嵐山「天龍寺」室町時代の二大スターにより開かれた世界文化遺産の絶景とは

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京都の嵐山と言えば、渡月橋や竹林が有名ですが、その中間に位置する天龍寺は「古都京都の文化財」17ヵ所のひとつとして金閣寺や銀閣寺、清水寺などとともに世界文化遺産として登録されています。京福電鉄嵐山駅を下り立てばすぐというアクセスの良よさです。天龍寺の魅力は、庭園の美しさにありました。

シンボルは達磨です

天龍寺のシンボルは、なんと禅宗の開祖である達磨大師です。庫裏(くりー台所兼寺務所)の入り口を過ぎるといきなりこの大きな絵が迎えてくれます。
天龍寺のハイライトにいきなり入る前に、まずは多くの参拝客で賑わう天龍寺の現在の様子から見ていきましょう。
臨済宗天龍寺派の大本山である天龍寺が現在の寺観に至ったのは多宝殿の奥殿などが完成した1935年(昭和10年)です。それまではたび重なる火災や幕末の蛤御門の変などで焼失を繰り返しましたが、その後、法堂(はっとうー僧侶の説法場所)、大方丈(おおほうじょうー僧侶の居室)、庫裏、小方丈(しょうほうじょうー書院)多宝殿、多宝殿奥殿、廊下と順次建てられていきました。法堂の天井には、特別公開のときだけ見ることができる加山又造画伯作の「雲龍図」が描かれています。
平成になって描かれたこの巨大な龍は、直径9mの円相(円を一筆で描いたもの)のなかにあり、どこから見ても龍がにらんでいるように見えることから「八方にらみの龍」と呼ばれています。
とても迫力があります。天龍寺は紅葉の名所で11月中旬が見ごろと言われ、その時期には早朝参拝もあります。また、紅葉だけでなく桜の名所でもあり、ソメイヨシノ・枝垂桜・八重桜・山桜など約200本の桜の開花時期にはたくさんの参拝客を楽しませてくれます。

天龍寺が創建されたのは禅僧・夢窓疎石(むそうそせき)の力によるところが大きいです!

天龍寺は、室町時代は京都五山第一位に位置付けられたとても格式のあるお寺です。
1339年(延元4年)に足利尊氏が敵であった後醍醐天皇の菩提を弔うために創建したものですが、実は尊氏が全幅の信頼を置いていた夢窓疎石の進言があったからだと言われています。この夢窓疎石という人物、この時代に活躍した大変な人物で、この天龍寺の造営費用を捻出するのに貢献しただけではなく、美しい庭園の設計も手掛けていたのです。中国の元との貿易で活躍した「天竜寺船」は、まさに夢窓疎石の進言で造られた貿易船で造営費用のみならず莫大な利益をもたらしました。
天龍寺は8回の大火に見舞われて当時の面影はありませんが、夢窓疎石が造った曹源池庭園(そうげんちていえん)は創建当時のままの美しさを残しています。夢窓疎石はほかにも同じく世界遺産である苔寺で有名な西芳寺や鎌倉の瑞泉寺、岐阜の虎渓山永保寺など数々の庭園を手掛けて、この時代にたぐいまれな才能を発揮しています。夢窓国師、正覚国師、大円国師など天皇から7つの国師を授与され、「七朝帝師(しちちょうていし)」とも呼ばれています。

天龍寺のハイライトは庭園にあり!曹源池庭園は日本最古の回遊式庭園です

天龍寺の一番の見どころは、天龍寺の境内の半分以上を占める曹源池庭園です。庭園には四季折々の花が咲き誇り訪れた人を楽しませてくれます。
特にこの庭園から眺める紅葉は表現のしようがないほどとても美しいものです。
日本で初めて史跡(1923年/大正12年)・特別名勝(1955年/昭和30年)に文化財指定されたことでもこの庭園の価値、美しさが分かることでしょう。南側にある嵐山と西側にある亀山を借景とした曹源池庭園は、回遊して楽しんでもいいのですが、大方丈や小方丈といった建物のなかから座って見ることを考えられて造られた庭園と言われています。曹源池の名前の由来は、夢窓疎石が池のなかから拾い上げた石碑に「曹源一滴(曹渓の一滴水から流れ出たもの、禅の根本のこと)」と刻まれていたことからきています。
曹源池の中央には「登竜門」の故事をならったと言われる龍門爆(枯滝)があり、石組みで龍が天に登るのを表現していてとても見どころがあります。

早朝参拝はホントにお得です!

