日本史

私たちの祖先はこんな「人」! 猿人からの進化の歩み

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1859年、チャールズ・ダーウィン(1809-1882)は『種の起源』(英:On the Origin of Species) を出版します。ダーウィンはこの著書において、種と種の連続性を主張し、環境に適応的な動物が生き残る、という「自然選択説」(英:Natural Selection)を展開しました。こうした主張は当然人間にも当てはまるものであり、当時の社会に大きな衝撃を与えました。その衝撃は、ダーウィンの主張を頑なに否定する者もいれば、ダーウィンを猿に見立てた風刺画を作る者もいたことからも伺えます。しかし、『種の起源』の出版から150年以上経った現在、ダーウィンの考えは科学的な検証も進み、おおむね受け入れられているものとなっています。では、われわれ人間はどのように環境に適応し、変化してきたのでしょうか。祖先、あるいは種族として近しい「人」についてまとめてみました。

チンパンジーはヒトの祖先ではない。

はじめによくある誤解、「チンパンジーがヒトになった」というデマについて一言述べておきます。ヒトとチンパンジーは同じ霊長類に属し、どこか素行も似ていますが、チンパンジーが自然選択を通してヒトになった、というのは間違いです。「ヒトとチンパンジーは近い過去(およそ500万年前)に共通の祖先を持つが、そこから枝分かれし、別の方向で自然に適応していった」というのが正しく、ヒトとチンパンジーが似ているのは、比較的近くに共通の先祖を持ち、枝分かれがそれほど遠くまでいっていない、ということに由来します。

猿人の登場

 チンパンジーと枝分かれすると、二足歩行をする猿人が登場します。猿人としてよく知られているのが、アファール原人(アウストラロピテクス・アファレンシス)の「ルーシー」です。猿人としてはまとまった骨格が残っている、「ルーシー」とよばれるおよそ300万年前の化石からは、二足歩行をしていたことや、われわれよりも小さな脳であったことがわかっています。ちなみに「ルーシー」という名前、発見当時(1974年)に流行していたビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんで名付けられました。

石器を作ったホモ・ハビリス、ホモ・エレクトゥス

 およそ200万年前、われわれが属する「ヒト属」の最初の種である「ホモ・ハビリス」がアフリカに登場します。ホモ・ハビリス(Homo habilis)とは「器用な人」を意味し、発掘調査から簡単な石器を作っていたことがわかっています。  続いて登場するヒト属がホモ・エレクトゥス(Homo erectus)です。ホモ・エレクトゥスは、ホモ・ハビリスよりも大きな脳をもち、より精巧に作られたハンドアックスなどの石器を駆使し、火を使って生活していたことも知られています。ホモ・エレクトゥスの身体的特徴は、ホモ・エルガスターと呼ばれる原人の化石「トゥルカナ・ボーイ」から明らかになります。ほぼ全身の骨格が残っているこの「トゥルカナ・ボーイ」の化石からは、現代人とほぼ変わらない身長ですらりとした体型であったことが伺えます。ホモ・エレクトゥスはその生息地をアフリカからユーラシアへと拡大することに成功した種でもありました。ジャワ原人や北京原人もホモ・エレクトゥスの仲間です。

4. 旧人、ネアンデルタール人

 30万年ほど前になると、ホモ・エレクトゥスに変わって旧人とよばれる種族が登場します。旧人としてもっとも有名なのがヨーロッパを生息域としたネアンデルタール人です。氷河期の厳しい環境のなかで生きたネアンデルタール人は、現代人よりも大きな脳容積を持っていたと考えられ、洞窟を住居とし、石器を使った狩猟生活を営んでいたと考えられています。

5. 新人、ホモ・サピエンスの登場

 およそ3万年前にネアンデルタール人が絶滅すると、それ以前のおよそ20万年前から生息していたホモ・サピエンス(Homo sapiens)に交代します。ホモ・サピエンスとはラテン語で「賢い人間」を意味し、分類学の父ことカール・リンネによって名付けられました。新人の登場に関しては、長らく論争がありましたが、アフリカのホモ・サピエンスが世界中に広まったという「アフリカ単一起源説」が有力であると考えられています。  ホモ・サピエンスは狩猟採集によって生活する、いわゆる「ハンター・ギャザラー」で、集団生活を営みました。ネアンデルタール人にはみられなかった芸術作品を残している点が特徴で、たとえばクロマニョン人が残したスペインのアルタミラ洞窟やフランスのラスコー洞窟などの壁面絵画が有名です。また、ネアンデルタール人が滅亡したころ、新人は精巧な石器に現れるように、爆発的な技術革新を経験します。われわれホモ・サピエンスの特徴のなかでもとりわけ注目に値するのが、シンボルによる情報伝達でしょうか。われわれは、芸術や文字を通じて、農耕技術といった生存に有利な情報を伝達し、現代に至るのです。
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