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江戸の風情を伝える鬼灯(ホオズキ)の魅力と楽しみ

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鬼灯ほおずき)は、全草が平安時代の頃に、すでに薬草として用いられていて、子供のおもちゃとしても親しまれるようになったのは、江戸時代からと言われています。

鬼灯は、オレンジ色の紙風船のような袋の中に、ピカピカしたオレンジ色の小さなプチトマトのような実が入っています。
日本国内で古くから育てられてきた鬼灯は、観賞用の鬼灯ですが、それとは別に、袋も中の実も観賞用より落ち着いた色合いの、中南米が原産の甘酸っぱくておいしい食用の鬼灯もあります。

鬼灯は、お盆に欠かせないお供えものであり、浅草寺のほおずき市は毎年大勢の人で賑わいます。
なぜ鬼灯をお盆のお供え物にするのか、ほおずき市の由来とともに、鬼灯の袋や実の楽しみ方も含めて、鬼灯についてご紹介していきましょう。

ご先祖様の足元を照らして中に宿っていただくために

古来より、鬼灯の紙風船のような袋と、中に守られるように入っているオレンジ色の艶のある実は、様々な効能がある薬としてだけでなく、お盆に欠かせないお供え物としても大切にされてきました。

古来、日本では、お盆の期間中、ご先祖さまの霊が我が家に戻られ、滞在されたのち、あの世にまた戻っていくと考えられていました。
きゅうりの馬、ナスの牛とともに、鬼灯は欠かせないお盆のお供え物です。

ご先祖様の乗り物として、すばやく戻れるようにきゅうりの馬を飾り、お帰りのときはゆっくりしてもらえるようにナスの牛を飾りました。
鬼灯の赤い実は、ちょうちんのように見えることから、お盆の里帰りの時、ご先祖さまの足元を照らしてくれるあかりになると考えられていました。
また、お盆の里帰りの間、ご先祖様の霊が袋の中に宿ると考えられていました。

浅草寺の縁日とほおずき市

江戸時代から続く浅草の夏の風物詩として、7月9、10日に、浅草寺境内に数多くの鬼灯の屋台が立ち並びます。
7月10日に浅草寺にお参りすると、46000日お参りしたのと同じ御利益があるとされているため、全国から多数の参拝客があり、鬼灯を売る店は、現在は100軒にのぼります。

縁日と功徳日

「縁日」というと、屋台が神社仏閣の境内に立ち並ぶ日と思いがちですが、神様や仏様と縁を深く結んで格別のご利益を受けることができる日を「縁のある日=縁日」といいます。
中国から伝わった「三十日秘仏」が縁日の基礎となっていて、ひと月を30日として、30日それぞれの日に縁日にあたる神様や仏様が決められています。

平安時代から毎月18日が観世音菩薩の縁日とされていますが、室町時代より、寺社ごとに「功徳日」という、その日に参拝すると100日分、1000日分などの功徳が得られる日がもうけられるようになりました。

浅草寺の四万六千日の縁日

浅草寺の御本尊は、聖観世音菩薩なので、浅草寺の縁日といえば、観世音菩薩の功徳に感謝して参拝する日です。
浅草寺では現在、月に1回功徳日が設けられ、そのうちの7月10日が最大の46000日分の功徳日とされています。
46000日は126年分に相当し、つまりは一生分に相当します。
7月10日の浅草寺の功徳日は、「一生分の功徳が得られる縁日」として、江戸時代には定着し、前日の9日から人で賑わうため、7月9、10日が縁日とされるようになりました。
やがて、四万六千日の縁日は浅草寺以外の寺社でも行われるようになりました。

四万六千日の縁日のほおずき
江戸時代、鬼灯の実を水で丸呑みすると大人でも子供でも治る病があると考えられていました。
芝の愛宕神社では6月24日に茅の輪くぐりお参りすれば千日分のご利益がある「功徳日」とされ、この愛宕権現の縁日には、ほおずき市が立っていて、ほおずきを求める人で賑わっていました。

愛宕神社の千日詣りを、浅草寺の観音功徳日にならって「四万六千日」と呼んでいたところ、四万六千日なら浅草寺が本家本元ということで、浅草寺境内でもほおずき市が立つようになり、ほおずき市の本家の愛宕神社より賑わうようになりました。

鬼灯を育てるには

ほおづき市は6月末〜7月上旬に行われますが、本来の鬼灯が赤くなる8〜9月よりも少し早いので、成長促進剤などで早く赤くしています。
ほおづき市で購入した鬼灯は、秋になると葉が枯れてきて、冬には枯れてしまいますが、ここで栽培終了にする必要はありません。翌年も育てることができます。

