高野山「金剛峯寺」に高野山なんて山はない? 空海が聖地としたある理由

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和歌山県伊都郡高野町にある金剛峯寺は空海が開き、比叡山延暦寺とならびたいへん有名なお寺ではないでしょうか。 四季折々の姿をみせ、日本人以外にも外国の参拝客をも魅了しています。 もともと、「これが金剛峯寺だ!」という建造物を指すものはなく、『一山境内地』といって高野山全体をお寺として崇めています。 なぜ、空海は高野山を聖地にしたのか?
高野山はどうしてこんなにも人を惹きつけるのか?
今回は金剛峯寺の見所をご紹介します!

『高野山』という山はない!?

冒頭で『金剛峯寺』を指す建造物はないと述べましたが、実は『高野山』と指す山もないのです。 高野山は八峰に囲まれた地上800mの盆地のことで、117ヶ寺の寺院が密集し、学校や銀行もある”宗教都市”なのです。 そして、高野山にある『奥之院』と『壇上伽藍』が二大聖地となっていて、金剛峯寺は壇上伽藍の中にあります。 金剛峯寺は高野山真言宗の総本山です。 山内に点在する117ヶ寺は「塔頭寺院(たっちゅうじいん)」といい、金剛峯寺の小院のことです。 金剛峯寺という寺名は、空海が「金剛峯桜閣一切瑜伽瑜祇経」というお経から名前をつけました。

空海はなぜ、高野山を開いたのか?

空海は平安時代初期の宝亀5年(774年)に生まれた僧侶です。 中国で密教を学び、日本で真言密教を広めました。 そして、とっても器用で頭のよい人でもあります。 『弘法筆をえらばず』のことわざにもあるように、字がとっても上手でした。 また、サンクリット語や中国語を3ヶ月でマスターし、池や堤防、井戸などを作り、建築土木の技術を身につけました。 いま述べた以外にも、たくさん優れたエピソードがあります。 また、伝説もたくさんあり、特に有名なのが『高野山を聖地に選んだ』エピソードです。

空海は中国から日本へ帰るとき、密教を広めるにふさわしい場所を示してほしいと念じ、『三鈷杵』を投げました。 三鈷杵は密教の仏具で、体・心・言葉の働きを表しています。 日本に帰国した空海が三鈷杵を探していると、黒い犬と白い犬を引き連れた狩人に出会いました。 狩人は犬を放ち、空海に「犬についていきいなさい」と言うので、言われた通りについていくと、山の中腹に案内をしてくれました。 すると、山の神である丹生都比売大神という女神に出会い、「山々に囲まれたこの地を修行の地にすればいい」とお告げをいただいたのです。 そして、山を案内してくれた狩人は、狩場明神という神様だったと知ったのです。 さらに山を進んでいくと、投げた三鈷杵が1本の松の木にかかっているのを見つけ、空海はこの地が密教を広めるのにふさわしいと決めたのでした。

こうして空海は神様から高野山を譲り受け、弘仁7年(816年)に嵯峨天皇から高野山の土地を使う許可をいただきました。 そして、空海は土地を譲ってくれた丹生都比売大神と狩場明神を祀ることを決め、『丹生都比売神社』を作りました。境内には、空海を案内してくれた犬をモデルにした狛犬がいます。

また、三鈷杵がかかっていた松の木は『三鈷の松』と呼ばれ、金堂と御影堂の中間にあります。 この松は三葉になっていて、三鈷杵と同じ形になっていることから縁起物として持ち帰る方が多いです。 ぜひ、探してみてくださいね!

金剛峯寺には紋がふたつある!

金剛峯寺は、壇上伽藍のすぐ手前にある駐車場の前が入口となっています。 境内に入ると正門があり、出入り口が2つあります。 昔は、正面の出入り口は天皇や皇族、高野山の重職だけが出入りでき、一般の僧侶は右側の出入り口を利用していました。

また、門にある提灯には2つの紋が描かれています。 ひとつはさきほどご紹介した、空海に高野山を譲り受けた丹生都比売大神が祀られている丹生都比売神社の紋。もうひとつは、豊臣秀吉が母の菩薩を祀るために建てた青巌寺の紋です。 青巌寺は廃寺になった興山寺とともに、金剛峯寺の前身であるといわれています。

門を通り、すぐ正面にある建物の屋根は檜の皮を何枚も重ねた「檜皮葺」になっています。 その上には「天水桶」という桶が置かれていて、普段は雨水を溜めています。そして、火事が起きたときに屋根が燃えないように桶の水を撒いて燃えうつりを防ぐのです。 高野山はたびたび火災に遭ってきたので、こういった工夫がされているのです。

阿字観道場で瞑想してみよう!

