ご当地グルメ

あなたはからし派?それともわさび派?小千谷名物「へぎそば」

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へぎそばは、小千谷市を中心に新潟県魚沼地方で作られる郷土蕎麦です。江戸時代から続く蕎麦食文化が創意工夫を経て現在の形に完成し、その独特の味わいから全国的にも名を知られてきています。

緑がかったモチモチの麺。板で組んだ大きな箱に、一口分ずつ丁寧に盛られた姿。まるで糸束のようなその蕎麦はまさしく、土地の織物文化と密接に関わって生まれたものでした。

へぎそばの特徴と、その由来となった魚沼地方の歴史とはどんなものなのでしょうか。詳しくご紹介します。

へぎそばの名前の由来

魚沼、小千谷でなぜ「へぎ」そば?と思った人もいるのではないでしょうか。へぎとは、蕎麦を盛るときに使う容器のことで、片木と書きます。また、剥ぎ板を使ったことから「剥ぎ」が訛って「へぎ」になったとも言われます。

へぎそばに使うへぎは、元々は両腕で抱えるほどの大きな容器でした。小千谷では正月やお盆、冠婚葬祭など人が集まるときに蕎麦が振る舞われ、大きな容器からみんなで取るスタイルが確立しました。現在も多人数用のメニューではへぎを使うお店があります。

へぎそばを盛るへぎは、蚕を育てるときに使う箱が再利用されることもありました。小千谷は織物が盛んな地域で、現在も特産品のひとつになっています。かつては養蚕をする家も多く、最も身近で手頃な大きさの養蚕箱が使われるようになったようです。

地元の織物文化と密接に関係するへぎそば

小千谷の織物文化は、へぎそばの他の面にも大きく関わっています。

たとえば盛り方。へぎの中に一口分ずつ盛るのがへぎそばのスタイルですが、この盛り方は糸を撚り紡ぐときの手法が活かされています。糸を紡ぐ手の動きを小千谷では「手振り」「手びれ」と言いますが、へぎそばは手振りそばとも呼ばれるのです。

また、へぎそば最大の特徴は、つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使っていることです。緑がかった色としっとりした食感はこの布海苔から生まれていますが、布海苔は元々、織物の緯糸を張るための糊材として使われていました。この布海苔を蕎麦のつなぎにも使おうと工夫をこらして完成したのが、今のへぎそばなのです。

布海苔が市場に出回る機会は年に1度きり。品質を見極めた上で1年分を入手するのは、職人が長年をかけて培った経験と目利きがものを言います。へぎそばはまさに、小千谷の伝統生活を受け継ぐ人々だからこそ作れる、土地の味と言えます。

へぎそばの薬味が2種類のわけ

蕎麦に欠かせないのが薬味ですが、へぎそばはワサビかからしの二択が主流です。からしはちょっと珍しい印象を受けますが、これも小千谷の風土が関わっています。

元々小千谷ではワサビが採れなかったのです。そのため、へぎそばを食べる時はからしがお供でした。物流が盛んになると小千谷にもワサビが入ってくるようになり、従来のからしに加えてワサビでも食べられるようになって、今に至ります。

現在ではお店によってワサビ、からし、両方から選択可能と、バリエーションが生まれています。

へぎそばを食べられるお店

へぎそばを食べられるお店は数多くあります。中でも本場小千谷に店を構えた老舗のへぎそば屋を3軒ご紹介します。

小嶋屋総本店

画像出典:小嶋屋総本店


小千谷市から少し南に行った十日町市内の本店をはじめ、新潟県内で展開する大手へぎそば店です。創業は1922(大正11)年。3代にわたって伝統の味を守り続けた伝統と、皇室献上5回に及ぶ実力を兼ね備えています。

へぎそば わたや

画像出典:へぎそば わたや


元々は綿の打ち直しをしていたお店で、製麺機を引き継いだことから大正10(1921)年頃にそば店を始めました。へぎそばの薬味にきんぴらを使った最初のお店とも言われています。

平成12(2000)にはご当地グルメの賞を受賞しています。また、そばを使ったスイーツや地元の食材を使ったみどりのラー油などの新しい商品開発、さらには新店舗展開など、伝統を受け継ぐ一方で新しい挑戦にも積極的に取り組んでいます。通信販売もあります。

元祖小千谷そば 角屋

明治22(1889)年創業で、確認した中では最も古いへぎそば店です。小千谷市内に2店舗を構えています。へぎそばは全国的にも独特の特徴を持つ蕎麦ですが、角屋ではさらに打ち方を工夫して、腰が強く歯ざわりのよい食感をしています。

通信販売では生そばとそばつゆ、そば茶が買えます。生そばは冷蔵と冷凍が選べ、賞味期限は冷蔵なら2~3日、冷凍なら1ヶ月ほどとのことです。

現地の隠れた名店も探してみて

へぎそばは地元の生活に根ざしているからこそ、店ごとに異なる特徴と味を持っています。通信販売などのネット展開をしてない名店も多くあるので、小千谷に行った際はぜひ食べ比べしてみてください。
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