四天王:お釈迦様の存命時より護法神だった

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仏法の護法神として知られる四天王ですが、その役目はお釈迦様から直々に頼まれたものでした。『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』と呼ばれる護国に関する経典によると、お釈迦様は四天王たちに「どこかの王がこの経典を敬い、きちんと供養をするといったら、その王を守ってあげなさい」と言ったとされます。つまり、信者を守れとの意味合いです。

四天王は「畏まりました」と力強く答えました。他国からの侵略が興った時には、その国を潰すとやや物騒な誓い付きで。元々四天王は夜叉などの鬼神を部下に据えているので、「敵を倒してでも、守るべきものを守る」と言った性格もあるようです。

このお釈迦様とのやりとりはお釈迦様の遺言として語られたとも伝えられますが、任命した時点ではまだ現世にいたので、存命時に護法神として任命されたとみて良いでしょう。

二人ずつに分かれたバージョン・二天

四天王とひとくくりになっていますが、常に四人一組ではありません。多聞天は毘沙門天としてソロ活動を行いますし、二天と呼ばれる二人一組のバディ体制になることもあるのです。

組み合せとしては多聞天と持国天、もしくは増長天と持国天となります。前者の方が多く、時には須弥壇を二人だけで守ることも少なくありません。広目天像を置く寺院も存在します。

寺院によっては門のところにこの二天の像を置くこともあります。何故わざわざ二天に分けて像を置くのでしょうか。

四天王像は大概、各お堂の須弥壇におわすものです。それでも門の所に二天に分けて配置するのは、それだけ守りを強めている、安心して参拝に来てくださいとの意味もあるのでしょう。四体よりも二体の方がすっきりして見えますし、全員でなくとも頼もしく感じられます。

仏法守護以外の各人の御役目とは?

四天王の役目は仏法や仏教徒の守護、並びに四方を守ることです。色々とガーディアン的な要素がてんこ盛りにされています。
所が実情は結構仕事が多く、単なる警備員だけをしているわけでもありませんでした。各人各様の割り振りの仕事もあるのです。

【多聞天】
護法神のリーダーなので、説法に関するお役目を持ちます。それは、仏様が説法をしやすいように、その場所をよく整理することです。単にゴミ拾いなどをするのではなく、悪鬼などが入ってこないよう見張ったりします。

【持国天】
名前に国とあるように、土地、領土などを守る側面を持つのが持国天です。

【増長天】
増長する、という言葉にはいい意味はありません。ここで言う増長とは「恵みを増やす」といったニュアンスになります。つまりは五穀豊穣の手助けが増長天のお役目なのです。コワモテ、武闘派ですが結構自然派で親しみやすいところもあります。

【広目天】
浄天眼という特殊な目を持ちます。一種の千里眼で、この目を持って世界を見まわし、行動などを記録するのが広目天の役目です。「ハイ、悪事を働いたね」と書き込まれないように気を付けましょう。
また、仏教では斎戒日と呼ばれる戒律順守の日が存在しており、毎月8日、14日、15日、23日、29日、30日の六日に、ちゃんと戒律が守られているかどうかのパトロールを行います。部下に命じてパトロールをさせることもあれば自分たちで行うこともあったりと、何かと忙しい四天王なのです。

『封神演義』での描かれ方

四天王は古代中国の『封神演義』にも登場します。神仏の類が小説などの創作物に登場するのはよくあることですが、太古の昔から行われていたわけです。

『封神演義』というのは、『西遊記』などと同じく古代中国に成立した物語を指します。完成は明の時代。作者は不明とされています。

この物語において世界は人界と仙界に分かれており、仙界は人間から仙人や同士になった者を示す闡教(せんきょう)、動物や植物などが仙人化した截教(せっきょう)とに分かれていました。

時代設定は史実でいう殷の最後の皇帝、紂王の治世下に当たります。この紂王は、元々は名君の誉れが高かったのですが愛称の妲己の色香に惑わされて暴政を敷くようになり、周の武帝に討たれました。

この歴史の出来事に、仙人たちの戦いを絡めたのが『封神演義』です。紂王は早く言えば王として皆からかしずかれることで驕り高ぶり、世界を作った女神の女?を「自分の側室にしたい」と無礼極まる詩を書きました。恐れ知らず、ここに極まります。人間偉くなりすぎると、色々と周りが見えなくなってくるから恐ろしいです。

当然女?は怒り、部下の狐狸精(こりせい)を送り込み、妲己という絶世の美女として紂王を誑かせる作戦に出ました。女?の狙い通り、紂王は妲己に夢中になって言われるままに酒池肉林などの暴挙に出ます。酒池肉林は今でこそ豪勢な宴との意味を持ちますが、元々は人肉を沢山ぶら下げて林のようにし、池ができるほどの酒を用意した贅沢さと悪趣味の権化でした。

仙界では、元始天尊の部下に当たる崑崙十二仙が大量殺人を行わなくてはならない状況にありました。これは彼らのノルマというより人間時代に行った罰の清算で、1500年に一度行われます。

何故に罪の清算が大量殺人かと言われれば、この1500年に一度の時期には殺生禁止の戒律が解かれるので、悪人を殺すなどしてバランスを取る意味もありました。

人界ではちょうど殷の時代が終わりを迎える頃でした。
時代の交代に伴う戦が起きるので、「じゃあ、仙人と人間を多く間引こう。駄目な仙人や優秀過ぎる人間も一緒に間引いちゃおう」と一種の人員整理で356名の人間や仙人の霊魂が封神台と呼ばれる場所へと向かうこととなったのです。人間と仙人たちの戦いが物語のメインとなります。

戦死の後封神されて、仏教の四天王になりました。

四天王に相当するキャラクターは魔家四将(まかししょう)と呼ばれる四人兄弟です。殷の佳夢関を守っており、巨漢とされています。

中国の四天王は『封神演義』の影響か、日本の四天王像とは持物が異なっているのが特徴です。

【魔礼青】
長男。武器は青雲剣と呼ばれる剣です。一振りで何万という矛や剣が黒い風とともに現れて、空から火を振らせます。剣の意味があるのかと言いたくなる武器ですが、魔家四将の強さを物語っているとも言えるでしょう。四天王では増長天とみられます。

【魔礼紅】
次男。武器は混元傘。「傘が武器って地味」と侮ってはいけません。大地を揺るがす上に、炎まで発生する物騒な傘なのです。
四天王では広目天に相当。ただし、傘を武器にしていたのは最初だけで、封神される時は琵琶が武器になっていました。これは設定変更の名残りです。仏像としては蛇または竜を持ちます。

【魔礼海】
三男。武器は琵琶。上二人同様、単なる楽器じゃありません。四本の弦が張られていますが、それぞれ風、水、火、地を司っているのです。この琵琶を鳴らすことで風や炎が発生します。
四天王では多聞天に当たる存在。設定の変更により、仏像では傘を持っています。

【魔礼寿】
四男。花狐貂(かこてん)という生物が武器代わりです。通常はネズミ程度の大きさですが、戦闘時には巨大化。象ほどの大きさになります。四天王の持国天に当たります。仏像としては琵琶が持ち物です。
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