仏像

巡る因果を表す言葉だった縁起

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「茶柱が立っている、縁起がいいね」と、縁起という言葉はジンクスの意味合いで使用されます。
あながち間違いというわけではありませんが、元はお釈迦様のお言葉でした。

仏教での縁起

縁起は「因縁生起(いんねんしょうき)」の略です。サンスクリット語のプラティーティヤ・サムトパーダが元となっています。
仏教での縁起を一言でいうなら、「全ての物、出来事は原因と条件が集まったもの」「物事にはすべて原因がある」といったところです。
一つ、また一つの集まりではなく、世界は色々な物が関わり合っているというのです。この縁起の思想は仏教の根本的な原理とされており、お釈迦様が悟った真理だとされます。

十二因縁

お釈迦様は縁起を十二の因縁として悟り、始まりに当たる無明から縁起を遡りました。

【無明】
煩悩と迷いの状態であり、苦しみの原因です。これは前世からの因縁とされます。

【行】
真理を知らない状態で行ったこと。間違った見識や愚かな行いなどです。ここまでが前世になります。

【識】
ここからが現世です。識とは、母親の胎内に宿った時に感じる最初の意識になります。一説には心理学でいう所の集合的無意識です。「人間としての一種の本能みたいな無意識」と言ったところでしょうか。

【名色】
現世ですが、まだお腹の中にいます。名が心、色が体です。識が生じ、徐々に人間として生まれる準備ができていく段階となります。胎児は母親を始めとする周りの声を聞いているとされますので、妊婦の方や周辺の方は会話に注意しましょう。

【六入】
または六処。外界に生まれ出て、六つの感覚器官が機能した状態です。

【触】
赤ん坊のころ、物に触ることで、物体の存在を知ります。この段階では、まだ知るだけです。

【受】
触からさらに発達し、触った物が何なのかを識別する段階です。

【愛】
仏教において、「愛」とは欲望を示します。この場合の欲はいわゆる好き嫌いの感情と捉えていいでしょう。愛の段階では、「あれが好き、これは嫌い」との認識が芽生えるだけです。

【取】
愛により芽生えた欲望への執着です。「お菓子が欲しい」と泣いて駄々をこねる子供は、まさにこの状態と言えます。

【有】
生きて存在することです。簡単に言ってしまいましたが、ここに至るまでに培われた人格のせいで苦労する人が少なくありません。まさに、一切皆苦の状態です。

【生】
自分の人生がある程度ひと段落すると、今度は結婚、子供が生まれます。これが「生」になります。子供を産み育てるのは並大抵の苦労ではなく、それまで以上の苦労を強いられるでしょう。

【老死】
なんだかんだ言っても、最終的には皆老いて死ぬ。そして、輪廻転生の考えにより無明に戻るわけです。

お寺の由来も示す縁起

人としての根本的な苦しみを知り、そこから抜け出すのが仏教の目的です。
縁起及び十二因縁はそれを知るための指針ですが、「縁起」にはお寺に関する由来や物語の意味もあります。有名なのが『道成寺縁起』。
道成寺に匿われたイケメン僧侶安珍が清姫という女性の情念に焼き殺されて共に畜生道に堕ち、法華経による写経供養で救われると言った物語です。
この物語も、イケメンな僧侶がおり、一夜の宿を乞うた場所で女性に惚れられて、「今は願掛け修行中ですから。帰りによるから待っていてください」と嘘をついたことで焼き殺される羽目になっています。
十二因縁で言う所の、まさに愛が元で安珍と清姫は一度蛇に身を落としました。法華経は、古くはお釈迦様が弟子に説いた経典でもあります。それで救われるのが象徴的と言えますね。

まとめ

バタフライ効果という言葉があります。ブラジルで飛んでいるチョウの影響で、テキサスに竜巻が起こるというものですが、縁起もある意味ではこれに似ているでしょう。何が何に影響を及ぼすか分かりません。原因とあらゆる状況、条件によって今の行いが次に影響するというのが仏教の考えです。
因果も人の世もこうして続いていきます。良い因果を生み出せるよう精一杯生きるしかありません。

監修:えどのゆうき
日光山輪王寺の三仏堂、三十三間堂などであまたの仏像に圧倒、魅了されました。寺社仏閣は、最も身近な異界です。神仏神秘の世界が私を含め、人を惹きつけるのかもしれません。
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