天龍寺の紅葉が色づく季節になると、早朝参拝ができる期間がありますのでぜひ利用しましょう。京都にはライトアップされた紅葉が見れるお寺はたくさんありますが、天龍寺の庭園では禅宗の修行僧による「夜坐」と呼ばれる修業があるので、一般の方には開放されていません。その代りに、朝7時半からという早朝参拝があるのです。京都市内の西側に位置する嵐山は盆地なので、京都市内より早めに日が差してきます。昼間には決してお目に掛かれない、この朝もやのなかで見る曹源池庭園の幻想的な美しさもまた格別です。眠いのを我慢して早起きする価値は十分ありますよ。

いかがでしたか

世界文化遺産として登録された天龍寺は、嵐山方面を観光するときは見逃せませんね。かつて天龍寺が全盛を極めたころは、嵐山全体が境内であったというとてつもない広さを誇っていました。それは、夢窓国師が天龍寺十境(名勝十景)として渡月橋・曹源池・龍門亭・普明閣などを定め、それぞれに詩を作ったことでもご理解いただけるでしょう。夢窓国師が十境のひとつとして造り上げた美しい曹源池庭園は、しっかりと記憶のアルバムに焼き付けておきたい場所ですね。

嵐山と亀山を借景とした庭園の眺めが絶景です!世界遺産の天龍寺!

天龍寺は京都市右京区嵯峨に位置し、世界遺産にも登録されているお寺です。正式名称は霊亀山天龍資聖禅寺で、臨済宗天龍寺派の大本山です。夢窓国師により造られた庭園は国の史跡・特別名勝第一号に指定され、1994年(平成6年)には世界文化遺産に登録されています。
天龍寺の佇む嵐山一帯は吉野とならぶ桜の名所として知られており、ここ天龍寺においても春になると様々な種類の桜が咲き乱れ、その色香を競い合います、特に、曹源池(そうげんち)の奥まったところにある多宝殿の周囲にある桜はとりわけ見事です。また、北門を抜けると上の写真のような、美しい竹林道を歩くことができます。秋の紅葉時の竹林道は美しい景色でいっぱいです。そんな天龍寺を、今回はご紹介したいと思います!

歴史の寺、天龍寺

天龍寺は1339年(延元4年)、吉野で亡くなった後醍醐天皇の菩提を弔うために足利尊氏が夢窓国師を開山として創建したものだということはお伝えしましたが、後醍醐天皇はこの地で幼少期を過ごしたとされています。夢窓国師が堂塔建立の資金調達のために中国と元との貿易を進言し七堂伽藍を整えたあと、門流は興隆し天龍寺は京都五山第一位の寺格を誇るようになりました。

天龍寺の見どころ

嵐山と亀山を借景とする曹源池庭園や、雲竜図が保管されている法堂など、天龍寺の見どころをひとつひとつご紹介していきたいと思います!

・法堂
勅使門から放生池を超えてまっすぐに進んで、大方丈の門外の手前にあるのが法堂です。法堂は禅宗伽藍のひとで、住職が仏法を説く空間です。法堂の内部には禅宗寺院の本尊である釈迦如来像とその脇には文殊・普賢菩薩像が安置され、さらに夢窓国師像と足利尊氏像も安置されています。天井には直径9mの円形枠いっぱいに、加山又造画伯の墨色のみずみずしい雲竜図が躍動感あふれる様子で描かれています。

