将棋

棋士は名人を目指し、人生をかけて戦う!『将棋順位戦の仕組み』はこうだ!知れば面白さ倍増!

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将棋界では様々なタイトル戦があります。その最高峰が名人戦です。2016年には20代の佐藤天彦名人が誕生しました。 その名人戦の予選リーグのような位置づけにあたるのが順位戦です。 順位戦にはリーグのランクがあり、普通はクラスと呼んでいます。棋士は所属するクラスによって対局料が変わってきます。 また、現役を続けるためには順位戦で勝ち続ける必要があるため、棋士にとって順位戦は重要なものとなっています。 今回はこの将棋の順位戦の仕組みについて説明します。

順位戦にはクラスがある

将棋の順位戦にはクラスがあり、下からC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と分かれています。 順位戦に参加する新人の棋士は、誰もがC級2組からのスタートになります。 C級2組で優秀な成績を残せばC級1組に上がり、C級1組で勝てばB級2組に上がりといった仕組みで、一つずつクラスを上げていく必要があります。 順位戦は1年間を通して戦います。よって昇級も1年ごとです。 A級1位になって挑戦できる名人戦にたどり着くには、最短でも5年間は順位戦を戦う必要があります。

各クラスの昇級と降級の条件は

順位戦で勝ち続けると昇級していくことになりますが、逆に負け続けると降級することになります。
ここでは各クラスの昇級と降級の条件をまとめてみました。

・C級2組 10戦
昇級 上位3名。ただし全勝は昇級
降級 参加人数÷5に降級点がつき、3つたまると降級となりフリークラス行きになる

・C級1組 10戦
昇級 上位2名 ただし全勝は昇級
降級 参加人数÷5に降級点がつき、2つたまると降級

・B級2組 10戦
昇級 上位2名 ただし全勝は昇級
降級 参加人数÷5に降級点がつき、2つたまると降級

・B級1組 総当り
昇級 上位2名
降級 基本下位2名

・A級 総当り
名人挑戦 1名
降級 基本下位2名

以上です。降級については、指し分け以上の成績だった場合、降級や降級点から逃れられるという規定がありますが、あまり発生することはありません。

また、降級点は勝ち越すか、指し分けを2年連続で行うと、一つ消すことができます。C級2組の1つ目の降級点は昇級か降級をしない限り消せません。

このシステムの元、棋士は名人を目指して人生をかけて戦うのです。

順位戦は昇級が難しい

順位戦で昇級することはかなり難しいです。7勝3敗という優秀な成績を続けていても、昇級できないことが普通です。

70期順位戦C級2組ではある悲劇が起こりました。 なんと9勝1敗だった菅井五段(当時)が昇級できなかったのです。 理由は、その年は奇跡的に全勝者が3人出たためです。
運が悪いと9割の成績でも上に上がれないのが順位戦なのです。
逆に56期順位戦A級では米永邦雄永世棋聖が4勝5敗というまずまずの成績にも関わらず降級してしまうということが起こりました。 このように順位戦は何があるかわかりません。 だからこそのドラマが生まれるのです。

名人を目指すため、自分が生活していくために棋士は順位戦で必死に戦います。 勝ち上がっていく者もいれば、負けて去る者もいる、こうした真剣勝負に、私達は心打たれるのでしょう。

また、将棋界には米長哲学という言葉があります。
自分にとっては消化試合でも相手にとって重要な対局であれば全力で戦うというものですが、この米長哲学によって、なんでもない相手に負かされたことによって昇級を逃したり、降級になってしまった棋士が存在します。
この言葉のもととなった米長邦雄永世棋聖も、かつて昇級と関係のない対局でA級への昇級がかかっていた大野源一八段(当時)に対して羽織袴の姿で対局し、勝利したという経験があります。 大野源一八段はその影響で昇級を逃してしまったのでした。
人と人とのぶつかりあい、人間ドラマこそが順位戦の魅力と言えるでしょう。

名人になるには安定した力が必要

将棋の名人は、特別な存在として扱われています。順位戦で5年以上かけないと名人になれないのも、特別だからこそだと思われます。
順位戦は持ち時間が6時間と、かなり長いです。これは今まで述べてきたように、名人そして順位戦が大切であるということの表れです。 持ち時間を長くして、死力の限り戦うべしというメッセージが込められていると言っても過言ではないでしょう。 また、持ち時間が長いことで、ベテランの棋士が戦いやすいという側面もあります。 年をとると、どれだけ強い人でも、若い頃のように反射神経でぱぱっと手が浮かばなくなるものです。 時間をかけてじっくりとうなって手を見つけることが必要になってきます。 順位戦はそのようなベテラン棋士でも活躍しやすいようになっていると言えます。 期待の強豪若手が、ベテラン棋士に負けてしまうということは、順位戦ではよくあります。 これがまたおもしろいところで、修行時代に記録係として横で見ていた時はたいしたことがないように感じていたのに、いざ盤を挟んで対局して見ると、想像以上の強さで驚いたという、とある棋士の言葉があります。 また、順位戦では、名人になるために何回も昇級しなければならないことから、長期的な安定した力が必要になってきます。 人には勢いがある時があります。その1年、2年は勝ちまくるという時期があります。
若手でいきなりタイトル挑戦を決めるのは、そういった時期にぴたりとはまったケースです。 しかし、それでは名人にはなれないのです。

そのような勢いある若手が順位戦では全く昇級できないということはざらにあります。 さらにはタイトルホルダーがA級にいけないというケースもありました。 名人になるには、安定した力が必要なのです。 その場の勢いだけで名人になることはできません。

まとめ

いかがでしたか。順位戦の仕組みについて、少しでも理解していただけたら幸いです。
また、順位戦にまつわるドラマは、それこそ全部書いていたら本ができてしまうほどに豊富です。きっとこれからも様々な人間ドラマが生まれていくことでしょう。
佐藤天彦名人に対して、同じ20代以下の棋士は自分だって追いついてやるという気持ちで必死になるでしょうし、ベテランの棋士も、まだまだ負けられないという気持ちで順位戦を戦うことでしょう。

最新戦法に注目することも楽しいですが、棋士が何を思い、どういう姿勢で対局に臨んでいるのか注目すると、将棋の対局をよりおもしろく感じることができるでしょう。
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