伝統工芸

福山琴・東京琴・金沢琴それぞれの特徴とは?

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和楽器として古くから伝わっているのが「琴」です。
全盛期よりはかなり数を減らしているものの伝統的工芸品として継承されている琴が日本にはいくつか存在しています。
ここではそれらの代表的な琴を紹介していきたいと思います。

1、福山琴とは

1-1 福山琴の歴史
福山琴は江戸時代の初期に徳川家康のいとこにあたる水野勝成が備後10万石の居城として福山に城を築いたころにはじまったとされています。
江戸時代は武士や町人の間でも芸事が盛んであり、福山藩主は水野・松平・阿部と変わっていきますが、どの藩主からも芸事は奨励されていきました。
さらに江戸時代末期になると京都で筝曲を学んだ琴の名手である葛原勾当が帰郷して備中や備後で活躍するようになると、この地域で琴はますます盛んになっていきました。
1985年には伝統的工芸品として認定されています。

1-2 福山琴の作り方と特徴
まず原木の桐選びから作業が始まります。
桐が見つかると使用するまで桐材を1年ほどかけて乾燥させていきます。
そして「甲のえぐり」です。
琴の等級を決める上でもっとも重要とされるのが甲の木目の複雑さです。
木目の複雑さ、浮き出し具合、焼き具合なども甲の条件となります。
次に「彫り」です。
琴の甲の裏面に施される彫りは単純に装飾効果だけでなく音響効果の上でも重要なものとなります。
代表的な彫り方に「麻型彫り」「子持綾杉彫り」「綾杉彫り」「簾れ目彫り」などがあります。
そのまま「焼き」「磨き」「装飾」と続き、「蒔絵」となります。
蒔絵は琴の装飾として非常にポイントとなる工程です。
漆で文様を描く、もしくは地塗りを施した上で金・銀・スズ粉等を蒔きつけていきます。
漆を使う工芸品は数多くありますが、その中でも最高峰と言われるほど高い評価を得ている技法です。
そして「金具付け」があって最後に「調整」を加えて完成です。
こうして作られた琴は華麗な外見と繊細な音が融合した工芸品となるのです。

1-3 福山琴を管理しているのは?

産地組合:
「福山邦楽器製造業協同組合」
住所:〒720-0067 広島県福山市西町2-10-1 福山商工会議所 産業振興部産業課内
電話:084-921-2349
FAX:084-911-0100
公式HP: http://www.bingo-fukuyama.jp/383.html

こちらでは様々なイベントも行われています。

・琴まつり
大勢の市民に和楽器(琴)に親しんでもらうと共に、地元小・中学生に琴演奏発表の場を提供し、生徒、児童の健全な育成と併せて、琴演奏技術の向上を図り、楽しんでもらう目的で平成6年より開催されています。

・全国小・中学生箏曲コンクール
小・中学生の情操教育と琴演奏技術の向上を図るため、北海道から九州まで、190校に930面の琴を無料で貸し出すとともに、毎年コンクールを開催しています。

・琴供養
毎年邦楽の日(6月6日)に、長年演奏会や練習の使用に耐えてきた琴の供養を福山市鞆の浦で開催されています。

2、東京琴とは

2-1 東京琴の歴史
日本の筝曲は室町時代末期に九州の久留米の善導寺の僧であった賢順が完成した「筑紫流」にはじまるとされています。
筑紫流は八橋流を経て生田流や山田流へとすすんでいきます。
江戸時代中期、江戸の山田斗養一はそれまで三味線の伴奏として使われていた琴をメインにした楽曲を作ります。
その演奏と美声で江戸の町で大人気となり「山田琴」の原型がこのときにできました。
さらに琴師である重元房吉は山田流の曲に合わせて琴を改良していきます。
琴をそれまでよりも3寸(約10cm)短い6尺(約180cm)にし、厚みも厚くして高い音響効果を得るようにしました。
そして琴爪を大きくすることで音質も改善していきます。
これが現在の「東京琴」へとつながっていきました。
東京琴は1991年に伝統的工芸品として認定されました。

2-2 東京の作り方
桐、紅木紫檀、紫檀、絹を材料として作られる東京琴は、乾燥させた桐の甲から削っていきます。
木目を出すようにゆるい曲面を作っていきます。
甲の裏は鉋で削ったのちはノミを使って綾杉文様を彫ります。
そして4本の棧木と関板を彫り込んだら表面全体を焼き上げていきます。
包みの部品(口前、四分六、柏葉、足廻り、裏穴「音穴」)を作成して甲羅に彫り込んだら接着していきます。
東京琴は重厚な音響、大きい音量に定評があり、その製造技術は現在にも受け継がれています。

2-3 東京琴を管理しているのは?
東京では江戸川区、荒川区などで東京琴の生産が行われています。
主な産地組合としては「東京邦楽器商工業協同組合」があります。

産地組合:
東京邦楽器商工業協同組合
住所: 〒132-0035 東京都江戸川区平井4-1-17 向山楽器店内
電話: 03(5836)5663
公式HP:http://www.wagakki.org/

3、金沢琴

琴の流派は関東が山田流、関西は生田流の琴が多く作られていますが、北陸の金沢でもことが作られています。
この地は武家の教養として琴が使われていたこともあって江戸時代ごろから盛んに生産されるようになりました。
明治の時代になっても金沢では琴の需要はなくなることはなく、生産はされていましたが、金沢琴は特に芸術性を求める趣が強く、現在桐の原木から一貫して琴を製造する業者はかなり減っており、技術の継承や後継者の育成が困難となっています。
金沢琴は特に蒔絵に定評があり、その蒔絵技術が特に難しいとされています。
現在では金沢市内の野田屋琴三弦店で金沢琴が作られています。

製造者:
野田屋琴三弦店
住所: 〒920-0853 金沢市本町1-8-9
電話:(076)221-2870
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