・雲龍図
法堂の天井には、天龍寺開山夢窓国師650周年を記念して、現代日本画の巨匠加山又造画伯によって描かれた新しい雲龍図があります。天井に杉板159枚を張り合わせ、漆と白土で作った下地の上に2本の角と手足に5本の爪を持った八方睨みの龍が迫力満点に描かれています。
ちなみに、法堂に火難除けの龍神を描くことで、伽藍全体の火災を防ぐ意味があると言われています。
・曹源池
特別名勝で世界遺産でもある天龍寺庭園は、夢窓国師の発意に基づいて作庭されたものです。国師は天龍寺伽藍の内外の景物のなかから優れた十景地を選び「天龍寺十境」を定めました。そのうちのひとつが「曹源池」です。嵐山と亀山を借景としたその眺めは絶景であり、滝口の龍門岩や岩島・石橋などは躍動感に溢れながら、かつ繊細な風情を失っておりません。方丈からの眺めを意識した造りになっており、春夏秋冬それぞれに趣は尽きません。

※ちなみに、曹源池の謂れは国師の詩文「曹源涸れず直ちに今に至る 一滴流通して広くかつ深し」に由来しているとされており、そこには「天龍寺以前にあった嵯峨天皇皇后の禅林・檀林寺が禅宗の最初の一滴であり、それが天龍寺となって広く伝えられていくように……」という意味が込められていると言われています。

・大方丈
法堂の奥に塀に囲まれて東に面して建っているのが大方丈です。西側は曹源池に面しており、縁側には多くの観光客が座って曹源池を眺めています。方丈は禅院における主要伽藍のひとつであり、特別名勝天龍寺庭園曹源池を観賞するには絶好の場所となっています。

・多宝殿
後醍醐天皇像を安置しているのが多宝殿です。屋根は銅板葺で、半蔀と呼ばれる建具を取り付けるなど寝殿造を思わせます。春になると前庭には見事なしだれ桜が満開となり、その眺めは絶景です。
・中門
総門の内側にあるのが天龍寺で最も古い建物である中門です。切妻造、本瓦葺の屋根の勾配はかなり緩やかでいかにも室町時代のものらしく、江戸時代の寺院の屋根にはない大らかさを保っています。

・勅使門
伽藍の東の端、総門を入ってすぐのところにあるのが勅使門です。規模は大きく、切妻造で、桃山時代建築の豪放さを見せています。

いかがでしたでしょうか?春夏秋冬、それぞれ別の角度から絶景を楽しめます。春は多宝殿の周りに咲き誇る桜を楽しみ、夏は曹源池庭園より書院を眺め、秋は曹源池より嵐山を眺め、冬は大方丈から曹源池庭園を眺めるというのがオススメです!季節によって風景が変わり、四季のうつろいを肌で感じ取ることができる天龍寺、みなさん是非訪れてみてくださいね!

<基本料金・アクセス>
住所:〒616-8385 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
拝観時間:3月21日〜10月20日 8:30〜17:30
10月21日〜3月20日 8:30〜17:00
庭園拝観料:大人500円、小中高生300円
諸堂参拝(大方丈・書院・多宝殿):上記に100円追加

法堂「雲竜図」特別公開:土日祝日のみで、3月21日〜10月20日 9:00〜17:00
10月21日〜3月20日 9:00〜16:00

アクセス:
市バス28系統で「嵐山天龍寺前」あるいは京都バス71、72、74系統で「京福嵐山駅前」下車、徒歩1分。
阪急「嵐山」駅から徒歩15分(もしくはレンタサイクルがオススメです)
京福電鉄「嵐山」駅から徒歩1分(京福電鉄のレンタサイクルには「駅の足湯」無料券がもれなくついてきます)

ホームページURL
http://www.tenryuji.com/

室町時代の二大スターにより開かれた天龍寺

嵯峨嵐山の美しさを楽しませてくれる天龍寺。昔は嵐山全体が境内というとてつもない広さを誇っていました。「古都京都の文化財」17ヵ所の一つとして1994年(平成6年)に世界文化遺産として登録されている天龍寺は室町時代の二大スターにより開かれました。

