城の美観を彩るさまざまな破風

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1 破風とは

 破風というものは、屋根の妻側の部分の造りのことです。大規模な家だけでなく、神社仏閣の建築物や城の天守部分にも広く使用されました。一般的には破風板がつけられます。破風板とはその建築に相応しい形状なものをつけたりするものです。城の場合は大きな破風板に漆を塗った上で彫刻を施した板を取り付けたものが多くあります。その彫刻を施した板を「懸魚」といいます。こうした破風は直接城の防備に役立つというものではありません。基本的には城の美観を整えるものとして使用されています。

 破風にはいくつかの種類の形式があります。また、単独ではなく複数の形式を組み合わせたものもあります。代表的なものとしては「千鳥破風」「唐破風」「入母屋破風」「切妻破風」などがあります。それぞれの破風が使用されている城を見ていきます。

2 破風が使われている城

 複数の破風が使用されている有名な城としては彦根城があります。軍備的にも優れた船ですが、この城のさらに優れたところはその美観です。1622年から20年近い歳月を要して造られたこの城は「彦根市史」に「周辺の敏満寺・布施寺などの古寺址や、大津・長浜・安土などの古城から石を運び、諸国から動員された石工が石垣を築いた」とあります。

 西の丸出郭の石垣造りについて「石垣造りに加わった石工は、安土城の天守造営の経験を持ち、『あふな築』という石垣築を工夫した江州坂本の穴太の職人だった」とあります。そして、破風が造られました。ここでは「千鳥破風」「唐破風」「入母屋破風」「切妻破風」すべてが使用されており、美観にこだわった造りが印象的です。

3 様々な種類の破風

 入母屋破風は東アジアで広く見られる破風です。日本では法隆寺金堂などの神社仏閣や二条城の御殿、姫路城の大天守などに見られます。姫路城には大天守と三層の小天守三基があり、小天守は渡り櫓で結ばれ、連立式天守の威容を見せています。白い外観の美しさとともに、入母屋破風を中心に千鳥破風、唐破風を交互に組み合わせた屋根の美しさがあります。そして寺院建築から取り入れられた花頭窓や格子窓、武者窓などの窓も幾重にもなる屋根の庇の線とうまく調和して、躍動感をそえています。西側の鷲山には西の丸があり、現存するのは千姫のため本多氏が建てたものです。姫路城はこうした姫山と鷲山を取り巻き、内堀を基点として中堀、外堀が螺旋状となり、さらに本丸、二の丸など大小の諸櫓が結び合い、連立式城郭を形成しています。破風はそういった城の偉容をあらわす象徴として働いているのです。

 この入母屋破風の系列として比翼入母屋破風があります。これは規模の大きな天守に見られます。記録上では福山城、高松城、名古屋城などに見られますが、現存しているものとしては姫路城の大天守のみです。

 切妻破風は比較的小規模で簡素に造られることが多い破風です。現存城郭では、まず弘前城の天守があります。弘前城は寛永四年(1627年)9月、落雷にあって五層の天守閣が炎上、焼失しました。天守閣の鯱に雷が落ち、三層目が焼け、そこにつるしてあった時の鐘が二層目に貯蔵されていた火薬の上に落下して大爆発を起こしたといいます。

 あとは水城として有名な讃岐高松城の櫓や江戸城の富士見櫓などでも見ることができます。

 千鳥破風は他の破風と組み合わせて使われることも多いシンプルな破風です。その千鳥破風を二つ並列して置いたのは比翼千鳥破風です。現存している城郭では宇和島城の天守に見られます。この宇和島城は築城名人といわれた藤堂高虎が造ったものです。その後、富田氏を経て伊達秀宗が入封、明治まで十二代250年の居城として栄えました。

 現存する天守閣は、秀宗入国後に改築されたものです。この天守閣は戦国時代の城郭に見られるような軍事的性格を極力否定しています。すなわち、「石落とし」や「狭間」などを作らず、式台付きの玄関をあしらい、各層に千鳥破風、唐破風をたくみに配置することによって、外観を一段と美しく荘重に見せる工夫が随所に払われています。このあたりに建築・改修された城から軍事的・機能的な中世の城郭から平和時代の美観重視の城へと変貌していったといえます。
 そして唐破風があります。唐破風は日本独特のもので「向唐破風」と「軒唐破風」があります。この向唐破風は現存している天守としては宇和島城と丸亀城という四国の二つの城があります。丸亀城は亀山の頂に築かれた平山城です。本丸に残る天守閣は三層三階の小造りなものですが、大手から見上げるときに実に堂々とした風格を見せるのは他に比類なしとされる大石垣と破風の見事さゆえです。また出窓として作られたものには松本城や犬山城、松山城などがあります。犬山城の天守閣は現存する数少ない全国の天守のうちでも最古のものであり、国宝です。小振りながら三層五重の内部は梁の木組み、急傾斜の段梯子など昔のままで、外部には向唐破風で彩られた出窓が飾られています。

 軒唐破風は寺社仏閣などで多く見られる破風です。
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