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江戸時代から親しまれてきた【花菖蒲】の名所とまつりで見る風情ある楽しみ方

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「何れ菖蒲アヤメ)か杜若(かきつばた)」ということわざで有名なほど種類が多い菖蒲です。
沢山の種類があって、どれも美しく見分けがつかないのですが、「菖蒲」という日本で多い品種は、アヤメとして一緒に混同されながら親しまれてきています。その全国で親しまれている「菖蒲」の名所とまつりをご紹介します。なぜ日本人が好きな花なのでしょうか。その魅力を訪ねに出掛けてみませんか。

江戸時代から広く親しまれる「花菖蒲」は江戸百景にも

菖蒲」は、アヤメアヤメ属の多年草です。アヤメ類の総称として日本で多い「菖蒲」をアヤメとして呼んでいることも多くあります。この菖蒲が咲く5〜6月には「菖蒲まつり」や「あやめ祭り」が日本各地で多く開かれます。

菖蒲」は節句を祝う花としても有名ですが、実は「菖蒲」とは種類が違うサトイモ科の「菖蒲」の葉や根茎に芳香があり、それが古くから邪気を払うという風習から、湯舟に菖蒲を浮かべて湯につかる、「菖蒲湯」として親しまれてきました。「菖蒲」と「菖蒲」は種類が違います。

菖蒲」が普及したのは江戸時代です。特に江戸中期の60年間で300近い品種が作られ、今の日本の「菖蒲」の主な品種が作られていったと言われています。
それが江戸の「葛飾堀切」で行われ、今も「堀切菖蒲園」として残っています。
この地は、江戸時代には「江戸百景」に数えられていて、鈴木春信や歌川広重の浮世絵にまで登場しているということをご存知ですか。広重の「堀切の菖蒲」では、菖蒲園を楽しんでいる当時の人々の姿が遠くに描かれています。
今の東京都葛飾区の「堀切菖蒲園」も江戸時代に作られた品種ごとに植えられていて興味深いものがあります。周りの景色はビルや高架の道路に変わってしまいましたが、「菖蒲」を愛でる人たちの姿は変わっていないのが嬉しいものです。

叙情豊かに楽しむ、花菖蒲まつり巡り

また、「菖蒲」またはアヤメは、1県16市町村、東京都2区の自治体の花になっていて、三重県では県花にも指定されています。もちろん東京都葛飾区の区の花でもあります。

そんな風に親しまれる「菖蒲」では、「菖蒲」が咲く頃「菖蒲まつり」や「あやめ祭り」が九州から北海道まで各地で開かれます。

主だった名所をご案内し、「菖蒲」の魅力と楽しみ方をご紹介します。

水辺が似合う花菖蒲

愛媛県宇和島市の「南楽園」は、四国最大規模の日本庭園でそこの大きな池沿いにある「菖蒲園」では、池沿いの水面近くに咲く、より艶やかな姿の菖蒲を見る事ができます。
池の周りを歩いて回れる池泉回遊式日本庭園は「山・里・町・海」の景観を構成していて、その水辺の光景に彩りを添えるのが5月下旬から6月中旬に咲く菖蒲です。5月中旬〜6月上旬には「菖蒲まつり」が開かれます。水辺が似合う「菖蒲」の姿を堪能してみませんか。「菖蒲」に縁どられた池に魅了されます。

水郷の里で見る「あやめ」、そして「嫁入り船」の風情

茨城県の水郷らしい「潮来」の「あやめまつり」を見にいってみませんか。5月下旬〜6月下旬に行われる「水郷潮来あやめ園」では、500種類100万株のアヤメが人々を楽しませてくれます。あやめ園の横を流れる前川をこの期間手漕ぎの「ろ舟」に乗りながらアヤメ鑑賞ができます。

実は、この期間、昭和30年代前半まで行われていた「ろ舟」に乗ってお嫁入りするという貴重な風習が再現されます。また、夜に見られるアヤメのライトアップも橋の上から見る姿が幻想的です。こちらは歴史の風情と幻想的な「アヤメ」の楽しみ方と言えます。

貴重な原種を見に行こう!