開基は足利尊氏です

禅宗では、お寺を創建した人を開基といいいます。
1339年(延元4年)に天龍寺を創建した人はときの権力者である室町時代の二大スターのひとり、足利尊氏です。足利尊氏は、鎌倉時代後期から南北朝時代に活躍した武将で初代の征夷大将軍です。
また、足利将軍家15代、240年にわたる室町幕府を創始した大人物です。南北朝時代から室町時代については教科書でも記述が少なく、敵方であった南朝の後醍醐天皇の忠臣であった楠木正成の人気に押されて影が薄い感がある足利尊氏ですが、生まれつき慈悲深く部下にとても慕われた武将だったようです。後醍醐天皇の崩御後にその菩提を弔うために創建したのが天龍寺であり、それを進言したのが次に登場する二大スターのもうひとり、夢窓疎石なのです。
鎌倉時代末期から南北朝時代の軍記物語である「梅松論」のなかで夢窓疎石は足利尊氏について、勇猛果敢でありながら敵への寛容さもあり、部下に対して気前がよかったと評しています。
「梅松論」は足利氏寄りに書かれていると言われていますので、その真実は明らかではありませんが、激動の南北朝時代にあって勇敢で部下からの信頼がなければリーダーにはなれなかったでしょう。

開山は夢窓疎石(むそうそせき)です

禅宗では、創建されたお寺の初代住職になった僧侶のことを開山と言います。
天龍寺の開山は夢窓疎石です。この夢窓疎石という人はこの時代に才能を発揮したスーパースターです。お寺好きの人はこの人の名前を一度は目にしたことがあるでしょう。
甲斐武田氏の菩提寺で有名な恵林寺、多治見にある虎渓山永保寺、京都にある苔寺で有名な世界遺産西芳寺などを開山しました。造園家として手掛けた庭園も鎌倉の瑞泉寺・西芳寺・永保寺・恵林寺・天龍寺と名勝に指定されたものばかりで、その才能のすごさが分かります。
また、夢窓疎石は、生前に夢窓国師、正覚(しょうがく)国師、心宗(しんしゅう)国師を、没後に普済(ふさい)国師、玄猷(げんゆう)国師、仏統国師、大円国師と7つの国師を天皇から賜った七朝帝師(しちちょうていし)と呼ばれています。

夢窓疎石という名前は、夢のなかで中国の疎山(そざん)と石頭(せきとう)を訪れた際に出会った僧から中国の禅宗の祖である達磨大師の像を預かったことから、禅宗との縁を感じて疎山と石頭から一文字ずつとったということです。ちなみに、天龍寺では庫裏の入り口でいきなり達磨大師が出迎えてくれます。

天龍寺船(てんりゅうじぶね)の由来

教科書でおなじみの天龍寺船は、当時は造天龍寺宋船(ぞうてんりゅうじそうせん)と呼ばれていました。この天龍寺船が造られた背景には天龍寺の造営資金の調達がありました。天龍寺の造営に当たっては、足利尊氏や光厳上皇などが荘園を寄進するなどして資金集めをしますがそれでも足りません。
そこで、足利尊氏の実弟である足利直義(ただよし)と夢窓疎石が相談して、元寇以来途絶えていた元との貿易に寄る利益を造営資金に充てることを計画し、ものの見事に成功したのです。天龍寺船は莫大な利益をもたらして、1343年(興国4年)に天龍寺は竣工しました。

天龍寺十境とは

現在の嵯峨嵐山の名所で真っ先に上がるのは渡月橋ですね。
全盛時の天龍寺は、渡月橋だけでなく北側の亀山公園を含む嵐山全体が境内でした。1346年(興国7年)に夢窓疎石が定めたとされる天龍寺十境は、天龍寺境内にある普明閣・絶唱谿・霊庇廟・曹源池・拈華嶺・渡月橋・三級巖・万松洞・龍門亭・亀頂塔の10ヵ所の名勝のことです。夢窓疎石は十境それぞれに美しい詩を作っています。龍門亭は、2000年に開山夢窓国師650年遠諱記念事業として曹源池の南側に再現されています。なお、昔の渡月橋は現在よりももっと上流にありました。

