<ピアノのふるさと> イタリア生まれの二つのピアノメーカー
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ピアノのメーカーといえば、ヤマハ、カワイ、スタインウェイ、ベーゼンドルファーが有名。とくにスタインウェイは、その輝きある音色から、ピアノ界の王者として君臨しています。ところで、ピアノ揺籃の地がイタリアであることをご存知でしょうか。ヴァイオリンの名工ストラディバリウスやグァルネリを輩出したように、イタリアは楽器作りの国でした。そしてピアノもまた、イタリアの地で生まれた楽器です。
ピアノの発明者は、イタリア・フィレンツェの楽器職人バルトロメオ・クリストフォリ(1655-1731)という人物。正確には、クリストフォリが発明したのは「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」、小さい音から大きい音まで出せるチェンバロ、という名前の楽器でした。ちなみにクリストフォリが1720年台に作ったピアノは現存しています。
こうしてピアノの起源の地となったイタリアでしたが、やがてウィーンやパリなどにピアノ製造の中心地が移って行きました。代表的なピアノメーカーをみても、ハンブルクおよびニューヨークのスタインウェイ、ベルリンのベヒシュタイン、ウィーンのベーゼンドルファー、パリのプレイエル、日本のヤマハと、ピアノ界におけるイタリアの地位は芳しいものではありませんでした。しかし、近年、新たなピアノメーカーの活躍によって、かつての楽器王国イタリア復興の兆しが現れつつあります。ピアノ界の「ルネサンス」を担う、今後が期待されるイタリアのピアノメーカー(+α)を紹介します。
ピアノの発明者は、イタリア・フィレンツェの楽器職人バルトロメオ・クリストフォリ(1655-1731)という人物。正確には、クリストフォリが発明したのは「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」、小さい音から大きい音まで出せるチェンバロ、という名前の楽器でした。ちなみにクリストフォリが1720年台に作ったピアノは現存しています。
こうしてピアノの起源の地となったイタリアでしたが、やがてウィーンやパリなどにピアノ製造の中心地が移って行きました。代表的なピアノメーカーをみても、ハンブルクおよびニューヨークのスタインウェイ、ベルリンのベヒシュタイン、ウィーンのベーゼンドルファー、パリのプレイエル、日本のヤマハと、ピアノ界におけるイタリアの地位は芳しいものではありませんでした。しかし、近年、新たなピアノメーカーの活躍によって、かつての楽器王国イタリア復興の兆しが現れつつあります。ピアノ界の「ルネサンス」を担う、今後が期待されるイタリアのピアノメーカー(+α)を紹介します。
1. Fazioli
ファツィオリは、パオロ・ファツィオリが1981年に創業したイタリアのピアノメーカーです。工場を構えるのはヴェニスの北東、サチーレ。スタインウェイ・アンド・サンズは1853年の創業、日本のヤマハも20世紀初頭にはピアノ製造を行っていましたから、ファツィオリは新興のメーカーといえます。歴史は浅いといえども、アシュケナージなど数多くの一流ピアニストがファツィオリのピアノを高く評価し、有名コンクールでも続々採用されるなど、スタインウェイやヤマハと並ぶ名声を得ています。
創業者のパオロ・ファツィオリは、家具工場の経営者を父にもち、ピアノを弾きこなすかたわら、大学では工学を学びました。工学、ピアノ、作曲で学位を取得して大学を卒業したパオロは家業を継ぎ、製造技術や木材加工についての知識を身につけました。こうして、工学者としての腕と音楽家としての耳を備えたパオロは、1978年、満を持して工場を開き、ピアノ製造に乗り出しました。そして、会社設立後まもなく、職人のこだわりが詰まったファツィオリのピアノは世界で認められるようになりました。2001年には新しい工場、2005年にはファツィオリ・コンサート・ホールがオープンしています。
ファツィオリピアノ最大の特徴は「4番目のペダル」。このペダルを踏むと、鍵盤が浅くなり、音量を抑えることができます。普通のグランドピアノの場合、一番左側のペダル(ウナコルダ・ペダル)を踏むと、鍵盤が横にずれて音量を抑えることができますが、ファツィオリの第4ペダルは、縦にずらすことで音量を抑えるのです。また、F308というピアノは、奥ゆき3m8cmという長さを誇り、世界最大級のグランドピアノとして知られています。響板の木材には、ストラディバリに使われたのと同じ、フィエンメ渓谷の木材を利用しているとのことで、ファツィオリは、イタリアの楽器作りの系譜を継ぐにふさわしい存在といえるでしょう。一台製造するのに数年、年間150台以下という、手間暇かかるピアノだけあって、日本ではまだ珍しいピアノですが、ファツィオリのピアノは、これからますます存在感を増していくことでしょう。
