仏像

仏教の奇跡、霊験物語集

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スピリチュアルな話がはやっています。死後の世界や偶然、奇跡などなど。「奇跡って起きるんだねえ」と感動することもあれば「怖い」と背筋が凍ることもしばしば。仏教でも奇跡の物語はあります。

ご利益だけじゃない、霊験の意味

「これは霊験あらたかな壷ですよ」とたまーにうさんくさい物言いで使われる霊験という言葉ですが、元は神仏のご利益や不思議な出来事を示します。

殿様を救った仁王経と救いたい心

『宇治拾遺物語』にあるお話で、どちらかと言えば「見た目には大したことがないけど実はすごい人」のお話です。
その昔、堀川兼道という太政大臣が病気になりました。時代は御祈祷で病気を治すトンデモ療法がまかり通っていた頃。兼道公が作った極楽寺から僧侶が派遣されました。2時間ほど唸った後、兼道公は無事回復。そしてある僧侶の行方を尋ねます。その僧侶は中門の脇にある廊下にいました。
兼道公は言います。「そなたのおかげで助かった」と。兼道公が言うには、夢の中で鬼からリンチを受けていたとのこと。「何で!?」と思ったかは分かりませんが、リンチをされる兼道公を助けた人物がいました。みずらを結った童子です。武器は、小枝一本。
しかしものの見事に鬼たちを撃退しました。「ありがとう!あなたは一体どなたですか」と尋ねると、極楽寺のある僧侶に遣わされたとのこと。「その人は中門の脇で仁王経を読んでいますあなたを治したいからですよ」と言うので、僧侶の名前と居場所を確認させたのです。
並みいる高僧を押しのけての御祈祷の力に感心した兼道公は、あまり大したことのなさそうなその僧侶に感謝の意を述べて「今からお堂に行って、もっと読経を励みなさい」と言い褒美の品も与えたとされます。
「救いたい」という気持ちが、このような霊験を呼んだのです。

開眼されなかった地蔵

『宇治拾遺物語』には他にも仏教説話があります。四宮河原という商人の集う界隈に、少々卑しい身分の者がいました。
この男が何を思ったか地蔵菩薩を彫り上げます。しかし、目を入れるのを忘れていました。しばらく経ったある夜、ちょっとしたホラーな展開が起こります。
声が通りから聞こえてきました。「お地蔵さーん。帝釈天様主催の地蔵盆にお出にならないんですかぁ?必ずおいでくださいねぇ」返事は男の家から聞こえてきます。「行けないよ、目も開いてないもん」実はこれは夢なのですが、男はすぐに目を覚まし、声のした方を見るました。
そこには開眼を済ませていないお地蔵様。すぐに開眼供養をしたとのことです。お地蔵様は色々助けてくれますが、ちゃんとご供養をしないといけません。

蛇となって男を助けた観音経

これまた『宇治拾遺物語』より。鷹匠が新しい鷹を探しに山へ出ました。
手ごろな巣があったので、雛をさらいに行きます。
しかしそこは深い谷の上。下手をすれば落下、トマトケチャップになるのは確実です。それでも親の鷹が立派だから、「子供も良い鷹になるはず」と欲をかいて木に登り、巣がある枝の下の枝に足を乗せたところ大方の予想通り、落下。一緒にいた人たちは「あーこりゃ死んだわ。家族に知らせないと」と帰ってしまいました。ところが鷹匠は途中に突き出していた枝に引っかかって運よく助かっていました。しかし助けが来る気配はナシ。そんな鷹匠、何を始めたかと言えば観音様に祈り始めました。
鷹匠の仕事に着いてはいますが、彼は元々熱心な観音の信者でした。
すると、大蛇が登場。しかも鷹匠の方へ寄ってきます。「食べられる!」と戦慄しますが、蛇は鷹匠には見向きもせずるりずるりと上へ向かうのでした。
この時、鷹匠のアイディアが。「この蛇にしがみついていけば上に行けるんじゃね?」腰の刀をえいっと刺して上りきりました。刀を抜こうとしますが、深く差し過ぎたようで、柄が抜けてしまいますが、蛇はそのまま消えていきます。家に帰ると皆大喜び。鷹匠も興奮気味に「観音様に助けられた」と語るのでした。
翌朝、さっそく観音経を読もうとすると、昨日蛇に突き刺した刀が刺さっていました
。しかも、意味としては「観音様はあらゆる哀しみを無くそうとしてますよ。その誓いは海のごとく、広くて深いですよ」といった意味の部分です。まさにご利益、観音様による霊験でした。

まとめ

『宇治拾遺物語』だけでなく『今昔物語』などにもこうした霊験の説話はたくさんあります。教訓付きのものもあり、単なる「ありがたや」ではない物です。
仏様の霊験説話とは、スピリチュアル的ともホラーともいえる、でもどこか微笑ましい物語がてんこ盛りのおすすめの物語と言えます。

監修:えどのゆうき
日光山輪王寺の三仏堂、三十三間堂などであまたの仏像に圧倒、魅了されました。寺社仏閣は、最も身近な異界です。神仏神秘の世界が私を含め、人を惹きつけるのかもしれません。
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