桜の名所であり、紅葉の名所でもある天龍寺

天龍寺の桜は、例年ならば4月上旬が見頃です。境内ではソメイヨシノ、枝垂桜など約200本が咲き誇りなかでも多宝殿の前の枝垂桜は有名です。
紅葉は11月中旬が見頃で曹源池庭園(そうげんちていえん)から眺める美しさは格別です。

早朝参拝で堪能できる天龍寺庭園の美しさ

夢窓疎石が造り創建当時の美しさをそのまま残している天龍寺の曹源池庭園は、嵐山や亀山を借景として取り入れていて、回遊式庭園としては最古と言われています。天龍寺の境内の半分以上を占める約1200坪の広さを誇り四季折々の美しさが楽しめる庭園は、訪れる人を魅了せずにはいられません。なかでも紅葉が色付く季節の美しさは秀逸です。この季節、朝7時半からの早朝参拝の機会を逃さないようにしましょう。この時期の早起きはつらいですが、朝もやのなかでみる庭園の美しさは昼間には味わえないものです。

現在は、臨済宗天龍寺派の大本山で日本の名刹のひとつである天龍寺は、嵯峨嵐山の人気とアクセスのよさもあり毎年たくさんの方が訪れます。初めて訪れる方も再訪される方も、室町時代の二大スターである足利尊氏と夢窓疎石に思いをはせて曹源池庭園を回遊してください。

達磨さんから雲竜図がのぞける凝った演出も

天龍寺のシンボルと言えば、達磨大師の絵と雲竜図。禅宗の祖である達磨と雲龍図は天龍寺の二大シンボルと言っても過言ではありません。この2つを同時に楽しめる仕掛けが施されていました。
と言っても、庫裡の達磨図と本物の雲竜図ではありません。達磨大師の絵は達磨大師の絵で、雲龍図は雲龍図でそれぞれのよさを堪能しましょう。
開祖の達磨さんが500円で購入できる達磨の御守り。ストラップとしても使えます。傾けると目玉が飛び出るユーモラスな御守りです。雲龍図は、なんと頭に空いた穴からのぞくというからくりでした。達磨さんのなかに龍を置き、その姿を拝むという驚きの発想です。
御守りなのでご利益という特典まであるので、天竜寺を訪れた際は是非ご購入ください。
この御守りのご利益は、目が飛び出ることから「素晴らしい芽(目)が出る」「運が開ける」です。ユニークながら、ちゃんとご利益もありますし、ミニ雲龍図も見られる一粒で三度おいしく、有難い御守りです。

映画のロケ地になるほど美しい天龍寺

庭園だけでなく、建物の風格も魅力的な天龍寺ですが、一時期は参拝客が来ず、財政難に陥ったことがあります。金策として、映画のロケ地としての場を提供していました。
今では撮影の許可は下りませんが、白黒の活動写真と呼ばれていた明治の頃から、銀幕を通してその美しさで人々を魅了してきたのです。
特に大手映画会社の日活も、ほぼ毎年冬に『忠臣蔵』の撮影を行っていたとされています。それも、討ち入りという見せ場も見せ場、最大のクライマックスシーンの撮影です。
寺院で仇討の場面を撮るというのは少々不謹慎ではありますが、武家屋敷にも似た重厚な造りが映画のロケ地として求められていました。
ところが、時代が変わって第二次大戦期になると、事情が変わってきました。神国日本を謳い、戦意高揚を掲げるようになった日本では、寺院よりも日本古来の神様を祭る神社へと関心を移していきます。
出征の際も神社に祈願、戦没者の霊も寺院ではなく靖国神社に祀られることを望むようになったのです。
そこで寺院では、撮影の申請を天龍寺側がしたとされています。
主に稲垣浩監督の『柳生武芸帖』や伊藤大輔監督の『大岡政談完結篇』が有名です。
今ではロケ地にならずとも、四季折々の美を見せてくれる庭園や、厳格ながら堅苦しいばかりではない建物などが参拝者を呼んでいます。

