将棋

女流棋士では満足できない!?女性初のプロ棋士を狙う、出雲のイナズマこと里見香奈の伝説エピソード

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里見 香奈(さとみ かな)

プロフィール

1992年3月2日生まれ
島根県出雲市出身
師匠 森けい二九段

みなさんは里見香奈棋士をご存知ですか?
通称「出雲のイナヅマ」と呼ばれ、女流棋士同士の対局では圧倒的な結果を出しています。
女流棋士のタイトル戦である女王、女流王座、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花すべてのタイトルを1度は手にしており、タイトルの獲得総数は通算で20期を超えています。

そんな圧倒的な実力を持つ里見香奈棋士の伝説エピソードを紹介していきたいと思います。

1.里見香奈棋士の経歴

里見香奈棋士は父と兄が将棋を指している姿を見たことがきっかけで5歳のころから将棋を始めました。 6歳のころには町の将棋道場に通い始め、なんと小学5年生のときには女性だけで行われるアマチュアの将棋全国大会で優勝するほどの実力を持っていました。

その後すぐに女流育成会(男性棋士でいうところの奨励会)に入会し、2期連続で一位の成績を収めました。 その結果、2004年10月に中学1年生(当時12歳6ヶ月)のという史上4番目の若さで女流棋士になりました。

女流棋士の育成制度が変わった2003年以降で、通算2期での育成会通過は里見香奈棋士ただ1人しかいません。 当時から圧倒的な棋力で育成会ではまったく敵なしだったそうです。

女流棋士になってからもその実力を発揮して、各種タイトル戦、リーグ戦で好成績を収めました。 そして女流棋士になってから4年後の2008年には、念願の初タイトルである倉敷藤花に輝きました。 将棋連盟関西支部所属の女流棋士によるタイトル獲得は史上初で、関西の将棋界は大いに盛り上がりました。

翌年2009年には男性棋士の稲葉陽(当時四段)を破り、女流棋士が公式戦において男性棋士に勝った最年少記録を更新しました。 その時の里見香奈棋士の年齢は16歳でした。

男性棋士に勝つほどまでに実力をつけた里見香奈棋士はその後も数々の女流タイトル戦でタイトルを奪取し、17歳の時には女流のタイトル戦の最高峰である女流名人を奪取しました。

2.プロ棋士への挑戦

一般の方には分かりづらいかもしれませんが、実はプロ棋士と女流棋士は別のものなのです。 女流棋士というのは女流棋士育成会を勝ち抜いてなることができます。 一方プロ棋士は奨励会というプロ棋士育成機関を勝ち抜かなければなることができません。

なぜ分けられているかというと、将棋の世界では男性と女性で圧倒的な実力差があることが原因なのです。 実力差があるので、男性は奨励会、女性は女流育成会に入るという慣例になっていました。 そうやって分けられることが当たり前で、女性は女流育成会に入って女流棋士になるのが常識とされていました。

そんな慣例に異を唱えたのが里見香奈棋士でした。 女性でも男性と対等に戦える、奨励会を勝ち抜いてみせる、ということで奨励会に挑戦することを決意しました。 2012年には12勝4敗の成績で奨励会初段に昇進し、女性初の奨励会初段達成者となりました。

将棋ファンにはよく知られていますが、プロ棋士になるには奨励会で三段になり、三段リーグで1位か2位の成績を出さなければなりません。 里見香奈棋士は三段リーグに向けて順調に段位を獲得し、2014年についに奨励会三段に昇格しました。 女性での奨励会三段到達は史上初で、そのまま勝ち進んで女性初のプロ棋士誕生かと将棋界は大いに盛り上がりました。

3.突然の休養、そして復帰

女性初のプロ棋士誕生かと将棋界が盛り上がっていた中、里見香奈棋士は休養を発表しました。 あまりにも突然のことで、将棋関係者や将棋ファンは大いに動揺しました。

休養の理由は体調不良ということでした。 最初は驚きを隠せなかった将棋関係者や将棋ファンでしたが、女流タイトル戦と奨励会の掛け持ちによる疲労や、女性初のプロ棋士誕生への周りの期待からくる精神的なプレッシャーがあったのだろうということで、里見香奈棋士の体調を心配する声が多く聞かれました。

休養を発表した直後にあった里見香奈女流名人の戴冠を祝うパーティーには、なんと羽生善治棋士も駆けつけて周囲を驚かせました。 タイトル戦や取材などで普段スケジュールが一杯の羽生善治棋士が女流棋士のパーティーに顔を出すことは異例中の異例だったそうです。

あの羽生善治棋士が現れたということで急遽壇上で挨拶をしてもらうことになったそうです。 その挨拶の中で「ゆっくりと休養して万全の体調でまた素晴らしい将棋を見せてください」と里見香奈棋士にメッセージを送ったそうです。

そういった周囲の温かい励ましもあり、翌年には無事復帰を果たすことができました。 流石に三段リーグの壁は厚く1期で突破することはかないませんでしたが、現在も三段リーグで戦い続けています。 もちろん女流棋士としてもしっかり成績の残しており、現在も複数の女流タイトルを保持しています。

女性初のプロ棋士が期待されている里見香奈棋士。 プレッシャーに負けないで是非とも三段リーグを勝ち抜いてほしいですね。
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