うどん

地方うどん探訪 VOL.2 : ひっぱりうどん きしめん

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ひっぱりうどん

山形県内陸部、特に村山地方でよく食べられている「ひっぱりうどん」は、鍋でうどんを茹でて、茹で上がった麺を器に盛らず、鍋から直接すくって、つけ汁で食べる郷土料理。そのユニークな名前の由来は、鍋からうどんを引っ張り出して食べるからとか、つけ汁に入れて一緒に食べる納豆の糸を引く様子からなど、諸説あります。また、地方によっては「ひきずりうどん」とか「ひっぱりあげうどん」、「つっぱりうどん」などとも呼ばれているようです。

ひっぱりうどんは、熱々のうどんを鍋から麺を“引っぱり”、好みの味付けをした汁で食べるのですが、汁の使い方は、麺に、かける・つける・絡めるなど、食べる人の好みで様々。そのつけ汁に混ぜる素材もまたユニーク。醤油と納豆を合わせたものを基本に、サバ缶詰や生卵、鰹節・七味唐辛子・胡椒・味の素・ツナ缶など食べる人が各自で思い思いのものを加えて作るのが定番です。薬味は、 ネギやミョウガの輪切り、古漬けや沢庵のみじん切りなど。また、最近では海苔・天かす、さらにバターやチーズ、マーガリンといった洋風の味付けもされることがあり、アイディアと工夫時代で汁のバリエーションは無限に広がりそうです。

ちなみに、山形のスーパーなどでは、ひっぱりうどん専用の乾麺も発売されているというから、ひっぱりうどんは、まさに住民の生活に密着した郷土料理であることが察せられます。

乾麺を使うことが多いという、ひっぱりうどんが、この地方で食べられるようになった背景は、毎年厳しい冬を迎える山形県内陸部では、積雪で外出できなくなった際の非常時に備え、各家庭で保存食として乾麺や缶詰などを常備していたことがあります。また、農家が多い事から自家製の納豆が手元に常備していたこともあって、それら手持ちの保存食をつけ汁に混ぜ合わせ食べたのが、ひっぱりうどんの始まりと言われています。

その一方で有力な説は、ひっぱりうどん発祥の地が、村山市戸沢地区という説。戸沢地区ではかつて生業としての炭焼きが盛んでした。炭焼きをするために山ごもりをする際、うどんの乾麺と自家製の納豆を持ち寄り、麺をゆでた鍋から直接うどんを“ひっぱり”納豆のつゆにからめて食べていたとか。炭焼きには長い時間がかかり、火力の調整が重要で釜の側から離れることができないことから、手早くできるひっぱりうどんは、作業中の食事にぴったりだったというわけですね。
手間がかからない上に、簡単に作れて美味しく、家にある食材で作れることなどから、やがて、ひっぱりうどんは家庭でも食べるようになり、それが次第に広まっていったと伝えられています。

きしめん

愛知県名古屋市の名物「きしめん」は、中力粉を練り上げた生地を薄く平たくした、全国的に有名なうどん料理。その起原については、現在の愛知県刈谷市(旧・三河国芋川)で作られたものが、”きしめん”の先祖という説が有力です。

名前の語源は、もともと麺でなく碁石型だった、あるいは帯状の麺を巻いた状態が中国将棋の駒に似ていたことから「碁子麺」の名前が転じて「きしめん」になったという説や、紀州人が作った「紀州めん」がなまって「きしめん」になったという説、さらにはキジの肉を麺の具にして藩主に献上したことから「きしめん」の名前が付いたなど、諸説あります。

なお、小麦粉を生地とする麺には、うどん、きしめん、そうめん、ひやむぎなどがありますが、きしめんのような平麺には定義があるのをご存知ですか? 日本農林規格(JAS)によると、『乾めん類品質表示基準』で、乾麺は幅4.5ミリ・厚さ2ミリ未満の帯状のものと規定されているそうです。また、「名古屋きしめん」と表示する場合は、幅5~7.5ミリ・厚さ1.5ミリ未満とされています。麺の呼び名は、サイズで決まるわけです。

その他のきしめんの特徴は、一般的なうどんに比べて、生地を薄く伸ばすので、麺が長い上に薄く平らなため、茹で時間が短い点。また、製法についても、薄く平たく延ばすため、職人の技術習得に長い期間が必要。また、きしめんはうどんより水分を吸いやすいため、うどんに用いる時よりも汁の水分を減らしたり、煮込み時間を短縮したりするなどの工夫が不可欠。さらに、麺が薄いので、茹でる際は複数の麺が張り付いたままの状態で茹でられてしまい、麺に芯ができることがよくあるので麺をゆでる時は細心の注意が必要です。

一般的なきしめんの食べ方は、茹で上がった麺に油揚げや名古屋コーチンカマボコ・天ぷら・かき揚げ・天かす・えび天などの具を入れ、熱い汁をかけて、ネギやカツオ節をたっぷり載せていただきます。そんな定番の食べ方の他、味噌煮込みきしめん、カレーきしめん、力きしめんetc、色々なバリエーションがあり、夏には、ざるきしめんなど冷やし麺としても食べられています。
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