忘れちゃいけない大切な墨汁。成分から使い心地まで種類別に比較検証

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書の道を進み始めたら気になるのが『墨汁』!
固形の墨よりも手軽で、書きたい時に書けるというとても素晴らしい利点のある墨汁ですよね。

墨汁と固形墨ってどのように違うのでしょうか?今回は、『墨汁』に焦点を置いてその成分や種類に至るまでご紹介していきます。

固形墨と墨汁の違い

墨とは・・・
固形墨というのは、そのほとんどが天然の成分で出来ており、油を燃やして煤を生成し、その墨に膠(にかわ)や香料を混ぜ込んで練り上げ、形成し、乾燥させることで完成します。
固形墨は主に技術を習得した職人の手により手作りされています。

墨汁とは・・・
墨汁というのは、磨らずにすぐに使えるように開発されたものです。
せっかく磨った墨が固まってしまっては意味がないということでその中には天然成分だけではなく腐敗や凝固を防ぐために合成樹脂を粉末にしたものを安定剤として混入し、塩化ナトリウムを凝固防止に混入しています。

墨汁の使い心地

墨汁の最大の特徴としては、やはり墨の濃度の安定性ではないでしょうか。
いつも必ず同じ濃度の墨で書けるというのがとても大きな利点です。
また、書きたい時にすぐに使えるため、墨を磨らないと書けないというストレスはありませんね。

  実際に墨を筆に含ませて半紙に書いてみますとよくわかりますが、固形墨を磨って作った適度な濃度の墨と比較して、やはり滲みやすいというのが一番の印象です。

また、ご自分がとても素晴らしい作品を作られたとしても、表装や裏打ちの際に水を浸かって表装するため、墨が散ったり流れてしまったりしてしまうという可能性もあります。

これは、固形墨には主原料として用いられている膠が接着剤の役目をしているため、固形の墨であるならば乾いた墨に水分を含ませて表装する際にも墨が散ったり流れたりということはありません。

ただし、墨汁の中には膠の入っているものもありますので、もしも気になると思われる方がいらっしゃいましたら墨汁の含有成分を参考にして頂くと良いかと思います。

また、化学製品の含まれている墨汁は筆を傷めてしまう傾向にあります。一度筆を使った後は、明日も使うからと墨汁に筆を浸けたまま放置せず、すぐに洗い落とすようにしてください。

墨汁の種類

墨汁と一言で言っても、大きく分けて二種類の墨汁があります。
一つは上記で述べたように膠の入った墨汁。そしてもうひとつは合成樹脂を使った墨汁です。

これらの特徴を見ていきましょう。

・天然膠性墨汁
固形墨と同様の膠を使っているため、固形墨に似たサラサラとした書き味が伺えます。主に行書や草書といった動きのある書体に向いています。
また、天然成分を含んでいるため、開封してから1年~3年で墨は劣化してしまいます。
この膠を使った墨であれば、さらに濃度が欲しい場合において固形墨を磨って加えることが出来ます。

・合成樹脂性墨汁
寿命が長く、開封してから5年くらいは同様に使用することが可能です。
墨に粘りがあるため、楷書や隷書、篆書など、よりゆっくりとじっくり書く書体に向いています。
また、膠性の墨汁に比べて乾きやすいというのも特徴です。

選び方

私が普段使っている墨汁は『書芸呉竹』の少量タイプになります。
ずっと変わらずに同じ墨汁を使い続けられるのであれば、1Lや1.8Lの大容量タイプもある、使い勝手の良いものです。

墨色で選ぶ

固形墨にも同様のことが言えますが、墨と一言で言っても実はその墨にも色の違いがあります。

色を具体的に挙げてみますと、『書芸呉竹』においては紫紺、純黒、青、超濃墨、濃墨といった5種類があります。

漢字作品や調和体作品よりも仮名作品を作っていく際によくわかりますが、やはり色の違いで作品の風合いも変わっていきます。

濃度で選ぶ

『玄宗』という墨汁では濃度による種類分けがなされています。

色は全て紫紺系で統一されていますが、濃度によってご自分が扱う書体に合うものとそうでないものがあります。

概ね、様々な書体を練習されている方であれば濃度の高い墨を少し薄めて墨の伸びをよくすることも出来ますし、仮名作品であれば薄墨を作ることも可能です。

また、作品の傾向にも依りますが、大きな太い筆で『創作』作品を作られる方であれば様々な濃度の墨汁を使い分けられる方もいらっしゃいます。

容量で選ぶ

容量ももちろん様々な種類があります。

書道教室に入会される場合、おススメの墨汁を紹介して頂いた場合、ほとんどの方がその墨汁を退会されるまでずっと使われることでしょう。その場合ならば特に悩まずに大容量の墨汁を購入される方が割安だと思われます。

ただ、仮名作品を中心に制作される場合、その使用される墨の色で作品に大きな雰囲気の差が生まれるため、少量タイプの墨汁を購入され、ご自分の作品に一番よく合う色合いを探してみてから容量の大きな墨汁を購入されることをお勧めします。

固形墨と違い、初心者でも扱いやすい墨汁は、沢山使用される場合においてもとても有用なものです。

ただ、基盤には固形墨の存在があってこその墨汁ですので、固形墨、墨汁双方に置いて時と場合により使い分けをして頂けたらと思います。
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