城を築くには?まずは城郭の縄張りから

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城を築くには?まずは城郭の縄張りから

 近世の築城の基本思想はいわゆる「堅固三段」です。まずは城堅固の城(城自体の防備を堅固にする)、つづいて所堅固の城(城郭周辺の地勢からみて要害の地を選ぶ)、そして国堅固の城(国内の政略的要地を固める)という順序ですが、近世の大名は領国経営を第一に考え、国堅固の城を目指して築城しました。この際に踏む手順が、縄張、普請、作事という三段階です。

 縄張とは城郭全体の配置計画のことですが、まずは城地の選定から始めていきます。 近世の城にも山城はあります。しかし、主流は平山城から平城への動きでした。平山城は20m~100mほどの丘陵を中心として周囲の平地を取り込んだ城で、丘頂の本丸から二の丸・三の丸としだいに山麓部に広がってきます。平時の領主の居館・政庁と戦時の防塞との機能を併せ持つ城で、丘にそびえる壮麗な天守閣は領主の権威の象徴となった。

 今は残っていない安土城をはじめ、天守の現存する犬山城・彦根城・姫路城・松山城・高知城・熊本城など、日本の名城といわれる城の多くは平山城です。

 平城は防塞としてよりも、政治的配慮を優先して平地に築かれました。江戸時代に領国支配の重要性が一層重視されると城下町を周囲や内部にとりこむ平城が主流となりました。江戸城・大坂城・名古屋城・松本城などは代表例です。

2 郭の縄張

 城内の土塁や石塁などで囲まれた一画を郭とか丸と呼びます。郭の数や配置は地形に応じて異なりますが、次の四形式が基本です。

 梯郭式は本丸を中心に、梯の段下がりに二の丸・三の丸と重ねていきます。戦国期の山城に多くありましたが、近世では会津若松城・岡山城・萩城など平山城に多くあります。

 連郭式は本丸・二の丸・三の丸が直線上に連続して並ぶ形式で、水戸城・盛岡城・諏訪高島城など平城に多くあります。

 輪郭式は環郭式とも言われ、本丸を中心に据え、二の丸・三の丸を同心円的に配置します。大坂城・駿府城などがこれであり、二条城もこれに準じる形になっています。

 渦郭式は「の」の字型とか螺旋型と言った方がわかりやすいかもしれません。本丸を中心に二の丸・三の丸を渦巻状に配置します。平山城の姫路城はその例ですが、平城の江戸城などは総郭まで展開しています。

 これらの形式は色々な変化があり、いくつかの複合形もありますが、特殊な形式としては幕末につくられた洋式城郭もあります。たとえば五稜郭のように平地に5星形の堀を掘り、星形の突端に稜堡をつくりました。築造例は函館の五稜郭や長野県の龍岡城などしかありません。

3 縄張の工夫

 縄張とは郭や防御施設の配置をいいます。出入り口や塁線の設計には防御の工夫がこらされました。主要なものを概観していきます。

 まず「虎口」とは城の防御した出入り口のことをいいます。「小口」とも書きます。出入り口は城の攻防の要となるため、戦国期以降に急激に発達しました。発達は道を曲げて直進を防ぐことと、防御と攻撃の特殊な空間・虎口空間を設ける二つの方法を組み合わせることが共通した方法でした。

 平入り虎口はもっとも基本的な出入り口で弥生時代の環濠集落にも、戦国時代の城館にもある普遍的なものです。

 両袖虎口は道の屈曲はありませんが、虎口空間を持つものです。門の前に到達した敵兵に対して正面だけでなく両側面からも迎撃できるものでした。武田氏が好んで用いました。

 食い違い虎口は、塁線の切れ目をずらして作った出入り口です。道を屈曲させることで進入を効率よく防ぎ、すばやく攻めだします。城外の正面から門が見えないため、出入り口を突破されにくくなっていました。織田信長の岐阜城千畳敷虎口が代表例です。

 内枡形は道の屈曲と虎口空間を組み合わせた出入り口です。虎口空間を挟んで前後に二つの門を使います。外側の門を閉めれば塁線と一続きになって防御力に優れました。江戸時代の城の出入り口にもっとも多い形式です。江戸城が代表例です。

 外枡形は外側に突出した出入り口です。城外に門部分が一歩出ることによって出撃能力を高めました。初期の代表例は安土城の黒金門です。近世初頭には外枡形をいくつも重ねて攻めだしの城道をつくることが多くありました。代表例に熊本城や文禄・慶長の役の倭城などです。

 「馬出し」とは堀の対岸に出撃のための虎口空間を突出させたものです。外枡形とともに出撃能力に優れました。外枡形がおもに山城に用いられたのに対して、馬出しはおもに平城に用いられました。後北条氏や武田氏が早くから使いました。これらに少し遅れて織豊系城郭でも使用し、それが江戸時代の城にも受け継がれました。

 馬出しをとくに設けたものから、郭を馬出しとして見立てる方向に発達しました。代表例は広島城・名古屋城・駿府城などです。

 「横矢」とは塁線にわざと屈曲をつけて城壁に迫った敵兵の正面だけでなく、側面に向かっても弓矢・鉄砲などで防射を行えるようにすることです。敵側面への防射を横矢掛けといいます。
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