山形県長井市の「長井あやめ公園」は、江戸後期に多く品種改良された影響を受けていない、その前の時代の原種とも言うべき品種「長井古種」がある貴重な場所です。

34種類が「長井古種」を見ることができます。花の色は紫と白が主な品種になっていて、私達を古式ゆかしき菖蒲本来の美しさの世界で楽しませてくれます。山形県では6月初旬〜7月初めまで開かれる夏の花アヤメ」を愛でる「長井あやめまつり」が開かれ、全部で500種100万本の花が咲き揃います。アヤメ本来の美しさを楽しみに「長井古種」を訪ねてみましょう。

自分で花菖蒲を育てるには

こんなに美しい菖蒲まつりの光景を見たら、自分でも菖蒲を育ててみたくなりますね。菖蒲はもともと原産地が東南アジアで、日本の気候風土にも合っていて、暑さ寒さにも強く育てやすい植物です。九州から北海道まで、広く沢山の人に親しまれています。

鉢植えでも日当たりのいい所に置いておけば育ち、乾燥し過ぎないことにさえ注意すれば大丈夫という育てやすい花で、初心者でもかなり栽培しやすい分類に入ります。

ただ、ひとつだけ注意点は、菖蒲の根は早く増えていくので小さな鉢だとすぐに根詰まりを起こしてしまうため、植木鉢に毎年植え替える必要があるということです。ということは、逆に株分けをすればどんどん増やしていける花だということです。

紫以外にも多彩な「花菖蒲」

菖蒲と言えば、紫を思い浮かべる方が多いと思いますが、種類の多さに加え、純白系・白系・二色花系・脈入り花系・藤色系・薄赤系・ピンク系・白地濃色覆輪系・青紫に白筋系・紅紫に白筋砂子系・紫に白絞り系・紅紫系・紫に白覆輪系・純紫系黄花系など、表現しきれないほどの多彩な色の花が揃っています。

種類が多い「菖蒲」ですが、そのどれもが花びらの根元に黄色い目の形の模様があるのが特徴です。
また、あまり種類の多くない「アヤメ」は、花びらの根元に網目状の模様があるのが特徴です。「カキツバタ」も種類が少なく「花びらの根元に白い目の形の模様があることで見分けます。それぞれに、花びらの根元の色や模様が一番の見分けるコツです。花の色はいろいろありますので、花びらの根元をしっかり見ましょう。

実は、咲く場所も違っていて、水辺が似合うとよく言われますが、水辺で咲くのは「菖蒲」と「カキツバタ」で、乾いた畑で咲いているものには「アヤメ」が多く、たまに「菖蒲」のこともあると言われています。植生にも違いがあります。「菖蒲」は水辺でも乾いた所でもどちらでもよく、植える場所をさほど気にしなくても大丈夫ですが、水辺があるならその近くに植えて楽しみたくなる爽やかな花です。

「花菖蒲」に求める美しさもさまざま、清楚?風格?

さまざまな系統や品種があり、その美しさも異なる「菖蒲」ですが、少しその違いをご紹介します。それぞれに雰囲気やイメージが少しずつ異なります。
「ノハナショウブ」は夏の頃、赤紫の花を咲かせる菖蒲の先祖で、「長井古種」は「江戸系」よりも古い時代のものです。花色が変化に富んでいて、上の画像のようにどれもが清楚な美しさを持った品種です。

この「江戸系」は、品種数が最も多く、江戸中期に江戸っ子好みのキリッとした粋な感じに改良されていったものです。広い庭園などに群生させて楽しんだ品種で、菖蒲園などで見るように群生美を楽しみます。

「肥後系」は、江戸時代の終りごろ室内観賞用の鉢植えとして改良され、花が見栄えするように、堂々とした大輪で男性的な風格を備えています。「伊勢系」は、下の画像のように花弁がちりめん状で深く垂れるため女性的で柔らかな感じの、鉢植え栽培を目的にしたものです。

さらに近年のバイオテクノロジーにより誕生した「雑種系」もあって、近い品種であるカキツバタとの交配も行われています。最後に「アメリカ系」の菖蒲もあり、外国人の目により選別された豊かな色彩と花容を備えているものも開発されています。

このように、「菖蒲」と言えども少しずつ表情が違うものが多く、それぞれにその特徴と美しさを味わうことができます。「菖蒲」に求める美しさは、清楚であったり、キリッとしたものであったり、たくさん並んでいることの群生美であったり様々です。

