世界史

石油危機の歴史を振り返ってみたら未来が見えてきた

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昭和48年(1973年)のトイレットペーパー騒動を覚えていますか?
石油危機をきっかけに巻き起こったトイレットペーパー騒動は日本中をパニックに陥れました。原油価格の高騰のため「紙を節約しよう」という政府の呼びかけが国民の不安を煽り、風評によるトイレットペーパーの買占めが各地で起こりました。
しかし、実際にはまだ紙不足にはなっていなかったのです。

そして、最近また石油危機に関して「ピークオイル」などの用語が取り上げられることが多くなっています。かつての石油危機について知っておくことが自分自身で正しい判断が下す時の助けになるでしょう。

石油危機って何だったんだろう?

そもそも石油ってどんなものなのでしょうか。
石油がエネルギー資源として活用され始めたのは150年ほど前のこと。それまでエネルギー資源の中心は石炭でした。石油の掘削法の発展にしたがい、石油はエネルギー資源の中心となり現在にいたるまでそれは続いています。第一次世界大戦を契機に、船や飛行はもちろん自動車などの動力源として、さらにプラスチックや化学繊維の素材として、そして発電燃料として石油は欠かせない資源となったのです。このように多くのエネルギー源をまかなっている石油はかつて大量に産出され価格も安価なものでした。しかし石油の産出国は中東に集中しているのでその地域の経済情勢に価格が左右される一面があります。

昭和48年(1973年)にアラブ諸国とイスラエルの間に第4次中東戦争が勃発しました。当時、石油の価格決定権を持っていたのはOPEC(石油輸出国機構)という石油産出国で作られた組織でした。第4次中東戦争の影響でOPECによって原油価格が7割近く値上げされたり、敵国に味方する諸国への原油輸出が止められたりするという動きが起こり、石油不足と価格高騰が起こりました。
これが〈第1次石油危機〉です。トイレットペーパー騒動が起きたのはこの時でした。さらに昭和54年(1979年)には〈第2次石油危機〉がありました。当時世界第2位の石油産出国だったイランで革命が起こり、原油産出の削減や輸出の調整を行ったため世界的な石油不足となったのです。

石油危機の歴史から学ぼう

〈第1次石油危機〉の時に起きたトイレットペーパー騒動は実際の紙不足によるものではありませんでした。
では、どうして日本中がパニックになるほどの騒動になってしまったのでしょうか。騒動の最初は大阪での「トイレットペーパーがなくなる!」という噂からスーパーに大勢の人が押しかけたことによります。さらにその様子がテレビなどで報道され日本中に買いだめ騒動があっという間に広がっていったのです。平成23年(2011年)の東日本大震災の時にもトイレットペーパーや米、ミネラルウォーターなどの買いだめ騒動がありました。われわれは生活に必要不可欠な物資が不足することに恐怖心を抱きます。この恐怖心が買いだめ騒動を巻き起こす原因なのです。

昭和48年(1973年)のトイレットペーパー騒動は約2ヶ月で収束しました。
東日本大震災の際にも数ヶ月後には店に商品が並ぶようになり買いだめの動きも次第になくなっていきました。こうした買いだめ騒動の歴史からわかるのは「火のない所にも煙は立つ」ということ。噂に踊らされることなく情報を正確に取捨選択する必要があるのですね。2度の石油危機からわたしたちは「石油不足=物不足」という考えを持っています。しかし「不足しているから物がない」のではなく「噂による買いだめのために物がない」という事態を起こしてしまったのは不正確な情報に踊らされてしまったからだということを忘れないでいたいものですね。石油をめぐる今の状況を知っておけば、嘘の情報に惑わされることがなくなることでしょう。

脱石油への道を模索中

2度の石油危機の打撃を受け日本の高度経済成長は終わりました。
そして日本だけでなく先進諸国は自国の経済があまりにも中東の石油資源に依存し過ぎていたことを痛感したのです。自動車などの輸送機関や発電所、その他さまざまの産業が石油なしでは成り立たないのが現状です。さらに問題として浮上してきたのが「石油はいつまで産出可能なのか」ということ。「ピークオイル」という言葉をご存知でしょうか。「ピークオイル」とは石油産出量が最大になる時点のこと。「ピークオイル」を過ぎれば産出量は減ってゆくばかり、ということです。石油は有限資源なのでいつかはなくなる日がくるというのは当然のことですね。では石油はいつまで産出できるのでしょうか。

石油の可採年数という数値があります。石油の採掘可能な年数を示すものですが日本の資源エネルギー庁によると「可採年数」はあと52.5年とされています。
石油の可採年数は採掘技術の向上によって年々増加していく傾向があります。しかし限りがあることには変わりないので、石油に頼っていたエネルギー源をほかのものに転換していくことが必要になってきています。石油危機をきっかけに発電エネルギーも石油を使う火力だけでなく原子力や太陽光、風力を使うことが促進されてきています。また、自動車もバッテリーで走る電気自動車=EV車の普及が進んでいます。電気自動車はCO2を排出しないため地球温暖化にも効果があり、購入に際しては国や地方自治体から補助金が出されています。

まとめ

石油危機の歴史を振り返ってみると「石油がなくなる危機」ではなく「石油が流通しなくなる危機」であったことがわかります。
しかし可採年数の限りがある石油は、いつか本当の意味で「危機」を迎えると考えられるでしょう。
どのように「脱石油」を実現させていけば良いのか、「危機」にどのように対応すれば良いのかを歴史から学びたいものです。
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