です。

大徳寺大慈院の境内にある「泉仙(いずせん)」では、禅宗独特な様式「鉄鉢料理」を堪能できます。托鉢に使う鉄鍋を模した木製の器に、四季折々の味覚が詰め込まれた、禅の心の伝わってくる料理です。泉仙は大徳寺大慈院以外にも3店舗を経営しているので、大慈院へ行く予定がない時は、別のお店で鉄鉢料理を楽しめます。

日本最大の規模を誇る妙心寺南門の門前にある「阿じろ」は、妙心寺の料理方を務める精進料理店。本膳料理形式の弁当から精進会席まで、豊富なメニューが揃っています。仕出しや出張料理も行っていることも特徴で、各宗派の寺院の行事などでも重宝される料理店です。3日前までに予約が必要なので、旅の日程は早めに組む必要があります。

同じ妙心寺の塔頭「東林院」では精進料理のランチを堪能できます。宿坊を予約すると普段非公開の沙羅双樹の庭を見ることもでき、精進料理も楽しめて一石二鳥です。精進料理を作る体験教室も開いているほか、定例の行事でも精進料理を楽しめるものがあります。

禅寺の宿坊に泊まって禅のこころに触れてみる

京都市内で宿泊できる宿坊を持つ禅寺もあります。もっとも有名なのは先ほど紹介した妙心寺。塔頭の大心院と東林院で宿坊を開いています。大心院は書院の前にある阿吽(あうん)庭が有名な寺院。苔の緑と白沙に描かれた模様と大小の奇岩で、龍が昇る様を表した枯山水の庭園です。先ほども紹介した東林院は、樹齢300年を超える沙羅双樹の銘木があることで知られています。

宿坊は参拝者のための宿泊施設で、もともとは参拝の前に心身を清めるための場所の役割を果たしていました。以前は僧の暮らす僧坊と変わらぬ環境の宿坊が多かったようですが、一般観光客を受け入れるようになってからは、冷暖房も完備された快適な宿坊が主流になっています。妙心寺には宿坊とは別に、ホテルと変わらない設備の花園会館が建てられています。

宿坊に泊まるメリットのひとつは、僧の生活を体験できること。ほとんどの宿坊で朝の勤行に参加できます。もうひとつの楽しみが精進料理。宿坊によっても違いますが、朝食を提供する宿坊がほとんどです。中には夕朝食のついた宿坊もあるようです。最大のメリットは普段公開されていない場所を見られること。普段は非公開の東林院の沙羅双樹の庭は、宿坊に泊まった人にしか見られない贅沢な楽しみです。

禅寺の座禅体験で内なる自分と向き合う

1日の生活の中すべてが修行という禅宗において、座禅は修行の一部分ですが、重要な要素であるのは間違いないでしょう。多くの禅寺が座禅を体験できるよう、一般にも開放しています。京都にも座禅を体験できる寺院が10件以上あり、最近では旅行の日程に組み込んで積極的に参加する観光客も少なくありません。有名なところを上げるだけでも、建仁寺・東福寺・南禅院・天龍寺・相国寺など、京都のどの方面へ出かけても、必ず一箇所は座禅を体験できる寺院があります。

座禅は仏教以前からインドで行われていた修行法。禅宗では仏教のすべては座禅にあると考えられています。一般的に右足を左の腿の上に置き、右足を抑えるように左足を置くのが基本です。手の置き方は作法によって様々あるようですが、卵形に輪を作る「法界定印」に組むのが主流のようです。

建仁寺では毎月第2日曜日に行われる「千光会」で、一般の人も無料で坐禅を体験できます。予約は不要で誰でも参加できる行事です。東福寺は事前予約が必要ですが、予定に合わせて日時を自由に選べ、精進料理体験なども組み合わせられます。

南禅寺では毎月第2と第4日曜日の朝6時から、誰でも自由に参加できる無料の「暁天座禅」を行っています。天龍寺の座禅会は第2日曜日の朝9時からと、朝が苦手な人でも参加しやすい時間からスタートします。時間に余裕があれば、その後10時から行われる龍門会で、天龍寺の歴史や法話も聞いていきたいですね。

相国寺の座禅会は維摩会(ゆいまえ)と呼ばれています。毎月第2と第4の日曜日の朝9時から開催されますが、90分とちょっと長めの坐禅です。初めて坐禅に挑戦する人には、別室で事前に坐禅の心得を指導してくださいます。

観光客でも参加しやすい時間設定もあり、坐禅を旅行日程に組み込むことは難しくなさそうです。他にも写経体験など、午後から参加できる催しもあります。せっかくの京都旅行なので、普段の生活では体験できないことに挑戦するのも、きっと良い思い出になるはず。禅寺で禅の雰囲気を体験し、内側からもリフレッシュできる旅行になるでしょう。
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