食べることも修行の一環・直営の精進料理店

禅宗では日常生活のあらゆることが修行と言われます。食べることも修行です。眠ることだって修行になります。滝に打たれたり、棒で叩かれたりするばかりが仏道の修行ではありません。
食べることにはじまる生活すべてが修行というのは、悟りを得るにあたり、何よりも大事な、心を整理するための準備なのです。そのためには、まず目に見える生活を整理整頓し、きちんと行おうという考えになります。
外側がきれいになるよう心掛ければ、いつしか心も悟るのにふさわしい方向へと整えられる、それが禅の修行の根幹にある考えです。
寺院の食事は精進料理と呼ばれるものが有名ですね。野菜料理が多いようなイメージですが、これは単に僧侶が肉食を禁じられているだけではないのです。
野菜には収穫時期というものがあります。すべては移ろうとの諸行無常が当たり前の仏教において、四季によって変わる旬の食べ物はまさに日常生活のなかで変化を感じるもの。こうしたところから、徐々に悟りへの道を開いていくのでしょう。
精進料理が食べられるお店がありました。それも天龍寺直営のお店です。名前は「篩月(しげつ)」。
営業時間は午前11時〜午後2時までと短めですが、味やボリュームは中々に満足度が大きいです。定休日はありません。
料理はと言えば、いずれもどこか高級な印象で、精進料理という非日常性があります。
日常のなかにこそ修行がある、というのが禅宗の基本ですが、ときにはこうした非日常的ななかから悟りのヒント、仏の道について考えることもあるでしょう。
お坊さんたちは日々何を想っているのだろうか。そんなことを考えながら味わうのも一興です。

天井画にも負けない魅力・ふすま龍

八方にらみという仕掛けも加わって迫力満点の天井画の雲龍図ですが、負けず劣らずの迫力を持った龍の絵はまだありました。
それが、大方丈という建物の襖絵です。曽我蕭白(そが・しょうはく)という絵師による作ですが、本物はボストン美術館にあります。天龍寺のものは模造品ですが、本物に劣らぬ迫力です。
白と黒のメリハリがはっきりしており、龍や絵自体の大きさとも相まって存在感は抜群。白地のふすまにくっきりと浮かぶ龍の姿はまさに圧巻のひと言です。どこから見ても目が合う天井画とは違い、見る者と目線が合うことはありません。
見ようによっては丸い目と口元がかわいらしくもあり、鋭い牙や爪を持ちながらも親近感さえ湧いてくるのが不思議な絵です。
天井画の雲龍図が八方にらみという形で存在感と実在感の錯覚をもたらすのなら、この襖絵の雲龍図がもたらすのは、ただただ龍そのものが持つ迫力とユーモラスな風貌でしょう。龍は架空の存在ですが、仏教においては煩悩或いは偉大なる神とされます。神という遠くて尊い存在でいながら、煩悩の辛抱という近さをもあわせ持つ。迫力と愛くるしさを持った襖絵と、天井にいながらどこから見ても目が合う天井の雲龍図は2つの側面を表しているのかも知れません。

天皇と将軍がバックについた京都五山第一位

お寺にも格が存在します。通称は寺格。臨済宗において、五山と呼ばれる寺格が作られました。よく「偉いお寺とそうでないお寺」と解釈されますが、実際には権力者の好みで選ばれるので、「下の方だから大したお寺じゃないな」と決めつけるのは早計というもの。
下位に制定されていても立派なお寺は多いです。
天龍寺は京都五山と呼ばれる寺格の第一位に相当します。これは、京都五山のなかでもトップ、ということです。
もちろん天龍寺自体が素晴らしいわけですが、ときの権力者がバックに付いていました。
もともとは足利尊氏がかつて敵対関係にあった後醍醐天皇を弔うために建てられたのですが、造営資金調達のため、元との貿易を再開。この貿易に使われた船が天龍寺船です。ちなみに、寺を建てたり天龍寺船で貿易をしようと言ったのは夢窓疎石でした。
当時頻発していた海賊から船を守るなどしたこの貿易は成功し、天龍寺は完成しました。当初は年号から名前を取る予定でしたが、尊氏の弟が「何か龍が舞う夢を見た」ということで、天龍寺の名前になっています。

