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野趣あふれる小ぶりのアジサイ「ヤマアジサイ」

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ヤマアジサイはアジサイの一つで、本州の太平洋側に広く自生していて、福島県から四国・九州まで分布しています。沢など水辺によく生えていたので「サワアジサイ」とも呼ばれています。ヤマアジサイの花は一般に「アジサイ」として園芸店で流通しているガクアジサイより小ぶりで、葉っぱも大部分が小ぶりです。

ヤマアジサイの花も、中心の小さな粒々の周りに鮮やかな色の花をつけていますが、鮮やかで花に見える周りの大きなもの方が「装飾花」と呼ばれている「ガク」で、中心部に寄り集まっている小さな粒々のようなものの方が本当のヤマアジサイの花になります。

ヤマアジサイはガクアジサイより全体的に小さめに育つので、鉢植えや盆栽として育てやすく、野趣あふれる姿に人気があります。

花色がpHで変わるものと変わらないものが

アジサイの花の色がpHで変わるのはよく知られており、土が酸性寄りだと青色に、アルカリ性寄りだと赤色に花色が変わります。

酸性雨の影響もあって、庭植えにしていると、徐々に酸性寄りになるので青色が強くなっていくこともあり、鹿沼土など酸性寄りの土に植えると青色が強く出る傾向があります。これに対して、苦土石灰を少量まいてpHを調整しておくと、赤色の花を楽しむことができます。土壌のpH調整が中途半端の場合、アジサイが色とりどりの花を咲かせてしまうこともあります。

ヤマアジサイは、pHによらず花色が変わらない品種「紅(くれない)」のようなものもあれば、pHによってアジサイらしい色変わりを見せる品種「藍姫(あいひめ)」のようなものもあるため、色が変わるとも変わらないとも一概には言えません。

ヤマアジサイの日当たりと置き場所

ヤマアジサイは本来、木の下などのやや明るい、日当たりがそれほど良いわけではないところに育ちます。水辺の近くで育つので水切れにはとても弱く、水切れや強い直射日光に当たるとすぐに枯れたようになってしまいます。

ヤマアジサイに限らず、アジサイは花に見える部分も含めて株全体を覆っている大部分が「葉」なので、水やりするときは下からではなく、上から水をたっぷりかけるようにすると、真夏でも葉焼けなしで育てることができます。

真昼に水やりすると花が傷んでしまうと躊躇していると、それだけでもあっという間に枯れ始めるので、真昼でもぐったりしているときは上からしっかり水やりする方が葉焼けや花が傷むのを防ぐことができます。

ヤマアジサイも鉢植えより庭植えがおすすめ

ヤマアジサイはアジサイとしては小ぶりの方ですが、庭植えにすると水切れしにくく、冬越しも容易になるので、鉢植えより庭植えにする方が育てやすくなります。

庭植えの場合は、植穴にしっかりと有機堆肥腐葉土を混ぜてから植え付けし、冬に入る前に、敷き藁などして寒さ除けするとき、株元に穴を掘って有機堆肥を埋めて土をかぶせておく「寒肥」をしておくと翌年の花つきがよくなります。開花前や花後に株もとに緩効性化成肥料をまくこともあります。

鉢植えにするときは、鉢が小さい方がより水切れしやすいことを念頭に置きながら、水切れに十分注意して栽培しましょう。真夏は鉢皿に水をためておく「腰水」をして管理すると水枯れしにくくなります。また、鉢が小さいと、冬の寒さで根が凍って枯れてしまうこともあるので、よりしっかりとした鉢の防寒対策が必要になってきます。

鉢植えのヤマアジサイの植え付けと植え替え

鉢植えヤマアジサイの植え付けには、赤玉土鹿沼土と言った粒状の土のみを用いるか、粒状の土に腐葉土ピートモス・川砂・バーミキュライトなどをブレンドして水はけや水持ちを改良させたものを用います。植え替えは2〜3年ごとに行い、花後に剪定するときに一緒に行うのがおすすめです。