境内には「阿字観道場」という道場があり、阿字観を体験できます。 阿字観とは、真言密教の瞑想法です。

正面にはご本尊の梵字があり、『阿』と書いています。これは大日如来を表していて、阿の字の前で瞑想すれば、仏さまと大自然と自分が一体であることを体験できるのです。

瞑想のやり方は、

1 円形の小さな座蒲団に腰かけ、足を組みます。 両足を組むのは『結跏趺坐』といい、片足を組むのは『半結跏趺坐』といい、どちらかで足を組みます。 無理をせず、楽な格好で組んでくださいね。

2 手は左手の手のひらを上に向け、その下に手のひらを上にむけた右手を重ねます。両手の親指の先端を合わせ、『法界定印』のかたちにします。
3 目は閉じているような開けているような程度で、半眼状態にします。

4 高野山の霊気をいただいているイメージで、鼻から息を吸い込みます。お腹が息で満たされたら、息を止めます。そして、お腹の底から「あ~」と声を出しながら、息を吐いていきます。

心を落ち着かすことができ、ゆったりとした時間を過ごせるので、毎日忙しくて張りつめる気分の方にはもってこいの体験です! ぜひ、参拝したときには参加してみてくださいね!

○参加費 1000円(別途内拝料500円をお支払いください)
※毎週金・土・日・月の週4日開催。1日4回開催(所要時間は1時間)
各回定員20名で、予約は不可。先着順となっているので、お早めにお越しくださいね!

高野山にきたら宿坊に泊まってみよう!

高野山といえば、空海・高野豆腐・根本大塔などたくさんのキーワードが思い浮かびますが、「宿坊」も忘れてはいけません!

実は、117ヶ寺あるうちの52ヶ所が宿坊寺院になっており、高野山をたっぷり楽しめるのです。 宿泊料はお寺によって違いますが、精進料理だけを楽しめる宿坊もありますので『宿坊協会』に問い合わせてみましょう。

○宿坊協会
和歌山県伊都郡高野町高野山600番地
TEL 0736ー56ー2616
http://www.shukubo.net/contents/

宿坊の中には文化財の建物や秘宝などがあるところも多く、庭園の手入れがしっかりとしているところばかりです。また、部屋も整っており、旅館のような佇まいになっています。 そして、宿坊に泊まる醍醐味といえばやはり、精進料理や僧侶の勤行(仏前でお経を唱えること)。 写経体験ができる宿坊もあるので、どこにしようか迷ってしまうくらいです。 また、勤行は強制参加ではありませんが、宿坊ならではの体験ですのでぜひ参加してみてくださいね!

【番外編】高野山の守護神・立里荒神社へお参りしよう!

奈良県吉野郡野迫川村に『立里荒神社』があります。 高野山の南東10kmほどの方向にある、標高1260mの荒神岳に鎮座しています。 参道は長く急な階段が続き、息が上がってしまいますが、空気もきれいなので休みながら上っていくほうがいいでしょう。

ご祭神は神道の神様で、火産霊神(火の神様)と誉田別命(武運の神様)です。 立里荒神社は高野山からみて鬼門の位置に鎮座しています。 空海は高野山を開く前に訪れ、板に三宝荒神という神様を描き、祀りました。そして、壇上の鬼門にも荒神を勧請し、伽藍繁栄と密教の守護を祈念したのです。 その後、伽藍の造営はなんのトラブルもなく終了し、空海は毎月、立里荒神社に歩いて参拝したといわれています。

立里荒神社は山の奥深い場所にありますが、雲海景勝地として知られ、雲海から昇る日の出を見に多くの参拝者が訪れます。 また、『日本三大荒神』のひとつだと知られています。 立里荒神社へは、南海高野線高野山駅から予約制の南海りんかいバスで行くことができます。(所要時間60分)

ぜひ、高野山へ行った際は足を伸ばして参拝してみてくださいね!

○立里荒神社
〒648‐0305
奈良県吉野郡野迫川村北股

いかがでしたか。
金剛峯寺はたくさんの魅力があり、高野山全体が聖地といわれる理由を感じることができます。 空海は神様から譲り受けたこの地を崇敬し、密教を広め、いつまでも平安を祈り続けています。 訪ればきっと、空海が優しく出迎えてくれることでしょう。 ぜひ、金剛峯寺へお参りしてくださいね!

■所在地
和歌山県伊都郡高野町高野132

■拝観時間
(通年)8:30~17:00(受付は16:30まで)

■拝観料
大人500円
小学生200円
未就学児無料
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