当初は五山二位からの出発でした。1345年(興国6年)、光厳上皇並びに光明天皇が落慶供養に行幸してくる予定がありましたが、延暦寺の僧侶がこれに嫉妬。寺を破却しろと無茶ぶりをしてきます。上皇と天皇は翌日に行幸をし、疎石の話を聞くのでした。
その後天龍寺は朝廷からあらゆるものを下賜されており、室町幕府からも「ずっと天龍寺に帰依するからね」と誓いを建てられています。その後一位の座につきました。

≪天龍寺に来たら訪れたい≫古美術満載・ジーズギャラリー

京都に来たなら、古風なものに触れてみたい。そんな気持ちにもなるでしょう。庭の美しさで知られる天龍寺を参拝した後は、G’sGallary(ジーズギャラリー)で余韻を楽しむことをオススメします。
名前こそ洋風ですが、天龍寺から100mしか離れていないこの場所は、古美術好きな方にはたまらないスポットです。周囲を自然に囲まれており、天龍寺の余韻を味わいながら古美術を堪能できます。
実用的なものから飾りまで、日本人の心をくすぐる和のデザインは、連綿と受け継がれてきた伝統です。移ろいゆく、それが仏教の教えですが、変わらない物もあります。美を愛する心や日本人独自のセンスです。
古臭いなどと言わず、足を運んでみてください。懐かしい心持になるはずです。

所在地:〒616-8385
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場松45-25

伝統の技を体験!嵯峩螺細 野村

伝統の古美術に触れて、自分でもこの技を体験したいとの気持ちがわいたら嵯峨螺細・野村へどうぞ。
ここでは螺細(らでん)と呼ばれる工芸品を扱っています。どういうものかと言えば、貝殻の内側に真珠に似た光を持つ漆を張り付けたものです。その美しさたるや、ほかの漆や宝石とはまた違ったものがあり、もとが貝殻という点もあって、自然の美ゆえの独自の輝きを見せくれます。
嵯峨螺細・野村では受け継がれてきた螺鈿の技術を使い、機械を使うことなく心安らぐ商品を作り続けてきました。
伝統工芸ではありますが、ネックレスやピアスなどのアクセサリーもあります。そのデザイン性の高さや美しさは、現代人にも十分通用するものです。そして、職人の方々が大事にしているホッとさせる要素を持ち合わせた商品が目白押し。
ちょっとお値段は張りますが、奮発するなら心の落ち着く伝統工芸品がいいでしょう。
この嵯峨螺細・野村では、買い物をするだけでなく体験工房で伝統の技を体験することもできます。美しい伝統の技を、教えられながら行い、貴重な時間を過ごすこととなるでしょう。
作るものはお盆かペアのコースターです。どちらも、黒地に映える色彩が華やかであり、しっとりとしています。

所在地:〒616-8385
京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町26
営業時間:9:00〜18:00
定休日:なし

音色に心癒されて・京都嵐山オルゴール博物館

距離にして、天龍寺から400mの所に、ちょっとレトロな洋風の建物が見えるはずです。そこが、京都嵐山オルゴール博物館。
その名の通り、ありとあらゆるオルゴールが展示されています。なかには人形が演奏をするといった凝ったものもあり、音色に心癒されるだけではなく、見た目にも楽しめるオルゴールがたくさんあります。目からうろこが落ちるのは確実です。
そして、見て楽しむ博物館というだけではありません。オルゴールに囲まれながら食事ができるカフェや、お土産用に売られているオルゴールもあるのです。
ショップのオルゴールはアンティークからモダンまでを取り揃えており、お腹いっぱい目いっぱいオルゴールを堪能できます。
時ときにはイベントも行われますので、イベントの時期にはさらに楽しめることでしょう。

