景勝地

まさに空中散歩、谷瀬の吊り橋と周辺の観光地

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 谷瀬の吊り橋は奈良県の十津川村にあります。十津川村は県の南西端を占め、東西32km、南北33kmという県下最大の面積を有しますが、その98%は山岳に閉ざされ、人口密度は県下最小の数値です。

 村の東部の大峰山脈と、西部の伯母子山地の間を深いV字渓谷を刻んで十津川が南流し、十津川とその支流沿いの山腹に集落が営まれています。

 十津川沿い走る西熊野街道は国道168号線として改修され、奈良と新宮市を結ぶ長距離バスも通じる幹線となりました。この国道沿いの上野地・風屋・小原・折立・平谷・重里には人家も密集し、商業も盛んに行われています。

 また、吉野熊野総合開発事業の一環として、風屋・二津野にダムと発電所が建設されて以来、道路の改修と相まって、かつては「陸の孤島」といわれた秘境も急速に近代化しました。

 山地のために主として林業に従事し、わずかに米・麦・雑穀が耕作されており、言語や風習にも特殊なものを伝えています。

 村内には大塔宮護良親王の遺跡、黒木御所跡をはじめ、楠正勝の墓、片岡八郎花折塚、長慶天皇ゆかりの国王神社など、南朝の遺跡が多く、幕末の天誅組の遺跡もあります。また県下では数少ない温泉、湯泉地温泉、十津川温泉もあって、訪れる人も多くいます。

 また、村の小原・武蔵・永井に古くから伝えられる十津川の大踊りが、国の無形民俗文化財に指定されています。
 大吊橋が架かっている十津川は、吉野山地の中央部、大峰山脈の山上ヶ岳付近に源を発する天ノ川が阪本付近で南に向きを変えて十津川となっています。

 大峰山脈と伯母子山地に挟まれて極端なV字渓谷となり、諸川を集めて南流し、十津川村を経て和歌山県に入り、北山川と合流して熊野川となり、太平洋の熊野灘に注いでいます。県内延長141kmあります。

 壮年期の山地のため、峡谷は深く、変化に富んだ景観として人気の観光スポットとなっています。

 谷瀬の吊り橋は十津川村の北端近い風屋ダム湖の最北端の十津川にかかる吊り橋です。上野地から対岸の谷瀬と結ぶ長さ約297mの吊り橋で、川面から54mもの 高さにあり、渡るにつれて前後左右に揺れ動き、非常にスリルを生み出しています。十津川は谷が深く、対岸への架け橋が困難であったため、橋と言えばほとんどが吊り橋でしたが、次第にコンクリートの永久橋に架け替えられつつあります。

 近くに長慶天皇の勅願所といわれる国王神社があり、対岸の谷瀬には大塔宮護良親王の黒木御所跡があります。御所跡といっても実際にはこんもりと茂る森の中に1基の碑が建っているのみとなっていますが。

 近くの十津川村役場付近には十津川村歴史民俗資料館があります。昭和56年の開館で、村に伝わる古文書類や民俗資料を収蔵・展示しています。収蔵品の中、信仰資料・生活資料・農耕資料・狩猟資料など400点以上と、後村上天皇論旨・村の記録文書・吉田松陰書簡など500点以上が県の文化財に指定されています。

 十津川に臨んだ崖の中腹にたつ山峡の温泉が湯泉地温泉です。宝徳2年(1450年)という古い歴史を持ち、佐久間信盛、本願寺顕如、豊臣秀長の子である秀保らも湯治に訪れたといいます。

 静かな環境に恵まれ、湯に浸りながらの十津川の眺めが格別です。ここから車で10分ほど東へ行くと楠正成の孫、正勝の墓があります。

 十津川を風屋で堰き止め、当時のお金で165億円という巨費を投じて昭和35年に完成させたのが風屋ダムです。堤高101m、堤長330m、貯水量8900万平方メートルの重力式ダムで、ここからトンネルで導水して十津川第一発電所を設けて発電しています。

 十津川を和歌山県境に近い二津野で堰き止めて築造された県下最初のアーチ式ダムが二津野ダムです。昭和36年の完成で、堤高71m、堤長186m、貯水量4380万㎡となっています。この水は和歌山県下の十津川第二発電所に導かれ発電がおこなわれています。このダム湖畔の平谷にあるのが十津川温泉です。

 二津野ダム湖畔の平谷と鉄橋を渡った蕨尾付近に旅館などがあります。温泉街の南西約2.5kmの十津川支流上湯川の下湯から引き湯しています。下湯の泉源は元禄年間(1700年前後)に炭焼きが発見したとされています。

 周辺は深い山に囲まれた自然の仙境で、ダム湖ではフナやコイなどの釣りを楽しむことができます。温泉へは和歌山線五条駅からバス、紀伊本線からバスなどで行くことができます。

 十津川村域の南東端近い、標高1077mの玉置山の9合目には玉置神社があります。社伝によると崇神天皇65年の創建と伝えられる古社です。神仏習合のころは、玉置三社権現と称し、熊野三山奥の院として崇敬を集めました。

 現在の懸造り・入母屋造りの社務所と入母屋造りの台所が県指定の文化財となっています。また、社宝の、平安時代の応保3年(1163年)の銘がある梵鐘が、国指定の重要文化財となっています。また、社殿周辺の杉の巨木群が県の天然記念物に指定されています。
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