堂々した大輪の風格やちりめん状の女性らしい柔和さを愛でたり、豊かな色彩や花びらに注目したり、「菖蒲」への思いもそれぞれです。

花菖蒲の名所とまつりから見る楽しみ方を振り返って

菖蒲」の美しさをまとめると、さまざまな「菖蒲まつり」や「あやめ祭り」が開かれるように、初夏の訪れを感じる季節の花として多くの人々が愛でてきた花と言えます。水辺に咲く群生した姿などを見て、その風情あふれる姿に魅了されてきました。

さまざまに品種改良されてはきましたが、日本らしい美しさを備える花です。昔は「江戸百景」でもあったように、今でも全国各地の美しい初夏の景色として強く印象付けられています。

鉢植えで育てる花菖蒲の育て方・株分け・植え替え

菖蒲はアジサイと同じように梅雨に咲く花です。
一輪一輪の開花期間は約1週間と短めなので、開花期間の違う菖蒲を複数育てることで長く花を楽しむことができます。

菖蒲の植え替えの時期は花が終わったらすぐです。
来年も菖蒲を楽しむために、鉢植えで育てる菖蒲の植え替え・株分けの仕方と、日常管理についてご紹介しましょう。

菖蒲園で鑑賞した花菖蒲を自宅で育てる

ご家庭に菖蒲園のような広大な栽培スペースがある方は限られているので、多くの種類で菖蒲を楽しみたい場合は、菖蒲園に菖蒲を鑑賞に行くことをオススメします。

菖蒲園は一般に菖蒲の開花期間以外は閉園していることが多いのですが、開花期間中は菖蒲の苗の販売もしているので、珍しい品種などを手に入れるのには絶好の機会になります。

菖蒲は原種に近い品種よりも、近年に開発された園芸品種の方が初心者でも育てやすくなっています。

日当たりのよい弱酸性の土壌で育てる

菖蒲は土質にあまりこだわらず国内であればどこでもよく育ちますが、花をより楽しむには日当たりがよく水はけと水持ちのよい弱酸性の土壌で育てるようにします。

鉢植えで育てる場合は、赤玉土腐葉土=7:3でブレンドした土がオススメです。

鉢を水につけておくのは蕾が育って花が終わるまで

菖蒲は乾燥に弱く、水切れすると花がきれいに開花しませんが、栽培期間中ずっと水がある状態で育てると株元が腐ってしまいます。 通常は表面の土が乾いたらたっぷりと水遣りをし、鉢皿に水をためないようにします。

蕾が育ってきて花が咲いている間は水切れに特に敏感になり、蕾が育ってきてから花が終わるまでの期間だけは水につけて育てるようにします。

鉢植えは毎年花後に植え替える

菖蒲は長い間同じ場所で栽培していると花が咲かなくなってしまうため、地植えでも2〜3年ごとに、鉢植えの場合は毎年植え替えるようにします。

花が終わったらすぐに、株がそれほど多くなければ一回り大きい鉢にそのまま植え替え、株が何本かに増えて鉢が狭くなっていたら数本ずつに株分けして植え替えるようにします。

植え替え時の注意ポイント

・ 【深植え厳禁】深植えすると株元が腐る
深植えすると株元が腐ってしまうので、株はグラグラしすぎない程度に浅植えにします。
株がグラグラして安定していないと根付きにくくなるので、支え棒をつけてしっかり固定させましょう。

・新芽が根の方向に伸びるから中央をあけて
葉っぱの葉脈には1本の面と2本の面がとあり、2本ある方の面の向きに新芽が出てきます。
根が伸びている方向や株元がぷくっと膨れて丸い形になっている方向も同じ方向なので、こちらの面が植木鉢の中央に向くようにして、鉢の中央を開けて端の方に株を植えるようにして、新芽が鉢の中央に伸びてくるように植えます。

・【元肥厳禁】肥料は根付いてから
植え付け時の土に元肥を混ぜると根が傷んでしまうので、肥料は混ぜずに赤玉土腐葉土をブレンドします。
花後すぐに植え替えをするときは小さめの鉢に植えるようにし、8月末には新芽が伸びてくるので、一回りか二回り大きな鉢に植え替えて、このときに始めて元肥を混ぜた土に植えるようにします。
8月末の植え替えでは根鉢はなるべく崩さないようにして植え替えます。

・葉っぱを25cmくらいで切り詰める
植え替え直後に長い葉っぱのままにしていると、水分の蒸発が強くなりすぎるので、葉っぱは25cmくらいの長さに切りそろえておきましょう。
はさみはあらかじめアルコールで拭いたり火であぶったりして消毒してから使いましょう。