肥料は花が終わった6月ごろ、緩効性化成肥料を株もとに置き、冬になる前にペレット状になった完熟発酵肥料を寒肥として与えます。完熟発酵肥料は施肥してから徐々に分解されて効果を発揮するので、ゆっくりと長く効いてきますが、株もとに置いただけでは虫が寄り付きやすくにおいもするので、用いる場合は浅くてもよいので土に埋めるようにしましょう。肥料によっても土壌のpHが変化して、ヤマアジサイの色が変わることがあります。

ヤマアジサイの花殻摘みと剪定

アジサイは翌年の花芽を8月ごろにつけるので、それ以降に剪定すると花芽まで切り取ってしまいがちで、翌年花が咲かなくなってしまうことがあります。この性質はヤマアジサイも同じです。剪定するなら花後すぐに、7月末までに剪定を済ませます。

鉢植えで育てている場合は、大きくなりすぎないように・形を整えるために、絡まった枝を整理し、枝分かれしたところから2、3節残してその上を切り落とします。

切り落とした枝は、挿し木に使ってヤマアジサイを増やすこともできます。剪定枝の2〜3節分を挿し穂にして、葉先を半分ほど切り詰めてから30分ほど水の中に入れて水揚げさせます。湿らせた鹿沼土赤玉土を敷き詰めた苗床を用意し、棒で穴をあけたところに挿したら涼しいところに置いておいて、水を切らさないように管理します。新芽が伸びてきたら挿し木に成功しています。挿し木後3か月くらいは苗床で育て、その後は新しく植えつけて、新しい苗木として育てます。

ヤマアジサイを自然放置にすることも

7月末までに剪定を済ませたくても、まだきれいに咲いているとなかなか剪定しにくいものがあります。また、ヤマアジサイはあまり大きくならない上に、剪定しなくても花つきが悪くなりません。

剪定のタイミングを逃した時や、剪定したくないときは、剪定なしで育てます。まったく剪定しないで花殻摘みもせず、自然任せにした場合は、翌年春に枝先に花芽がついているのを確認してから花殻や生育の悪い枝を剪定するようにします。

枯れた花をつけっぱなしにするので、冬の間中、全体的に枯れたような姿になって見栄えはしませんが、アジサイの装飾花は「ガク」なので、秋になるとガクが真っ赤に紅葉します。剪定しないでヤマアジサイを育てると、花後にも、いつもとはまた違ったアジサイの秋花を楽しむことができます。

清楚で美しいヤマアジサイの魅力と人気品種

ヤマアジサイは、園芸店の店頭で色とりどりで競うように並べられている鉢植えあじさいに比べると、葉や花が小さいものが多く、全体的にシックで落ち着いた雰囲気を持っています。
コンパクトな樹形から、ヤマアジサイ寄せ植えの材料にしたり、小さな鉢植えや盆栽で楽しむこともできます。

ヤマアジサイも水をとても欲しがる植物なので、小さい鉢の場合は特に、夏場に水切れを起こしやすくなってしまいます。
水切れに注意して、乾燥しがちなときは、鉢皿に水をためて管理する「腰水」なども利用して育てるようにしましょう。
落ち着いた魅力にあふれるヤマアジサイの人気品種について、いくつかご紹介していきましょう。

土質によらず赤い花を咲かせる「紅」

紅(クレナイ)は、咲き始めに白い花が咲き、咲き進むと少しずつ赤く染まっていき、段々と赤みが増して、最終的に咲き切ると真紅になります。
紅は色変わりがとても魅力的で、色の濃さは気温や気候にも左右され、昼夜の寒暖差が大きく、特に夜に気温が大きく下がるとより鮮やかに色づきます。

花も小さめで、葉も小さめ、装飾花である色変わりするガクの数も少なめですが、鮮やかな赤色は見応えがあります。
紅は、土質が酸性でもアルカリ性でも赤い花を咲かせます。