所在地:〒616-8375
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺立石町1-38
入館料:大人1000円
    大学生700円(学生証をお忘れなく)
    中高生600円(学生証をお忘れなく)
    小学生300円
    障碍者500円(手帳を持ち、同伴者の方とお越しください)
    シニア700円(65歳以上。身分証をお忘れなく)
    お着物割引800円(浴衣も含む)
    カップル割引1800円
カフェ営業時間:11:00〜17:00

カフェと土産と伝統と・よーじや嵯峨野嵐山店

「よーじや」は京都でも有名な油取り紙の老舗で、女性に人気のお店です。京都の至るところにチェーン展開をしているお店でもあります。
天龍寺から最も近いのは嵯峨野嵐山店です。この店舗はカフェも併設されているので、休憩所としてオススメします。
京都の商家をベースにした建物と、伝統の油取り紙はまさに京都ならではのお土産ショップといったところ。
そんなよーじや嵯峨野嵐山店にある「よーじやカフェ」は、和菓子と洋菓子の両方を取り扱っています。
有名なあのシンボルマークの描かれたホットケーキ、カフェラテのほか、よーじや風にアレンジしたお菓子がてんこ盛りです。
文房具やグラスなども売られていますので、油取り紙以外のお土産を買うこともできます。

所在地:〒616-8375
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺立石町2-13

犬好き必見!わんこグッズが盛り沢山・和んこ堂嵐山本店

犬が好き、という方、もしくは友人知人が犬好きな方は、和んこ堂嵐山本店へどうぞ。柴犬のキャラクターも愛らしい、わんこグッズのお店です。
この犬は和み柴っ子という名前で、香港進出も果たした結構すごいキャラクターでもあります。
グッズとしては、シャツやバッグ、マグカップなどの日用品や、かわいらしい掛け軸などです。
多岐にわたるわんこグッズだけでなく、愛犬の似顔絵を描くサービスもあります。愛犬家御用達のお店と言えるでしょう。

所在地:〒616-8385
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-25
嵐山スクエア・ウエストパーク内
営業時間:10:30〜17:30

風情溢れるスパ・嵐湯

京都は見所がたくさんあります。いざ観光ともなれば、あっちも行きたいこっちも行かなくちゃ、とつい有名どころを回りたくなるものです。とは言え、心が急いても体がついていかないこともあります。疲れてしまうわけですね。
そんなときにはちょっと休んで、歩き回った足と興奮状態の心をほぐそう、というのが嵐湯です。
スパというより足湯ですが、足の疲れが癒されればまた歩けますし、足のツボが全身に影響を与えていることは東洋医学でも言われています。
外観は一見モダンながら、内部にはどこか荘厳な風情が漂っています。と言って、さすが古都、と気張ることもなく、緊張が足のこわばりと共に溶けていくのも実感するはずです。風情という湯のなかに足をつけて、この町と一体になった気持ちになれることでしょう。
なお、嵐湯には、ただ足をお湯に浸すだけではなくメニューが存在します。いずれも飲み物が付き、内と外からリラックスできるというサービスです。

【禊】
魔除けや身を浄化させるのに使う塩、それをお湯に溶かし、そのお湯で足を洗います。通常の足湯とは違ったこのメニューに、心身が自然と清められていくでしょう。
尚料金は30分で4320円、50分で6480円となっています。

【禅】
湯に茶葉を浮かせたコースです。お茶の香りが非日常的な様相を醸し出し、独特の風情を生み出します。料金は禊と同じです。

【雅】
季節ごとの花を湯に入れて、禅とは違った芳香を出してくれます。贅沢な感じがしますが、それだけではありません。盛大に花を散らしながらもそこはかとない上品さが、雅には存在しています。料金は禊、禅と同じです。

所在地:〒616-8384
京都府京都市右京区嵯峨釈天龍寺造路町35-40
営業時間:12:00〜19:00(平日)、11:00〜19:00(土日、祝日)
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