・花が咲いた株に近い株が来年咲きやすい株
今年花が咲いた株には来年は花が咲かないので切り落としてしまいますが、その両サイドの株は来年花が咲きやすい株です。
さらにその外側の株がその次に花が咲きやすく、さらに外側の株になると花が咲く確率はかなり小さくなるので、なるべく花が咲いた株に近い位置の株をしっかり育てるようにしましょう。

・根をなるべく切り落とさないように
菖蒲の根を切り落とすと、根が伸びてくるのに時間がかかってしまうため、株が充実しにくくなるので、なるべく根を切り落とさないように植え替えをします。
株を切り分けるときは、育てる株それぞれに根がなるべくたくさんつくように切り分けましょう。

花菖蒲の植え替え手順

植え替えは、葉が枯れるまでなるべく長く栄養を蓄え続けられるように、花が終わったらなるべく早くに行いましょう。
冬には地上部が枯れてしまいますが、葉が完全に枯れるまで葉は切り落とさないようにします。

1. ポットを外して根を水洗いする

土が硬くなっているので、バケツにためた水のなかで根を洗って土を落として根をほぐします。
根が傷んだり切れたりしないように優しく洗いほぐします。

2. 花の付いていた株を根元から切り落とし、株分けする

花のついていた株は、来年は花を咲かせません。株元から切り落としておき、その両サイドの株を中心に育てるようにします。
1株ずつに完全に分けてもかまいませんが、2〜3株づつつなげたままで育てたほうが丈夫で管理もしやすくなります。

3. 鉢の端の方に株を寄せて根を中央に広げながら植える

株の片方から、同じ方向にしか根は伸びていかず、根が伸びていく方向にしか新芽が出てこないので、根の伸びている方向の反対側を鉢の端の方に寄せて、根を中央に向けて広げた状態で株を植えつけます。
株はなるべく浅植えにします。

4. グラグラしないようにしっかり支え棒をつける

株がグラグラしすぎると根付きにくくなるので、支え棒をつけてグラグラしないように固定します。
一番端っこの葉っぱに支え棒を固定すると枯れ落ちることがあるので、外から2番目の葉っぱに支え棒を固定させましょう。

5. 鉢底から水が流れ出るまで水やりし、鉢皿の水を捨てる

植えつけ後はたっぷりと水やりをすると、土が締まって株も安定しやすくなります。
いつまでも湿っていると株が腐ってしまうので、水はためないようにします。
苗が根付くまでは特に水切れは厳禁なので、表面の土が乾いたらたっぷりと水やりしましょう。

植え替え後8月末過ぎても新芽が出てこないときは

株の生育が悪いときは、アヤメキバガの幼虫がついている可能性があります。
体長が1cmくらいの赤い筋がある幼虫が株もとにいたら取り除きましょう。
葉が枯れた後、取り除いておかないと、その間に卵が隠れていることがあるので、葉が枯れた後は葉っぱを取り除いておきましょう。

花菖蒲に付きやすい害虫はテデトールで退治して

アヤメキバガ以外にも、ヨトウムシ・コガネムシ・青虫・ミノムシ・ハダニ・ナメクジなどが付くことがあります。 冬でもないのに葉が枯れてきたり、葉っぱが食い荒らされたり、場合によっては花芽を食べてしまうことがあるので、虫が付いていないか時々確認するようにしましょう。

殺虫剤を塗布することもできますが、壊滅的な被害を与える虫には効きにくいことが多く、初心者には殺虫剤も使いこなしが難しいので、できるだけ葉の状態をよく観察して、虫食いを見つけたら虫を探して取り除くようにする方が効果的です。

花菖蒲の歴史が面白い!

菖蒲」は日本でもとても歴史のある花で、その歴史をたどるととても面白い花です。ここでは、歴史から「菖蒲」の魅力を見てみたいと思います。

どのように「菖蒲」が開発されてきたのかといった、人々の長年にわたる開発・改良の歴史を見てみると「菖蒲」の魅力が分かります。では、歴史と共に愛された「菖蒲」についてご紹介します。

花菖蒲は江戸時代に300種類が誕生

先に述べましたが、「菖蒲」が幅広く広まったのは江戸時代と言われています。園芸が盛んだった江戸時代の60年間で「菖蒲」は300種類もの品種が作られています。

江戸時代の初期に作られた物が「古種」と呼ばれているもので、歴史上の記録としては1660年代に尾張藩主、徳川光友が鑑賞したという記録が残っています。また、幕府の旗本である松平定朝(菖翁)が多くの交配を繰り返し、多くの品種を作ったと言われています。