日当たりの良いところで水切れに注意して

鬼灯は乾燥に弱いので水切れに注意して育てますが、常時湿った土では根腐れしてしまうので、表面の土が乾いたらたっぷり水やりをしましょう。
草丈が20〜30cmになると倒れやすくなるので、支柱を立てて管理するため、ほおずき市の鬼灯はあんどん仕立てになっています。

6〜7月頃、白くて小さいナス科らしい花が咲き、受粉がうまくいくと花後に実が育っていきますが、花の裏側についていた萼が大きくなってきて袋状になってきて、実を包み込んでいきます。

冬に地上部が枯れてもまだ捨てないで

鬼灯は、秋になると葉っぱが枯れはじめ、冬になると地上部が枯れてしまうので、栽培終了と思いがちですが、鬼灯は地下部が越冬して、春にまた育ち始める多年草です。

鬼灯の地上部分が枯れてしまったら、地際で刈り取って、地下茎を越冬させます。
3〜4月に地下茎を掘り出して株分けし、翌年は地下茎から育てます。

鬼灯を種から育てるには

鬼灯の実のついた枝はどこでも買えるので、この中の実から種を取って冷蔵庫で保存しておきましょう。
鬼灯の種の発芽温度は20〜30℃と高めなので、4月中旬〜5月中旬頃の、気温が高くなってから種まきしましょう。

鬼灯は発芽率が高くないので、多めにまいて、育ったものを間引きながら育てます。
本葉が4〜5枚になったら鉢に苗を移して育てます。
種まきが間に合わなかった場合は、4〜5月頃に苗が出回るので苗から育てることもできますが、苗の流通量は多くありません。

鬼灯の苗の植え付け用土は普通の培養土で構いません。
6号以上の大きさの鉢に複数本育てます。

鬼灯の袋と実を楽しむ

鬼灯のオレンジ色の紙風船のような袋状のものは、花の付け根についていた萼が大きくなったもので、はじめは緑色をしていて、袋状に成長し、8月ごろにはオレンジ色に色づいてきます。
鬼灯の袋の中には、つややかなオレンジ色の丸い実が包まれています。

鬼灯のオレンジ色の丸い実は、平安時代から生薬として用いられ、江戸時代から子供のおもちゃとしても愛用されるようになりました。

■透かし鬼灯(網鬼灯
鬼灯の袋の葉脈だけが残った網状の鬼灯を「透かし鬼灯(網鬼灯)」といいます。
秋が深まると自然に作り出されることもありますが、鬼灯を水から出ないようにしながら10日ほど水につけておくことで、作ることもできます。

水で葉脈の周りを腐らせるので、水が濁ってきたら出来上がりのサインです。
水を捨て、葉脈の周りに残ったものを、古歯ブラシなどで優しくこそげ落として仕上げます。葉脈の周りを腐らせるので、作っている間や水を捨てる時、悪臭がします。
そのまま飾っても可愛らしいのですが、中の実は水につけられていたこともあって、腐りやすいので、長く飾りたいときは実は取り出しましょう。

真っ白な透かし鬼灯(網鬼灯)にしたいときは、塩素系漂白剤につけて漂白すると白くなります。
LEDランプの先に透かし鬼灯(網鬼灯)をかぶせた鬼灯ランプも人気があります。

鬼灯
鬼灯の実を、袋から取り外さないまま、指でもみもみしてぷよぷよにしたあと、袋と実のつなぎ目から、裂けてしまわないように気をつけて、少しずつ左右に回して剥がしていきます。 中の液が多少は出てきますが、失敗ではないのでそのまま続けましょう。
実の皮が破れたり裂けたりしたら失敗なので、新しい実でチャレンジし直しましょう。

中の実がきれいほぐれてくると、実の皮だけがくるくる回るようになるので、そーっと皮を引っ張って、中の実と皮を分けてしまいます。

取れた鬼灯の実の皮を水で洗ったら、鬼灯笛の出来上がりです。
口に含んで膨らませながら吹くと音がします。
鬼灯笛は、水の中に入れておくと数日持ちます。

監修:きなりのすもも
16年前に趣味でバラ栽培をはじめたのをきっかけに、花木、観葉植物多肉植物
ハーブなど常時100種を超える植物を育て、弱った見切り苗や幼苗のリカバリー、
一年草扱いされている多年草の多年栽培などに取り組んでいます。

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