創業者のパオロ・ファツィオリは、家具工場の経営者を父にもち、ピアノを弾きこなすかたわら、大学では工学を学びました。工学、ピアノ、作曲で学位を取得して大学を卒業したパオロは家業を継ぎ、製造技術や木材加工についての知識を身につけました。こうして、工学者としての腕と音楽家としての耳を備えたパオロは、1978年、満を持して工場を開き、ピアノ製造に乗り出しました。そして、会社設立後まもなく、職人のこだわりが詰まったファツィオリのピアノは世界で認められるようになりました。2001年には新しい工場、2005年にはファツィオリ・コンサート・ホールがオープンしています。
ファツィオリピアノ最大の特徴は「4番目のペダル」。このペダルを踏むと、鍵盤が浅くなり、音量を抑えることができます。普通のグランドピアノの場合、一番左側のペダル(ウナコルダ・ペダル)を踏むと、鍵盤が横にずれて音量を抑えることができますが、ファツィオリの第4ペダルは、縦にずらすことで音量を抑えるのです。また、F308というピアノは、奥ゆき3m8cmという長さを誇り、世界最大級のグランドピアノとして知られています。響板の木材には、ストラディバリに使われたのと同じ、フィエンメ渓谷の木材を利用しているとのことで、ファツィオリは、イタリアの楽器作りの系譜を継ぐにふさわしい存在といえるでしょう。一台製造するのに数年、年間150台以下という、手間暇かかるピアノだけあって、日本ではまだ珍しいピアノですが、ファツィオリのピアノは、これからますます存在感を増していくことでしょう。
2. Borgato
Borgato(ボルガート)もまた、イタリアに拠点を構える、1991年創業の新興ピアノメーカーです。創業者ルイジ・ボルガートと妻パオラ・ビアンキを中心にした小さなピアノ工場では、ファツィオリ同様、手作りによって丹精をこめられたピアノが、年間にわずか数台生み出され、世界中の音楽好きのもとへ送り出されています。大工場での大量生産という次代の流れに真っ向から逆行したボルガートの売りは、徹底的吟味された素材による手作りピアノ。ファツィオリと同様、名工ストラディバリの精神を受け継いだ職人魂をモットーとしています。
ボルガートの工場から生まれた名作ピアノとして有名なのが、「ドッピオ・ボルガート」。2000年に初お披露目されたこのピアノは、通常のピアノと同様に鍵盤を弾くことで音を出せるほか、オルガンのようにペダルでも音を出すことのできるピアノです。「ドッピオ」は、英語ではdoubleに相等するように、鍵盤とペダルによって、あたかも二台のピアノを操るように演奏することができるのです。下記のボルガートの公式サイトでは、「ドッピオ・ボルガート」や、「ドッピオ・ボルガート」を弾くアシュケナージなど、ボルガートのグランドピアノを弾く有名ピアニストたち(アンドラージュ・シフ、ラザール・ベルマン、ラドゥ・ルプーなど錚錚たる面々!)の写真を見ることができます。
ボルガートの工場から生まれた名作ピアノとして有名なのが、「ドッピオ・ボルガート」。2000年に初お披露目されたこのピアノは、通常のピアノと同様に鍵盤を弾くことで音を出せるほか、オルガンのようにペダルでも音を出すことのできるピアノです。「ドッピオ」は、英語ではdoubleに相等するように、鍵盤とペダルによって、あたかも二台のピアノを操るように演奏することができるのです。下記のボルガートの公式サイトでは、「ドッピオ・ボルガート」や、「ドッピオ・ボルガート」を弾くアシュケナージなど、ボルガートのグランドピアノを弾く有名ピアニストたち(アンドラージュ・シフ、ラザール・ベルマン、ラドゥ・ルプーなど錚錚たる面々!)の写真を見ることができます。
・ Fabbrini(ファブリーニ)
最後におまけ。Fabbriniはピアノのメーカー名ではありません。Angelo Fabbriniは知る人ぞ知るイタリアの調律師。スタインウェイの側面に、金文字で “Fabbrini” と書かれていたら、そのピアノはFabbrini氏が調律したピアノです。Fabbriniのピアノは近年一流ピアノがこぞって使うようになっており、今や “Fabbrini”の金文字は最高級ピアノの証。
筆者の知る限りでも、イタリアの名ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニは2012年の来日公演をはじめ、ほとんどのコンサートで “Fabbrini”のエンブレム付きのピアノを使っており、「ポリーニといえばFabbrini」といった印象があります。ほかにはバッハ演奏の大家であるアンドラージュ・シフや、指揮者としても活躍するダニエル・バレンボイムがFabbriniを使っている映像を見たことがあります。もともとのピアノはスタインウェイですが、録音を通じて聞く限りFabbriniはスタインウェイにも増して芯のある音を出す印象です。(*個人の感想です。)
筆者の知る限りでも、イタリアの名ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニは2012年の来日公演をはじめ、ほとんどのコンサートで “Fabbrini”のエンブレム付きのピアノを使っており、「ポリーニといえばFabbrini」といった印象があります。ほかにはバッハ演奏の大家であるアンドラージュ・シフや、指揮者としても活躍するダニエル・バレンボイムがFabbriniを使っている映像を見たことがあります。もともとのピアノはスタインウェイですが、録音を通じて聞く限りFabbriniはスタインウェイにも増して芯のある音を出す印象です。(*個人の感想です。)