当時変わった品種を掛け合わせた「花菖培養録」と言った歴史的資料の記録がきちんと残されています。

この頃は、武士階級の人々が園芸を志し熱心に携わった時代で、それがやがて庶民に広がり、「菖蒲」が「江戸菖蒲」と呼ばれるようになって、江戸中期の「江戸系」につながっていきます。

のちに鉢植えに向く肥後系や伊勢系が誕生

この松平定朝(菖翁)より「菖蒲」を分与されたのが今の熊本県にあたる肥後藩主の細川斉護侯です。これにより、「肥後系」と呼ばれる「菖蒲」が誕生していきます。こちらは明治になってからのことです。「肥後菖蒲」と呼ばれて今でも長年愛され続けている「菖蒲」となっています。

この「肥後系」は最初に松平定朝(菖翁)との約束によって門外不出という条件で譲り受けたもので、現在でもそれが守られ、「肥後六花」のひとつとなって大切にされていますが、大正時代に外部に広まったことがあり、実はほかでも見ることができるそうです。

一方、このころ「伊勢系」といった系統も誕生し、伊勢松阪の紀州藩士吉井定五郎が花びらが三弁咲き(三英咲き)で垂れ咲きになる変わった品種を作り出しています。この「伊勢系」が明治になって「伊勢菖蒲」と呼ばれる品種になり、人気となったものです。昭和になって「イセショウブ」の名前で三重県の指定天然記念物となって全国的にも知れわたっていきます。

こうして明治には「江戸系」「肥後系」「伊勢系」といった系統の「菖蒲」が誕生していったことになります。「肥後系」と「伊勢系」は鉢植えとして室内鑑賞用の「菖蒲」として品種改良されたものと言えます。

「江戸系」「肥後系」「伊勢系」の花すべてが揃う植物園

これらの「菖蒲」の歴史を物語る伝統的な系統は、「佐原市立水生植物園(千葉県佐原市)」などでも見ることができます。「江戸系」「肥後系」「伊勢系」と全ての「菖蒲」を含んだ約400品種が栽培されていて、そうした所で「菖蒲」を一斉に見比べてみるのもいいでしょう。

江戸以前の「ノハナショウブ」からの開発、改良の歴史

また、今でも存在している「ノハナショウブ」と呼ばれる江戸系などよりもっと古い、古種より前の系統のものがあります。これは山野の草原や湿原に自然に生えていたもので、夏に赤紫の花が咲くものが「菖蒲」の先祖と言われています。花はとてもシンプルな雰囲気を持ったものです。

こうした「菖蒲」の開発の歴史は、どれだけ「菖蒲」が人々から愛されてきたかを物語っているのではないでしょうか。門外不出と言うことで譲られた歴史などは特に興味深いものですね。

長い歴史を感じながら、現代の私達ももっと「菖蒲」を愛でてみてはいかがでしょうか。また近年では、バイオテクノロジーによる新しい品種も誕生しています。

今後は少し不思議な色合いのものも登場してきそうです。新しい「菖蒲」の楽しみ方も生まれるかも知れませんね。

日本各地の花菖蒲園の見どころは?楽しみ方は?

日本には多くの菖蒲園があります。ここでは、そんな菖蒲園の見どころについてご紹介します。 菖蒲の魅力と、日本各地に点在する菖蒲園の楽しみ方をまとめてみました。

関東で10万本の花菖蒲を見るならここ

・北山公園(東京都東村山市)に「北山乙女」を見に
新東京100景に選ばれている東京都東村山市の「北山公園」には、約300種類10万本の菖蒲が植えられています。約6300平方メートルの広大な敷地が自慢です。
6月上旬から中旬に満開を迎え、この広大な敷地が紫・白・ピンクなどの色に染まり、菖蒲まつりも開かれます。期間中は夜のライトアップもあります。夜のライトに照らされた神秘的な菖蒲を愛でるのも素敵な楽しみ方です。
花摘み娘や祭りばやしなども行われ賑わいます。人力車から菖蒲園を1周して眺めることもでき、特別感を味わうこともできます。
また「北山公園」でしか見ることができない「北山乙女」も見どころです。ちょっとふっくらとした花びらが見ものの変わった菖蒲を見てみませんか。

