世界史

現代の私たちにも影響が…歴史を変えた「コロンブス交換」とは?

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大航海時代が始まってまもなく、そしてスペインがレコンキスタ運動を完了させた1492年8月、イサベル1世の庇護を受けてスペインを出発したクリストファー・コロンブス船長率いる船団は、10月にサン・サルバトル島に上陸し、カリブ諸島に次々と上陸していきました。
いわゆるカッコつきの「新大陸発見」です。コロンブスは上陸した地で、黄金を略奪したり、インディアンを大虐殺したり、と好き放題暴れまわった末、帰国します。コロンブスの人間性については肯んずるに窮する面が多いですが、しかし、ヨーロッパとアメリカ大陸の接触は世界史において重大な意義をもつ出来事であることに否定の余地はないといえるでしょう。
こうした接触によってアメリカ大陸とヨーロッパの間で様々な物や文化の往来が生まれました。これらを総称して「コロンブス交換」(英:Columbian Exchange)と言います。
現代の私たちが日常生活であたりまえのように使っているものの少なからぬ数が、実は「コロンブス交換」によってもたらされたものなのです。
では実際、アメリカ大陸とヨーロッパのあいだで、どのような交換が行われたのか見ていきましょう。

アメリカ大陸→ヨーロッパ

・食べ物
アメリカ大陸からは、私たちの食卓に欠かせない食べ物がヨーロッパへ伝わりました。
まずはトウモロコシ。
メキシコ原産のこの作物は、アメリカ大陸の主要作物として古くから栽培され、マヤ文明やアステカ文明、インカ帝国の食料的な基礎を担いました。コロンブス交換によってヨーロッパに渡ったトウモロコシは、すぐに広まり、ヨーロッパ全土に定着します。やがてトウモロコシは人間の食料や家畜の飼料として世界中に普及することになります。

続いてアンデス原産のジャガイモが伝わりました。
ジャガイモは寒さに強いため、ドイツやポーランド、アイルランドで主食となりました。とりわけアイルランドのジャガイモに対する依存はかなり強く、1840年代後半に起こった「ジャガイモ飢饉」では、膨大な数の餓死者を出しました。伝来当初は「悪魔の植物」といわれていたそうです。サツマイモもコロンブスがヨーロッパへ持ち帰った作物です。

イタリア料理の要トマトもアメリカ大陸からヨーロッパにやってきた植物の一つです。
しかし、真っ赤なトマトは食用となるには時間がかかり、はじめは観賞用として栽培され、18世紀ごろイタリアで本格的に食用利用されるようになりました。

そのほか、トウガラシ、落花生、カカオ、かぼちゃ、ピーマン、七面鳥などの食物がアメリカ大陸からヨーロッパにもたらされました。

・病気
食べ物だけではなく、新しい病気も流入しました。
代表的なのが梅毒です。
コロンブス一行が罹患し、広まったというのが定説で、日本でもコロンブスのアメリカ上陸後に症状が確認されました。

・文化
食べ物以外の作物として特筆されるのがタバコの伝来です。
アメリカ大陸ではタバコはおもに儀式や治療のために使われていたのですが、ヨーロッパに入ると趣向品として普及しました。タバコはプランテーションの作物としても世界史は重要になりました。

アメリカ大陸←ヨーロッパ

・食べ物
今度は逆に、ヨーロッパからアメリカ大陸にもたらされた食べ物を見ていきます。
まずは「小麦」。
メソポタミアやエジプトなど、古くから旧大陸で栽培されてきた小麦は、「コロンブス交換」を通じて新大陸へ渡りました。そして小麦はアメリカ大陸に定着し、主要な穀物となりました。現在でもアメリカやカナダは小麦の主要生産国です。

サトウキビもアメリカ大陸にもたらされた作物の一つです。
このサトウキビはイギリスやフランスによる植民地支配の際にプランテーション栽培され、三角貿易における重要な品目となりました。

・病気
 ヨーロッパからもたらされた病気は、免疫のないアメリカ大陸の住民に破壊的な影響を与えました。
もっとも深刻だったのが天然痘で、ヨーロッパ人による先住民の酷使も相まって、先住民がほとんど滅亡の危機に陥るまでの死者を出しました。
天然痘による奴隷の減少は、アフリカの黒人奴隷が輸入される、という事態へと繋がっていきました。
その他、インフルエンザ、ペストは新大陸には存在せず、ヨーロッパからもたらされた病気です。

・文化
文化、生活面において、アメリカ大陸の住人はヨーロッパから多大な影響を受けました。
まずはキリスト教の布教が挙げられます。
新大陸のキリスト教化は早くから始まり、16世紀スペインでは、インディオのキリスト教化を条件にインディオを労働力として使役することを認めるエンコミエンダ制が実施されました。

新大陸にとって画期的だったことは、鉄器の流入です。新大陸では銅や青銅はありましたが、鉄がありませんでした。また、車輪は運搬の効率を上げるうえで重要な技術でしたが、ヨーロッパからもたらされるまで新大陸にはありませんでした。

人だけではなく、動物の交流もありました。新大陸ではアルパカが主な家畜でしたが、ヨーロッパから馬や牛、羊がもたらされました。

このように、日常生活でよく使う食材がアメリカ発であったり、天然痘が新大陸で猛威をふるったりと、コロンブスの「発見」は、実に様々な面で副産物をもたらしたのです。
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