伝統工芸

『大館曲げわっぱ』数百年を経ても変わらない実用的なデザイン

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曲げわっぱとはスギやヒノキなどの木材の薄い板を特殊な技法で曲げて円筒形に整えたもので、入れ物部分と蓋の部分でセットとなります。
日本各地にそれぞれの技法が伝えられていますが、その中でもとくに秋田県大館の「大館曲げわっぱ」が有名です。
ここではそんな「曲げわっぱ」について紹介していきたいと思います。

1、大館曲げわっぱの歴史

曲げわっぱの歴史自体は非常に古く、奈良時代には存在したと言われています。
もとは木こりが山に籠って仕事をする際に杉の生木を曲げて桜の皮で縛ったものを弁当箱として利用したのがはじまりとされています。
大舘曲げわっぱは江戸時代初期に水戸から秋田に転封された藩主佐竹義宜の治世に始まります。
このころ秋田では冷害や水害などの災害が続き、民衆は困窮を極めていました。
そんなときに領内の豊富な森林資源に目をつけ、内職として奨励されたのが曲げわっぱです。
造形の美しさから工芸品としての評価も高いものですが、実用性にも非常に優れているために長きにわたって継承されてきました。
ヒノキや天然の秋田スギの色合いや木目の美しさに加えて、ほのかに香る木のにおい、そして数百年を経ても変わらない実用的なデザインが高く評価されています。
現在では、湿気で傷んだり傷ついたりするのを防ぐために漆やウレタンを塗っている製品も増えてきています。
1979年に「大舘曲げわっぱ協同組合」が設立され、曲げわっぱの技術の継承、作品の展示販売、後継者の育成、広報活動などを行うようになりました。
1980年には大舘曲げわっぱは伝統的工芸品として認定されます。
近年ではもとからの円筒形の曲物だけに限らず、コーヒーカップやビールジョッキ、コップなどの飲み物を入れる容器や電球に被せる照明器具などさらなる展開を見せています。
もちろん元々の弁当箱としても制作され続けており、大舘の名物でもあり大舘駅で販売される駅弁「花善の鶏めし」の容器としても曲げわっぱが使用されました。

2、曲げわっぱの作り方

曲げわっぱに使用する木材はなんでも良いというわけにはいきません。
強さと弾力性に優れたヒノキやスギを切り出して熱湯に浸けていきながら少しずつ曲げていきます。
この時、曲げ過ぎると折れてしまい、曲げきらないとしっかりと形作ることができません。
ここでかなりの技術が試されます。
そして形を整えた木を山桜の皮を使って縫い止めます。
その後に底入れをして木目を整え、塗りと磨きを繰り返していきます。
こうしてできた曲げわっぱは「夏は保冷、冬は保温」することができるものとして重宝され、スギの木の殺菌効果によって中に入れた食べ物が傷みにくくなるという特徴があります。
特に米飯は曲げわっぱに入れておけば二日は腐らないと言われており、その効果の高さがうかがえます。

3、曲げわっぱの使い方

・使用前
まずできたばかりの新品の曲げわっぱは非常に乾燥しているため米などを入れるとひっつきやすくなっています。
ある程度使い込むまでは米がくっつかないように内側を少し濡らしたり湿らせたりして使用するのが良いでしょう。
ずっと使い続けていると曲げわっぱの表面が自然と馴染んできますので米がくっついたりすることもなくなってきます。
何も塗装されていない白木のタイプは油などのシミがつきやすくなっています。
これも使い続けることで馴染んできます。
こういったシミが気になる人は漆やウレタンで塗装されたタイプのものを使うのが良いでしょう。

・使用後
使用したあとのお手入れも重要です。
曲げわっぱは使い終わったらできるだけ早く洗ってしまうのが正解です。
できればお湯かぬるま湯を使って洗うのが良いのですが、スポンジなどできつくこするのはいけません。
手かスポンジの柔らかい部分で優しく洗い流していきます。
白木で無塗装の曲げわっぱに汚れが多くついている場合はクレンザーとたわしでこすり、しっかりと洗い流しましょう。
漆やウレタンで塗装されているものであれば中性洗剤を使っても大丈夫です。
洗い終わったら曲げわっぱを伏せた状態でしっかりと水をきり、水がきれたら上向きにして乾燥させていきます。
このときしっかりと乾燥させることで曲げわっぱを長く使っていくことができるでしょう。

4、無塗装と漆塗りとウレタン塗装の違いは?

白木の無塗装の曲げわっぱは香りが強く、木目が美しいことに加えて殺菌効果も強いのですが、湿気に弱く傷つきやすいというデメリットもあります。
漆塗りのものは白木の無塗装のものより香りや殺菌効果は落ちますが上品な色艶で高級感を感じさせてくれます。
ウレタンで塗装されたものは洗剤で普通に洗うことができ、取り扱いが楽ということもあって重宝されています。
表面を樹脂でコーティングされているので油ものを入れても平気というメリットもあります。

5、大舘曲げわっぱを取り扱っているのは?

大舘曲げわっぱは「大舘曲げわっぱ協同組合」が管理をしています。
こちらでは大舘曲げわっぱの技術の継承や後継者の育成、観光事業、広報、展示や販売などを行っています。
毎年決まった時期にイベントなども行われていますので、HPなどで確認の上ぜひ訪れてみましょう。

大舘曲げわっぱ協同組合
住所:017-0841 秋田県大館市字大町29-1
電話:0186-49-5221
HP:http://odate-magewappa.com/
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