・館林菖蒲園(群馬県館林市)ではお座敷鑑賞会も
5月下旬〜6月中旬まで楽しめる、群馬県館林市の「館林菖蒲園」。70種類、約10万本の花が咲き誇ります。館林花正会による「菖蒲のお座敷鑑賞会」も行われ、雨が多いこの時期に室内で鑑賞することができるのも嬉しい場所です。
お座敷でゆっくり座って鑑賞する菖蒲も優雅ですね。

・横須賀菖蒲園(神奈川県横須賀市)で412品種を見学
412品種、14万株のハナショウブが3.7haの敷地に咲く全国でも有名な名所です。6月いっぱい花しょうぶまつりが行われます。琴の演奏会が日曜日には行われるなどして盛り上がります。花摘みの様子も趣きがあります。

江戸川河川敷で親しまれている菖蒲園は

・小岩菖蒲園(江戸川区)
江戸川河川敷に広がり多くの人々に親しまれているのは「小岩菖蒲園」です。地元の方から寄贈された菖蒲から始まり、今では河川敷が回遊式の庭園になっています。5〜6月に50000本の花が咲き、約4900平方メートルの河川敷を埋め尽くします。川辺と菖蒲はとても風情があってよく似合います。

水郷潮来に似合う風情にあふれたあやめ園も

よく「あやめ園」とも言いますが、「菖蒲」はアヤメアヤメ属の多年草で、アヤメ類の総称として日本で多い「菖蒲」をアヤメと多く呼んでいます。あやめ園として多くの園が各地にあり、人気です。

・水郷潮来あやめ園(茨城県潮来市)
500種類100万株が植えられている大きなあやめ園が「水郷潮来あやめ園」です。1.3ヘクタールに植えられ、5月下旬〜6月下旬まで長く開催される「水郷潮来あやめまつり大会」はとても有名です。
水郷潮来で「ろ舟」に乗りながらあやめを見たり、橋から眺めたり、水郷ならではのアヤメの鑑賞ができます。風情ある水郷を巡るとちょっと時代をタイムトリップしたような感覚になるのではないでしょうか。夜のライトアップもきれいです。
100万株の色とりどりの花に圧倒される「水郷潮来あやめ園」は、「前川あやめ園」と「浅間下あやめ園」を合わせた園になっています。

日本四大あやめ園を知っていますか?

日本四大あやめ園があり、「前川あやめ園(茨城県潮来市)」ほか、「五十公野公園あやめ園(新潟県新発田市)」「長井あやめ公園(山形県長井市)」「佐原市立水生植物園(千葉県佐原市)」が有名なあやめ園として挙げられます。

「五十公野公園あやめ園(新潟県新発田市)」は、山間地区の1.8haの広大な敷地に300種類、60000株が植えられています。6月下旬〜7月上旬が見ごろと遅咲きです。6月にあやめ祭りが行われ、ライトアップも行われます。

「長井あやめ公園(山形県長井市)」は、6月中旬〜7月初旬が見ごろで、「長井あやめまつり」が実施されます。500種、100万本の多くのアヤメが見られます。こちらの見どころは、長井市の固有の品種である伝統の「長井古種」を見ることができることです。小ぶりな花ですが可憐な古種らしい花がまた人々を魅了します。歴史にも触れることができます。

「佐原市立水生植物園(千葉県佐原市)」は、水辺の植物をたくさん見ることができる植物園で、東洋一のハナショウブ園とも言われています。巨大な6haもある園内では、4月から5月にアヤメカキツバタが約10万本咲き、その後に菖蒲が咲きます。

江戸・肥後・伊勢系の菖蒲の約400品種が栽培されているここでも、菖蒲の栽培の歴史や品種についてしっかり見ることができます。満開の季節になると150万本もの花が咲き圧巻です。

花菖蒲園は季節を感じる風情のある場所

いかがでしょうか。菖蒲が満開になったころには、各地の菖蒲園でしょうぶ祭りが行われます。季節を感じ、丁寧に世話をされた花を観賞するのはとても風情があり、贅沢な楽しみではないでしょうか。その季節にはぜひ出掛けてみませんか。

監修:きなりのすもも
16年前に趣味でバラ栽培をはじめたのをきっかけに、花木、観葉植物多肉植物
ハーブなど常時100種を超える植物を育て、弱った見切り苗や幼苗のリカバリー、
一年草扱いされている多年草の多年栽培などに取り組んでいます。

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