シーボルトの幻の花「七段花」

シーボルトが書いた日本植物誌に「七段花(シチダンカ)」の記述があるものの、記述にあるようなヤマアジサイが長い間見つからなかったため、幻の花とされていました。
そんな中、1959年に兵庫県で、専門家ではない人によって、「七段花」はひょっこり見つかりました。

七段花の装飾花は八重咲きで、中央部分の両性花は退化していて開花に至ることはほとんどなく、装飾花がきれいに咲きほこるころ、枯れ落ちてしまいます。
七段花は土のPHによらず、花色が変化します。
基本は薄い水色ですが、薄いピンク色になったり、濃い紫色や紺色に変化することもあります。 七段花は、花も葉も小さめで、樹高も大きくならないので、鉢植えでも育てやすい品種です。

丸みのある装飾花が可愛らしい「瀬戸の月」

瀬戸の月は、装飾花が丸みを帯びていて、独特の雰囲気を持っているヤマアジサイです。
土の酸度を調整して、酸性寄りにすると淡い水色になり、アルカリ性寄りにすると淡いピンク色になり、アジサイらしい色変わりをする品種です。
葉は冬に黄色く色づいて落葉します。

装飾花がない「奥多摩コアジサイ」

奥多摩コアジサイは、淡い水色か淡いピンク色の花をつけますが、装飾花と言われるアジサイらしい花びらに見えるガクがついていません。
奥多摩で発見された、花がよく咲くアジサイですが、全体的に小ぶりに育つので、鉢植えで管理しやすくなっています。

「七変化」とおなじ?違う?「藍姫」

九州産のヤマアジサイ「七変化」を「藍姫」と改名したものと、徳島県と高知県の堺で発見されたヤマアジサイを「藍姫」とするものと、同じ「藍姫」の名前でも、2つのヤマアジサイが出回っています。
四国産の藍姫のほうが装飾花の先端が丸めに出るようです。

藍姫は、花も葉も小ぶりですが、小さめの濃い青色の花がたわわに花開きます。
赤紫から目のさめるような美しい藍色に色変わりしますが、酸性の土壌のほうが、より濃い青い色が強くでます。

涼し気な細い花びらが魅力「土佐涼風」

「土佐涼風(トサスズカゼ)」は、名前の通り、高知県原産のヤマアジサイです。
はじめはコロコロと丸い両性花が、咲き揃うと上向きに雄しべを伸ばし、ふわふわした白く細い房のように咲き、透明感のある細い花びらの装飾花が周りを彩ります。
装飾花ははじめ下を向いていますが、両性花が咲き揃う頃、上向きに開きます。

両性花は装飾花のおまけのようにあまり目立たないものが多いヤマアジサイの中で、土佐涼風は、両性花の細長い雄しべが魅力的で、細い装飾花のシックな美しさとともに引き立てあっています。

小ぶりでコロンとかわいい「紫紅梅」

「紫紅梅(シコウバイ)」は、装飾花がコロンと丸い可愛らしい花びらをしていて、花色が緑の中にほんのり赤い色が入ったような花色から、青と赤紫のコントラストの入った花色に変化していきます。
花色の濃さも変化していくので、単色の花では味わえないような、色のコントラストの微妙な変化を楽しむことができます。

徳島原産のヤマアジサイで、葉も花全体もこぶりですが、シックな色合いの中にもひと目を惹く花です。

コロンとした清楚な花が美しい「富士の滝」

富士の滝(ふじのたき)は、中心が黄緑色でコロンとした白い八重咲きの装飾花が可愛らしく咲き乱れるヤマアジサイです。
咲き始めは装飾花全体が黄緑色ですが、段々と白みを増していきます。
シュートのように伸びた枝先にたわわに花を咲かせるので、伸びた枝は切らずに育てるほうが花をより楽しめます。
花を剪定せずに秋を迎えると白い花がピンク色に染まっていき、やがて濃い紫やえんじ色に変わっていきます。

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