仏像

【前編】修行をしながら衆生を救う、菩薩にまつわるエトセトラ

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教育という言葉があります。それ即ち、読んで字のごとく教え育むこと。その言葉には「共育」という意味も含まれている、と聞いたことがあります。これまた読んで字のごとし。教え育むだけでなく、教える側も成長するということです。学校の教員の皆さんは特にこの言葉を実感するのではないでしょうか。仏教の世界でも、似たようなことをしている面々がいます。菩薩です。

菩薩の基礎知識

仏の持つ四つの位のうちの一つで、完全に悟りを開いた如来に近づくべく修行している菩薩たちですが、単に修行だけしているわけでもないんです。この「菩薩」という名称、実は略語なんです。正式名称は菩提薩?(ぼだいさった)。サンスクリット語ではボデイ・サットヴァ(ボデイは悟り、サットヴァは衆生)といい、「悟りを目指す者」を意味します。将来的に悟りを得て如来になることが約束されている仏様たちでもありますが、それは「共育」により、菩薩たちも鍛えられているため、なんでしょうね。

お釈迦様の「菩薩」時代と、六波羅蜜

初期の「上部座仏教」と呼ばれる宗派では「仏様はお釈迦様だけ」という考えから、菩薩も「修行時代のお釈迦様」という認識でした。「いつかお釈迦様の後継者が現れる」との考えから弥勒菩薩が生まれて、大いなる慈悲の心や悟りを求め修行するための誓いを持つ「菩薩」が数々生み出されることとなります。「いつか如来になる」ということは、言い換えれば現在の如来たちは皆「元菩薩」とも言えます。仏教が始まったばかりの頃、「唯一の仏(如来)」とされていたお釈迦様にも「菩薩時代はあったんだよなあ」との考えと同時に、菩薩は「六波羅蜜」という、以下の修行を行っていると考えられるようになりました。 【布施】慈善の行為。お金をもらう行為ではなく、自分が施すと言うことです。 【持戒】戒律をきちんと守ると言う意味です。 【忍辱】完全なる忍耐。「にんにく」と読みます。 【精進】怠ることなく、努力を続けること。 【禅定】瞑想。心を沈めての精神集中。 【般若波羅蜜】完成された、悟りの智慧。

菩薩の基本像様

「菩薩顔」の言葉そのままの穏やかな表情に、「着飾っている」こと。これが、如来、明王、天部などと見分ける菩薩特有にして基本の像様です。また、「出家前のお釈迦様」が説、像様ともにモデルになっているので、「あごの線が三本」「額に螺髪という毛がある」など、いくらか「お釈迦様の特徴」を受け継いでいる部分はあります。「悟る前のお釈迦様の姿」ともいえるのが菩薩です。

メジャーな菩薩

取り立てて仏像に詳しくない方でも「何か聞いたことあるかな」と思われる方々をご紹介します。

重要度ナンバーワン、弥勒菩薩

お釈迦様の入滅後56億年後に現れるとされる未来仏。次なる救世主であり、弥勒菩薩が悟りを得て如来となった時、全ての衆生が救われるとされています。有名なのが「半跏思惟像」という姿。平安時代以降は装身具も着け、堂々たる「菩薩」としての像も多く作られました。他の菩薩像との見分けポイントは「宝塔」という、お釈迦様の遺骨を入れた特殊な骨壺を持っていること。

仏教界随一のインテリ、文殊菩薩

「三人寄れば文殊の知恵」と言われるように、知恵の象徴。実はこの方、実在の人物です。お釈迦様の入滅後に生まれたという説もあれば、弟子の一人であったとの説もあります。ただ、共通しているのは出家してもいなのに教えを完ぺきに理解できた半端なく頭のいい維摩居士という人物と対等に議論出来たとの逸話が残るほど。「頭脳明晰」という言葉でも形容しきれない知恵の主だったようです。そんな文殊菩薩は、釈迦三尊像でよくお釈迦様の脇に祀られます。脇侍、つまりサポート役として頼りにされているというわけですね。像様としては大概が青い獅子に乗り、片手に経典(もしくは蓮の花)、片手に剣を持つというもの。「何で剣?」と聞かれれば、この剣は戦うためのものではなく鋭い知恵を表したものだそうです。
密教バージョン。こちらも知恵の剣を振りかざしていますね。
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