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一致団結!グループと化した夜叉神と仕事仲間羅刹

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一致団結!グループと化した夜叉神と仕事仲間羅刹

続きまして、一まとめにされている夜叉神をご紹介します。

十六善神

ちなみに十六善神とは、般若経を守護する夜叉神です。四天王並びに十二神将を指します。これに深沙大将と三蔵様を足した図が「十六善神図」というわけです。メンバーは以下の通り。(但し、『般若守護十六善神王形体』という資料より。経典や資料によって微妙に異なる場合があります。)

【提頭?宅善神】「だいとらたくぜんじん」。四天王の持国天と同一視されます。

【毘盧勒叉善神】「びるろくしゃぜんじん」。増長天と同一視。

【吠室羅摩拏善神】「うえしまらぬぜんじん」。多聞天と同一視。深沙大将と同一神ですけど、一緒に描かれることもあるようです。

【毘盧博叉善神】「びるばくしゃぜんじん」。広目天と同一視。広目天は筆を持っていますが、こちらも同様に筆を携帯。

【摧伏毒害善神】「さいふくどくがいぜんじん」。

【増益善神】「ぞうやくぜんじん」。4本腕。

【歓喜善神】「かんきぜんじん」。

【除一切障難善神】「じょいっさいしょうなんぜんじん」。六本腕で槍を持つ他、経典や舎利塔(お釈迦様の遺骨の入った壺)などを持ちます。

【抜除罪垢善神】「ばつじょざいくぜんじん」。

【能忍善神】「のうにんぜんじん」。

【離一切恐畏善神】「りいっさいふいぜんじん」。

【救護一切善神】「くごいっさいぜんじん」。

【摂伏諸魔善神】「しょうふくしょまぜんじん」。

【能救諸有善神】「のうくしょうぜんじん」。

【獅子威猛善神】「ししいもうぜんじん」。4本腕。

【勇猛心地善神】「ゆうもうしんちぜんじん」。

毘沙門様の部下、八大夜叉大将

毘沙門天に付き従う眷属にもまた、夜叉はいます。その数、およそ5000あまり(7000という説もあります)。その中でも精鋭部隊的な存在が八大夜叉王と呼ばれる存在。

【宝賢夜叉】(ほうけんやしゃ)
【満顕夜叉】(まんけんやしゃ)
【衆徳夜叉】(しゅうとくやしゃ)
【應念夜叉】(おうねんやしゃ)
【大満夜叉】(だいまんやしゃ)
【密厳夜叉】(みつごんやしゃ)
【散支夜叉】(さんしやしゃ)
【無比力夜叉】(むひりきやしゃ)

の八名ですが、こちらも経典により名前は異なります。

無比力夜叉は別名大元帥明王(密教では大元帥明王)ともいい、インドの神話では「森林の主」を意味するアータヴァカの名で呼ばれていました。

しかしインド時代は森林の爽やかなイメージとは程遠い非常に恐ろしい性質の持ち主。実を言うと、元は人間の武将でした。ところが無念の死を遂げる直前にやたら恨みがましい情念を抱き、「誰もかれも食ってやる」とどす黒い野望を持って赤ん坊をも食らう悪鬼神となったとか。これまたお釈迦様(密教では大日如来)により改心し、今に至ります。散支夜叉の方は鬼子母神の夫とされます。インド時代から毘沙門天、クベーラの部下として仕え、槍を武器とし財宝の神とされているようです。インド名はパーンチカ。散支夜叉、鬼子母神共に二十八部衆の一員でもあり、そこでは散支夜叉は「散脂夜叉」という名前で、「二十八部衆の王」ということになっています。

仁王様のモデル?バラモン教の門番夜叉

色々なお寺がありますが、大き目のお寺や有名なお寺ともなると、仁王様(金剛力士)がいらっしゃいますね。お堂の中にいることもたまーにありますが、金剛力士も実は夜叉神。そして「二体いて、門番の役目をしている」という意味で金剛力士のモデルともいえる夜叉神が、バラモン教にいました。正式な名前までは分かりませんが、バラモン教のお寺の門で一対となり「修行の邪魔をするな!」とばかりに安置されていたそうです。元は一人だったという説もある金剛力士ですが、バラモン教の門番がルーツ、という見方も面白いかもしれませんね。

仕事仲間は羅刹

仏教関係で「羅刹(らせつ)」という天部もいます。
これも夜叉神、と思いきや「ルーツが同じで元鬼神、もしくは悪魔」というだけで全くの別物。インド名はラークシャサ。女性型だとラークシャシーと呼ばれ羅刹女と訳されます。一説には鬼子母神も羅刹女とのこと。男性は醜い、女性は美しいという、何だかあんまりな特徴を持ちます。仏教に取り入れられる前から墓を荒らして死肉やお供え物を食らうなど「悪魔」的な側面が強く、地獄で亡者を苛み戒める「獄卒」としての役割が強いのが羅刹。夜叉よりもずっと「鬼」の要素は強いかもしれませんが。またの名を速疾鬼。めちゃくちゃ足が速いことからこの名前がついたわけです。ある時仏舎利(お釈迦様の遺骨)を盗み出し「仏舎利ゲットだヒャッホウ!」と浮かれつつ、猛スピードで逃走。「韋駄天走り」で知られる韋駄天様との、超高速追いかけっこの果て捕まったという俗説を遺すほどの俊足が羅刹の特徴の一つです。仏教入りしてからも羅刹は鬼扱いを受けていますが、「羅刹天」とも呼ばれるれっきとした護法神であり、夜叉共々毘沙門天に仕え、北方を守護します。

まとめ

元は善悪両面あったのに後々の人間の都合で「鬼」にさせられた夜叉の皆さん。しかし、仏教入りしたおかげで再び善の側に戻ることができたのはよかったですね。冒頭に述べた星新一氏も、あらゆる雑事から解放されて読んだSF小説『火星年代記』(ブラッドベリ)を読んで感銘を受け作品を書き始めたと言います。同じく小説家の村上春樹氏も、ジャズ喫茶の店を開いたり主夫をしたりの生活の中、それまで思いつきもしなかった「小説を書く」行為を思い付き、デビューしたとか。無論、星氏も村上氏もそれまでの本や映画、人生経験の積み重ねがあったからこそ小説家として大成できたわけですが、「何でもやってみようか」という気になってきませんか?鬼、悪者扱いされながらももがいた挙げ句「天部」として祀られるようになった夜叉神たちのように、人生ががらりと変わることも、あるかもしれませんよ。
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